36 村人、容赦をしない。
クリティカルを、村人が取り囲む。 悪意ある武器を手にし。 悪意ある目で睨みながら。
「兄さん、大丈夫!? 怪我はしていない!?」
「ああっ、俺は大丈夫だ! クリティカルこそ大丈夫か!? 何が在った!?」
「御免なさい……実は、逃げるのに失敗しちゃって……!」
クリティカルの運動能力は……キュアと比べたら、数段落ちるが───決して悪くはない。
一対一ならば、遠出をしない【アジルー村】の人間など毎日【街】にまで歩くクリティカルでも逃げだせただろう。
しかし、村人総出で家を取囲まれては……分が悪かった。
「貴様等、クリティカルから離れろ!」
「なにぃ……!? お前、誰に向かってクチを利いている、魔ナシ如きが!」
「イイから離れろ!」
「ぐはっ!」
クチで言っても分からぬというのなら、身体に聞かせるまで。
キュアが生意気な態度をとりだした事に激昂し、クリティカル ( の、結界 ) に武器を振り下ろした村人の横腹を蹴りあげる。
【アジルー村】の人間が読めない本を読み、盗賊など人を斬り……人間の中身を見たことが有るキュアでも、医学知識は実体験程度にしかない。
ダメージを食らうと地獄の苦しみを味わう場所、肝臓を蹴りあげられ……相手は一声漏らすと蹲り、そのまま動かなくなった。
恥ずべき存在、価値なき存在、自分達に従うべき存在───魔ナシ、キュアの突然の蛮行に……一瞬、気を取られた【アジルー村】の人間達は、一斉に武器をキュアへと向ける。
「次は、斬る───」
「「「 …………っ! 」」」
───然れど、キュアが下ろしていた【ウェアラット】の血に塗れた剣を村人達の目線の高さにまで上げると……村人たちは、青い顔をして腰を抜かす。
「キュアぁぁぁっ!」
「アシッドか」
「オマエ、気が狂ったのか!? この暴挙……これでとうとうオマエは、オマエの嫌っていた犯罪者だぞ!」
持っていた杖で、ビシッとキュアを差すアシッド。 もう、腰は治ったらしい。
「犯罪者はどっちだ!
……聞いたぞ! 貴様等、早く魔物退治に行かなければウチに放火すると言っていたな!?」
「そっ……ソレは…………!?」
魔物の恐怖から開放され、多少冷静になった【アジルー村】の人間達は……今更ながら自分のセリフに気付く。
殺人より罪の重い、放火をクチにした事に。
「ソレは……ソレは言葉の綾で───」
「何が綾だ! クリティカルに武器を向けたのが、悪意の証拠! 放火の意思アリという証拠だ!!」
よく見れば、村人の数人が油壺を持っていた。 とことん本気だったらしい。
「……お、オマエが悪い! 魔ナシの癖に、何時までも家から出ないオマエが───」
「兵の前でも、同じ言い訳をするんだな!」
「「「 なっ!? 」」」
もし、取り調べ官が魔ナシに差別的であっても……放火という、村一つ潰す発言をした人間は、どう在っても許されない。
【アジルー村】の人間達の罪は決まったも同然なのだ。




