35 村人、合流する。
「トドメだっ!」
「ヂッ───」
最後の【ウェアラット】を切り伏せるキュア。 痛みは無いが、数回噛まれた気がする。
興奮し過ぎた時、痛みを感じなくなる事があるのを知っていたキュアは……万一にも噛まれていたら、下手な毒よりヤバいコトに成りうると、己れの身体を見渡す。
……が、ドコにも傷がない。
「む……? 気のせい、だったのか?」
「何をボサッとしていやがる、クソ魔ナシがっ!」
魔物が居なくなった途端、キュアに近付く村人の一人……もっともキュアを見下す幼馴染み、アシッドだ。
「テメェ……何で魔物が出てすぐ、肉壁に成らなかったぁっ!?」
「…………寝ていたからな」
「言い訳するなぁ!」
聞いてきたのはソッチだろうに……呆れるキュアだが、クリティカルの身の安全を確認するまでは一先ず下手に出る。
アシッドは、掴まっていた杖でキュアを殴りつける。 どうやら【ウェアラット】の姿を視認した時……つまり一番最初に邪魔をした時から腰を抜かしていたらしい。
……殴られても痛くはない。
二人の身長差 ( キュア・187cm、アシッド・163cm ) を考慮しても、戦闘の才能差を考慮してもなお。
戦闘が終わって、未だ腰を抜かしているようだ。
「( さて……クリティカルは無事逃げだせられただろうか? )」
クリティカルの魔法は『個人』を『その場』で守るには適しているが、逃げるのには適さない。
上手く逃げるには、クリティカル本人の運動能力に関わってくるものの、クリティカルの運動能力は……並の上といったトコロである。
「( 魔物を倒したと伝われば、いくらコイツ等とはいえ冷静を取りもどして放火など言いださないかも…… )」
「おらぁっ、ボサッとするな!
このグズ魔ナシが!」
「( 取敢ず家に帰ろう。 クリティカルに合流するのが何より先決だ! )」
走って我が家へと帰るキュア。
アシッド他、付いてきた村人たちから怒号を背中に受けるが全て無視。
クリティカルと合流してから、村人を遣り過ごすなり逃げるなり決める。
「クリティカル!」
「兄さん!」
果して、クリティカルは家の裏庭に居た。 しかも防壁魔法を発動しており、その周囲を武装した村人を囲んでいたのだ。
村人たちは、恐ろしい顔で兄妹を交互に睨むが……キュアは、ソレ以上の怒りを込めて村人を睨む。