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369  村人、言っちまって遣っちまった。

 

 キーレスポンスが異様に悪くなったのと、サイトが強制終了するようになってしまい、新しい機材に買い替えました。 その契約やら設定やら使い慣れないやらで、今回は修正だけです。

 ご了承下さい。

 

 

「───コリアンダー様、リカリスさん、キュアです」


「入れ」


「あの……クリティカルとヘイストも付いてきたのですが」


「……まあ予想通りだ。

構わん、二人も入れ」


「失礼します」





 朝食中のキュアを、突如呼びだした領主館執事コリアンダーとメイド長リカリス。 かなりの緊急事態だと思われた。 急ぎ、コリアンダーの執務室へとやって来たキュア達を迎えたのは、昨日襲ってきた教会軍の後始末に徹夜仕事で窶れた二人。 キュアは、【癒し】( ヒーリング )で二人の疲れを癒しつつ、己を呼びだした理由を聞く。




「もしかして、レイグラン様に何か……?」


「いや、領主様の帰路に問題は無いと報告を受けている。

そちらではなく───」




 【癒し】( ヒーリング )で疲れを取り除いても尚、険の取れぬ二人の表情。




「───昨日の教会軍……その、生き残りだ」


「独立愚連隊の隊長、元王族とその従者ですね」




 キュア達領主館を襲った教会軍。

 しかし一言に教会といっても派閥が有る。

 教会に集まる 『権力や金』 が目的の派閥。 上層部に行けば行くほどその密度は高く、(そういった人間こそ出世欲が大きいので、当然といえば当然だが。) 最も巨大強力な一派である。 彼等は、経済的に豊かなコタリア領を害する気は無い。


 次に魔ナシやコリアンダーの母親のような異民族を、教義の悪魔と見なす 『狂信者』 派閥である。 王族や貴族からしてみれば、財産たる国民を殺害してゆく鼻摘み者集団なのだが……そのぶん非常に高い戦闘力を有しており、国王ですら中々クチ出し出来ない一派である。 (貴人が平民に命令出来ないという事実で、更に嫌われてゆく。)

 昨日、襲ってきたのも狂信者一派では有るのだが……更にその中でも派閥があり、 『遠巻きに数で威圧』 しようとした連中と 『暴走、領主館を単独制圧』 しようとした連中に別れる。


 暴走した独立愚連隊の軍隊長は、接触・干渉した魔法をマネる 『物真似魔法』 を使う元王族であった。 領主館の仲間に手出しされ、怒れるキュアに敗れたソイツ等は……魔力欠乏症に陥らせて軟禁していたのだが───




「奴等が何か?

ま、まさか……魔力欠乏症が悪化して死んだとか?」


「いや……面倒は有るが、まだそっちの方がマシだ」


「なら?」


「───逃げられたんですよ」


「「「……は?」」」




 領主館に牢屋は無い。

 然れど、丈夫で外側から鍵を掛けられる部屋ぐらいは有るし見張りも立てていた。 そして何より、この世界において【仮想現実】( パーシテアー )により呼吸で魔力回復できるよう成ったキュアとヘイスト以外の人間が魔力欠乏症を短時間で治す手段は無いのだ。




「情けないことに……あの部屋と魔力欠乏症で、絶対に逃げられるはずが無いと油断していた」


「す、すぐ追いかけます!」


「いや、捜索隊は既に出した。

行き違いを防ぐためにもキュアは待機、奴等を発見次第すぐさま現場へ向かって欲しいのだ」


「……分かりました」




 キュアは領主街に住み始めてまだまだ日が浅い。 【敵視】( エネミービジョン )は特定の人物だけを探せるワケで無し、彼の探査スキルに掛けるよりも迷子を心配したコリアンダー。




「しかし……油断とは言っても、どうやってあの部屋から魔力欠乏症の状態で脱走したんでしょうか?」


「見張りは教会軍との激戦からか、一瞬寝落ちして……気付いたら居なくなっていたらしい」




 昨日の戦いは、人知を超えた存在すら利用した領主館の総力戦だったのだ。 それですらキュアが駆け付けねば全滅していただろう。 一概に、寝落ちした見張りだけを責める事は出来ない。




「彼等が寝た、その隙に奴等は何かしたはずだ」


「き、キュア。

昨日は朱雀に、複数MP回復薬を実体化させたのだろう?

アレを取られたのではないか?」


アレ(MP回復薬)の残りはコリアンダー様に……」




 本体朱雀は数千人の教会軍を倒しに向かったキュアへ、【ドラゴンハーツ】内アイテムを 『ウェストポーチに入る分だけ』 実体化し、持たせた。 キュアが選んだアイテムは、【魔神城の鍵】の朱雀と、幾つかの武器と、MP回復薬。 教会軍を全滅させた後、余った薬は徹夜仕事をするコリアンダーに渡した。




「昨晩は万一にも魔力欠乏で気絶する訳にはいかなかったのでな。

私とリカリスとクリティカル、後は遠距離念話魔法使いで飲み干した。

素晴らしい効果だったが……今回とは関係無いだろう」


「なら……私の防壁魔法を物真似されたように、兄さんの【ソウルイーター】を?」


「うーん……。

奴は魔法に干渉する時、接触していたように見えた」


「……そう、ね。

私の時は、防壁を破壊されているのかと思っていたんだけど……」


「だから、気のせいなのかもしれんが一応奴にスキルと魔法を使う時は気をつけていたん───……ヘイスト?」




 キュアとクリティカルの議論を聞くうちに、顔を青くしだすヘイスト。




「どうしたんだ?」


「……………………コリアンダー様。

自分が寝ている間、ディメイションモンスター達は……?」


「彼等の中の、睡眠を必要としないらしい者達には警備を頼んだが」


「王族の見張りには?」


「頼んだ。

ナイトオウルとマンドラゴラにな。

だが彼等も疲れていたのか、人間の見張り同様寝落ちを───」


「───いえ……たぶん、【ソウルイーター】を真似られました」


「なんだと?」




 昨晩、キュアと共に【ドラゴンハーツ】にフルダイブしたヘイスト。 その過程でMP吸収スキル【ソウルイーター】を会得し…………彼女と魂で繋がるディメイションモンスターもまた、【ソウルイーター】を会得している。 王族は見張りのディメイションモンスターと接触し、スキルを真似た可能性が有るようだ。




「なるほど……【ソウルイーター】が吸収出来る魔力(MP)は、MP回復薬と比べれば極僅かだからなあ。

見張りを殺せるようになる程までに吸収して回復したりせず、魔力欠乏症が治ったらすぐ逃げだしたのか」


「ですが、鍵はどうしたと?

窓や通風孔は有りませんよ」


「壁に穴もな」




 リカリスの疑問に、コリアンダーがヤケクソ気味のジョーク。 それを聞いたキュアが、とある引っ掛かりを覚えた。




「王族の尋問は……やはり平民の使用人より、貴族であるコリアンダー様が……?」


「うん?

まあ、他の王族や貴族の情報などは、私が尋問したが」


「…………あの……その……。

こ、コリアンダー様の魔法───」


「わ、私の魔法?」


「確か、珈琲に砂糖を混ぜるのに便利な 『渦の魔法』 って……………………鍵穴の中も、回せたり?」


「「「───っ!?」」」




 上司に、文を付けるようなキュアの物言いに……引きつる一堂。 しかし、それはキュアを責めるものではなく───




「……遣った事は無いが───たぶん出来るな」


「王族の魔法なら、尚更ですわね」




 遣っちまった感に沈む一堂。

 暫し。

 王族の逃走先に辺りが付いたと報告が来た。

 

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