38 村人、領主様と会う。
元38・39話を、再編成して38・39・40話に別けました。
ストーリーは変えていません。
「───……ん」
「兄さん!」
「く、クリティカル……?」
気付けば、何処かも分からぬ部屋で目覚めたキュア。 知らぬ間にか寝ていたらしい。 傍らにはクリティカル。 何も思いだせない上、妙に身体が重い。
「目が覚めた!?
身体は大丈夫!? 辛い所は無い!??」
「あ、ああ……?
俺は大丈夫……だ?」
クリティカルの慌てた様子に、やっと朧気ながら【アジルー村】の出来事を思いだしてきたキュア。
「く、クリティカルは無事なのか?
ココは何処だ?
───アレから俺含めてどうなった?」
「私も大丈夫よ、兄さん。
ココは領主館」
「りょ……領主館!?」
「アレから───」
「───其処からは私が話そう」
言われ、キュアはこの部屋に自分とクリティカル以外の人間が居た事に気付く。
おかしい。
キュアは【仮想現実装置】を手に入れる前まで、魔ナシの事で人目を気にし。 【仮想現実装置】を手に入れてからは、戦闘経験も重ね……他人の気配には誰より敏感である。
疲れているからとは言え、いくら何でも鈍感すぎた。
「初めまして、キュア君。
クリティカル君には世話にいるよ」
「あ……貴方は───」
「儂は、コタリア・グヌ・レイグラン。
キミ達の雇い主だ」
「───りょ、領主様……!」
◆◆◆
「……アアアアぁぁシぃぃぃッドおおおぉぉぉぉぉォぉぉおおおおっっ!!」
アシッドが振りかぶる杖を、キュアは額で受けとめる。
ビクともしないキュアに怯んだアシッドを見下し、キュアは杖を掴む。
途端、キュアは意識が酩酊し初め……意味不明な台詞を述べる。
目を見張るクリティカル、アシッド、【アジルー村】の村人たち。
キュアが。 魔ナシが。 周囲の魔力を取り込む。
それは、魔法の準備。
魔力を取り込む。
魔力を取り込む。
魔力を取り込む。
「お……おい、なんだ?
アレは……!?」
「ひいぃ……っ!?」
普通、魔法使いは周囲の魔力を取り込む。 今のキュアのように。
しかしソレは───飽くまで周囲の魔力と共に在る 『 精霊 』 のチカラを取り込み、『 精霊語 』 をよりハッキリと伝える為の媒介に過ぎない。
精霊に、自分の意思が精霊語で伝われば……自分自身の魔力を精霊に捧げ、精霊が魔法を使う。
言うなれば、人間の魔法とは精霊の魔法の劣化コピー……『 真似事 』 にすぎないのだ。
なので、精霊でもあるまいし……こんなにも人間が魔力を取り込む必要がない。
というか人間如きに、こんな量の魔力は取り込めないのだ。
「火の……鳥!?」
「ま、まさか……マグマに住む火炎竜を焼き殺す、火の精霊最上位の───」
魔力を、人成らざる量取り込んだキュアは……もはや精霊そのものに近付いていた。
「───っ!?
兄さん、いけないっ!」
「ぐぇ」
防壁魔法を解き、キュアが掴む杖───を持つアシッドごと、突き飛ばすクリティカル。
キュアの魔力操作は、何故だか分からないが……杖を基点にしている。 ソレを見抜いたクリティカルは、キュアから杖を引き離した。
火の鳥の魔法……そんな物をこんな所で使えば、キュア自身が放火魔になってしまう。 いや、放火魔ならまだマシだろう……伝説では、火の鳥が現れた島が丸ごと蒸発したという。
キュアが死んでしまう。
兄を失うコトを恐れたクリティカルは……イチかバチかで、キュアと魔力源を離す。
「う……ぁ───」
「兄さん!」
杖から離れたキュアは、その魔力を暴走させる事なく霧散させる。 クリティカルを遥かに上回る魔力操作に、目を見張るクリティカル。
消えゆく火の鳥。
完全に消える直前……火の鳥が、兄妹を見た気がした。
◆◆◆
「───と、いう訳だ」
領主レイグランの語る内容を……未だ夢現の中の気分で聞いていたキュアであった。




