354 村人、目覚めかけるも戦闘続行する。
「行くぞっ、【リミッ───」
───……ジジッ
「……ん?」
光燐種の生活圏内で国を起こし、王と成っていた邪神の使徒達のボス【リミッターキャンセレーション】。
その決戦時。
キュアが攻撃を仕掛け。
朱雀・チェン・ヘイストが追撃し。
イーストン・シーナ・ゾリディア・モダンが駆け寄って来た所で…………突如世界が停止。
【ドラゴンハーツ】から、音と色が消え。
≪───ユーザー名・キュアさん≫
「えっ……!?
ぱ、【仮想現実装置】!??」
この世界───
【ドラゴンハーツ】の世界を産みだしている【仮想現実装置】が、キュアへとコンタクトを取ってきた。
今まではイベント終了後など、ある程度落ちついている時のみのコンタクトだったので慌てるキュア。
「い……今、とても大事なイベントの真っ最中なんだけど……。
こんなタイミングで目覚めの時間なのか??」
≪いえ、確かに起床時間は差し迫っていますが……敵との決着までは余裕がある筈です≫
「なら?」
本来なら【仮想現実装置】側から世界を止められても、現実世界の住人であるキュアと朱雀とヘイストは動ける筈である。
然れど戦闘中の現在、若干姿勢が浮いている現状で動くのは危険ゆえか、頭部だけが動かせる状態だ。
閑話休題。
≪私が起こそうとしているのではなく……ユーザー名・キュアさんの肉体自身が、起きようとしています≫
「は? 俺が?
まさか……現実で異変を感じ取ったとか!?」
≪まだ徹夜で仕事をするフレンド名・クリティカルさん、警備員、その他領主館全員が平常にしています。
領主館内で異常は確認出来ません≫
「クリティカル、まだ仕事中なのか……」
≪ユーザー名・キュアさんが、何故起きようとしているのかは不明です。
……ログアウトしますか?≫
領主レイグランの警護秘書隊副隊長クリティカル。 彼女の部下には、どんな小さな殺気も察知する優秀な魔法使いが複数居る。
彼女等が騒いでいないのであれば、賊などではあるまい。
「……レイグラン様が今日御帰りになられるから、緊張してるんだろう。
…………ギリギリまでコッチに居るよ」
≪…………。
……分かりました、御武運を≫
「ああ!」
キュアが目覚め、ログアウトすれば……キュアと【仮想現実装置】は離ればなれに成るかもしれない。 一秒でも長く、この【ドラゴンハーツ】の世界に居たいキュア。
切れる、【仮想現実装置】からのコンタクト。
動きだす世界。
「───【リミッターキャンセレーション】……!
【会心】【強化】【アンデット特攻】【ドリルインパクト】!」
「……っと?
久々にダメージを受けたね」
瞬時に、思考を眼前の敵との戦闘へと切り替えたキュアは即座に対応。 王に一撃を加える。
「……キュア」
「ヘイスト」
「自分にも【仮想現実装置】の声が聞こえたが……大丈夫なのだな?」
「ああ、領主館には何も……」
「違う。 キュアが、だ」
「……大丈夫だよ」
キュアを心配するヘイスト。
魔ナシであったキュアは、【仮想現実装置】と出会い、魔法を得た。
その人生を180度変えた存在と、もうすぐ別れなければいけないからだ。
……だが、一生の話ではあるまい。
キュアはそう信じる。
「さっきから何の話かな?」
「覚悟の話さ!」
「そんな物で強くなれたら、人間苦労しないよ。
【追跡・拡散・弾丸】」
キュアの一撃のお返しとばかりに、対多魔法をブッ放つ王。 王座から未だ動いていない故に、三方にキュア・イーストン・ゾリディアが迫っており、ゾリディアが体勢も悪く避け損なう。
「まだまだ挨拶代わりだからね。
死んだら駄目だよ?」
「【拡散・癒し】。
覚悟のチカラも知らずに、限界突破したなんてホザく奴には負けん!」