359 村人、輪を撃ちぬく。
ほっぺたと足の裏がやたらと熱く……然りとて触っても平温という症状が続いています。
軽い若年性更年期障害の可能性アリと言われました。
「【倍加・火・弾丸】【ソウルイーター】!
【拡散・追跡・火・弾丸】【ソウルイーター】!!」
「うっわ、やっぱズルくない?
その、コッチの魔法を消しながらMP吸収するスキル?
しかも杖魔法と同時に使っちゃってさ」
魔法から直接魔力を吸収するヘイストの能力を得たキュアと、人類の限界を超え才能の全てを発揮する最強の人間ノーネーム。
その戦いは熾烈を究めた。
「あの巨体なのに、一瞬飛ぶのが厄介であるな……」
強敵であるノーネームにとって、唯一の弱点らしき物が巨体ゆえに死角となる足下である。
踏み潰そうとしてきてもそう簡単に食らうパーティでは無い。 魔法も、足下の敵へ下手に【追跡】付きで撃とうモノなら自爆しかねない。
ので、直線軌道の攻撃のみ。
ゆえに上手く立回りさえすれば、ずっと攻撃を受けないように思われるが……ノーネームは、天使型由来の羽根で数秒だが空中を飛べる。 素早く距離をとられ、弾幕を張られてしまっていた。
「だけどな、奴の馬鹿みてぇな弾幕はキュアが穴だらけにしてくれてる!
カエルみてぇに跳びはねるしか能が無ぇンじゃ───」
「───っ、待って兄さん!
敵の様子が……何かおかしいですわ!?」
「ははっ、言ったろう?
この城全てを遊び場にするってさ」
数度、パーティはノーネームの足下に入りこみ攻撃をしかけ。 数度、ノーネームは空中へと避難し。
そのHPを、75%にまで減らしたその時。
「ここは狭いから……ねえっ!」
「きゃあああっ!?」
「うおっ!?」
膨大な数の魔弾を───キュア達に、ではなく床めがけて撃ち込むノーネーム。
ヒビが床全体に広がり……崩壊、崩落。 二階天井へと放り出される。 大国の城なだけあって、床までが高い。
朱雀・チェンは永続的に、キュア・シーナは一時的に空を飛べるが……残るイーストン・ゾリディア・モダンに飛行スキルは無く───
「ゾリディア、大丈夫かっ!?」
「き、キュア……!?
あ……ああ、大丈夫だ」
キュアは咄嗟に、一番近くにいたゾリディアを抱えて【低速落下】を発動。
二人とも無傷で二階に着地する。
ゾリディアは咄嗟の事に、顔を赤くするが───
「……キュアさん?
ワタクシも、そう離れていない場所に居ましたわよねえ!?」
「い、いや……飛べないゾリディアと飛べるシーナとでは……」
「主様、『女』 とはそういうモノですよ」
「ンなこたァ良いから、はよ降ろしやがれっ!?」
「のである!」
「ワガママ言ってちゃ駄目だぞー?」
「……自分はキュアに掴まって (?) 降りているぞ」
シーナは、合理的な判断をした……ある意味で自分を無視したキュアに歯軋りをし。 イーストンとモダンは、最も空中移動が得意な朱雀とチェンが素早く首根っこを掴んで救出していた。
───そんな、グタグダな一連をノーネームは。
「楽しそうだねぇ」
「……何故、攻撃してこなかった?」
「グタグダに見せかけて……全員、油断なんてして無かったよね。
しかもキュア君は、あの一瞬で反撃までしてくれて」
ノーネームが床を攻撃し始めたと同時に、キュアは皆の位置関係を把握。 ゾリディアを助けに向かいつつ、最大限にまでMPを圧縮した【弾丸】をノーネームへと撃ちこんでいた。
「弱点部位っぽかったしな、頭の輪っか」
「まあ、魔法防御は下がっちゃったかな。
アレも一応装備品だし」
「次の弱点部位は羽根か?」
「───やれやれ……ホント君はムチャクチャだね」




