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361 村人、真の意味を知る。

 

「───何だ、この臭い……?」




 HPが25%を切り、城の一階床を破壊したノーネーム。 巨大な地下空洞へと落とされ、様々な空中移動系スキルを駆使し滑空中のキュア達。

 薄暗く、底はまだ見えず。

 そんな中、500mほど落下した所で感じる異臭にキュア達は顔をしかめた。




「……死臭?」


「一つ二つじゃねぇぞ……何なんだ!?」




 辺りに漂うのは死臭。

 ただの腐肉臭ともまた違う、生物の根源的恐怖を呼び起こす臭いが地下空洞底から漂ってきていた。




「まさか死骸の上に着陸させる気ですのっ!?」


「死ぬよりマシか……」




 現在のキュア達パーティで飛行出来るのは、キュア・朱雀・チェン・シーナの四人。


 だが、他の【ドラゴンハーツ】プレイヤーにはシーナしか飛べずにこのイベントを体験する者も居るだろう。 その場合、飛べぬイーストンやゾリディアにモダン達が転落死してしまうのかというと───




「…………ぉ、おお?」


「急に落下がゆっくりと…………まるで底全体に【低速落下】( タラリア )が掛かってるみたいに……」


「その認識でほぼ間違い無いよ」




 落下途中から、キュア達の体はフワフワと重力が小さくなったかの如く落下してゆく。 転落死の心配は無さそうだが……空中を歩けるでなし、ゆっくり動く今の彼等は絶好の的。

 近付くノーネームを、最大限警戒するが。




「【リミッターキャンセレーション】として、動けない君達を攻撃する程に安いプライドは持っちゃいないよ。

決着は下に着いてからだね」


「……なら着地まで暇潰しに聞こうか。

ここは?」


「キュア君は、異大陸出身だよね?」


「ああ」




 無論、警戒を解いた訳では無いにしろ……呑気に会話しだすキュアに呆れ気味のイーストン達。

 だがこのスキにHP・MPを回復し、各種回復薬もしっかり補充しているのは素直に真似る。




「なら、『蠱毒』 って聞いた事あるかい?」


「蠱毒……? いや、知らん。

朱雀は分かるかな?」


「地球のとある国で産まれた、呪いの儀式ですね。

百の害虫を一つの壺に容れて封をし、殺し合わせます」


「え、えげつねぇな……。

何だその気味悪ィ儀式はよう」


「知らなかった方がよかった世界なのである……」




 魔法が身近に存在する【ドラゴンハーツ】住人やキュア達にとって…………呪術とは、地球人以上に 『何故やるのか意味が分からない』 得体の知れない物なのだ。




「最後に生き残った蟲を、『祟り為す神』 として呪いに使う───

要するに、様々な毒生物を混ぜて暗殺用最強毒の製作作業を 『蟲毒という儀式』 と呼ぶのかと思われます」


「ふむ……って事はまさか、下からする死臭は───」




 徐々に見えてきた巨大地下空洞の底。 それは、異種生物のコロシアム跡。




「色んな魔物の死骸が有るな」


「拙者、吐きそうである……」




 ちなみに悪臭とはいえ、飽くまでVR(ゆめ)。 多少違和感が有る程度のみ。 しかも、魔ナシ差別で肉盾としてアジルー村へ迫る盗賊魔物を殺し慣れ (慣らされ) ているキュアにとっては屁でもない。


 王族のモダンは、特別こういった事に弱いようだが。




「主様。

あの巨大蜘蛛は、【光を食らいし蜘蛛】と同種かと」


「クサイのである……」


「キュアー、あっちは【ミノタウロス】と【ヴァンパイア】と【サイクロップス】だぞー!?」


「マズイのである……」


「人間の死体まで有るぞ。

光燐種、ラットマン、ドッグマン……邪神官も!?」


「ポンポン痛いのである……」




 そこは。

 まさしく蟲毒。

 闘争と死の果て。

 未熟者には、見るだけで狂気をもたらす場所。

  (モダンの場合、ただの) (幼児帰りのようだが。)




「モダン、キツイなら離れて───……シーナ? おい、シーナ……??

……キュアっ、シーナの様子がおかしいぞ!?」


「シーナっ!?」


「し、死体や死臭が辛いなら吐いたほうが楽なのである……」




 目が虚ろなシーナ。

 彼女は一見、 (キツめの) 御嬢様然といった見た目だが…………キュアと初めて会ったイベントにて、兄や故郷へと毒を垂れ流した【バイオ工場】の人間への報復・・覚悟していた(・・・・・・)

 決して、 (シスコンの) 兄に甘やかされて育っただけでは無い。

  (故郷では、見た目に) (騙されている) (男は大勢居るが。)


 そんな彼女が、数多死体を見てショックは受けるとしても、放心するなど有り得ず───




「り、竜……よ……。

さ迷える竜達よ…………」


「おや?」




 虚ろな目のまま、何言か呟くシーナ。 彼女の様子を心配する最中、足が地に着く感触。

 地底に辿り着いたようである。




「確かに 『竜の巫女』 は、連れてくるつもりだったけど…………まさか 『こっち』 に転化するとはね。

───いやはや、しぶとい」


「何の事だっ!?

シーナをどうした!?」




 困ったように笑うノーネーム。




「ここの蟲毒の 『蟲』 は、『怨念』 。

数々の生物をこの中に放り投げ、殺し合いをさせ、適性有る者が【リミッターキャンセレーション】に進化するのに必要な怨念を溜める場所なんだよ」


「怨念……シーナ……竜……───

まさかっ!?」


「どっかその辺に、竜の死体も有る筈なんだけど……ソイツの怨念に感化されちゃったみたいだね」


「【ゾンビ】化したシーナ達に、【竜の心臓】( ドラゴンハーツ )を使った時みたいな……か!」


「現象はそう(・・)だけど、名前は違うかな?」


「名前?」




 フワリと浮かぶ、ノーネーム。

 戦闘再開の約束は、底に着いた時。




「【ドラゴンハーツ】は……竜の【心臓】ではなく、【心】。

【竜の心】( ドラゴンハーツ )とは、竜の代弁者───【竜の巫女】の事なんだよ」

 

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