340 村人、骨と恐竜と戦う。
「【トロルスカル】、武器の素材か」
【聖なる泉】を目指す道程で入ったダンジョンにて、門番たる【トロルスケルトン】を苦戦しつつも 大したダメージを受ける事なく倒したキュア達。
「おいキュア、コイツがココのボスじゃなく門番ってなァどーゆーこった?」
「ボス戦っぽくなかったから、だな」
「はァ?」
キュアの知る【ドラゴンハーツ】の 『ボス』 とは、必ずダンジョンなどの最奥……『ボスっぽい場所』 に居る。
絶対に食事や風呂、トイレの最中ではなく 『ボスっぽく待ち構えて』 いるのだ。
「…………いや、そりゃ偏見だろうが」
「まあ見てろ。
この道の先に、『いかにも』 って奴が出てくる筈だから」
◆◆◆
≪───小さな虫よ、愚物よ。
何ゆえココまで来た?≫
「「「「「「ぶフッ!?」」」」」」
崖道を進むキュア達の前に、古代遺跡の続きとおぼしき建築物が出現。 ヒビ割れから中に侵入し、巨大な円柱が規則正しく並ぶ場所へと出た。
キュアの言う、『いかにも』 といった場所を進むと……『いかにも』 といった声。 思わず吹きだす 一同。
≪……愚かな。
矮小すぎて、眼前の存在も正しく認識できんか≫
「わ、笑ってる場合じゃ無ェな。
【リッチ:LV153】……ヤベェぞ、神話に出てくるような魔物だぜ?」
≪矮小な虫ケラ如きが……今更に慈悲を乞うても遅───む?≫
出現したのは、【スケルトン】ではあるが……非常に強い自我と魔力を放つ存在。 何も無い虚空から現れ、羽根も持たずに空中に浮かぶその魔物は───『小さき者』 以外の来訪者に気付く。
≪『亜竜』 か……≫
それは、キュア達の背後の虚空から突如現れる。 ズシンズシンと地響かせながら、彼等に近付くのは……体高30mは有ろうかという超巨大爬虫類。
「こ、今度は……超巨大トカゲ……!?」
「【アビスダイナソー:LV151】……!
こんな化けモンが二匹も───」
≪キサマが何故ココに……≫
≪決まっているぞ、『超越者』 。
オマエが、其処な連中から 『邪竜』 の臭いを感じたように……我も 『邪神』 のイヤな臭いを感じとったからよ≫
≪ふん……竜と鬼の子孫が共に歩むか。
滑稽であるな≫
前方には死を凝結させたかの如き骨。
後方には生の濁流の如き恐竜。
常人ならば、見ただけで恐怖のあまり息の根を止める化物共に挟まれる一同。 そんな中、キュアと朱雀は。
「(主様)」
「(朱雀……たぶんだが【リッチ】と【アビスダイナソー】は、本来どちらかしか出現しない筈のボスなんじゃないかな?)」
「(同意致します。
おそらく、ゾリディアルートとやらとイーストン・シーナルートとやらが合併した結果かと)」
「(ああ。
イーストン達も、何らかの理由で【聖なる泉】を目指す事となったんだろうなぁ)」
ただし別々で。
ゾリディアルートを選べば、別行動のイーストン達は【聖なる泉】を知らずに過ごし、イーストン・シーナルートを選べばその逆となる。
その途中、【滝裏のダンジョン】はゾリディアルートなら【スケルトン】【リッチ】、イーストン兄妹ルートなら【アビスゲーター】【アビスダイナソー】のみが出現するのだ。
「お……おいっ、二人で喋ってないで何とかしろよっ!?」
「じゃあ、何とかしようか」
二体の怪物に、顔を青くするイーストン・シーナ・ゾリディアの三人。
だがキュアは。
朱雀とチェンとヘイストは。
「たぶん、大変さはLV161の【光を食らいし蜘蛛】とドッコイだろう」
「LV130台の三鬼よりは単純かと」
「LV173のラストユキーデよか弱いしなー?」
「まあ、アシッドより被害が大きくなりはすまい」
「「「…………」」」
≪人間風情が……≫
≪我は神に近きもの……≫
何時ものキュア達の言動に、呆れる【リッチ】と【アビスダイナソー】
「あいにく、神や神に近い者には慣れてる」
「朱雀に格で負けてるぞー?」
「私も……分身ですし、神に近い者としておきましょうか」
「キュアが倒した、八部伯衆とか言う 『芋』 と同格だな」
≪……訳の分からぬ事を。
下らぬ、サッサと死ね≫
【リッチ】が、発光しつつ同じ姿勢のまま高く舞い上がる。 と同時に、地面に赤い丸が描かれて囲まれるキュア。
「よく分からんが……避けない意味は無いよな。
チェン、念のために上空でも避けてくれ!」
「ガッテンだー!」
徐々に不気味に発光しだす赤丸。
その間、【アビスダイナソー】も動く。 武器はその巨体。 数歩動けば、辺りは嵐の通過痕の如く。
それでも【バックステップ】などを使い、ギリギリで回避したイーストン兄妹とゾリディア。
「───ちぃッ、化けモンがよ!」
「だがココなら足場を気にせず戦える!
もう味方専用針ネズミ製作機などと呼ばせん!」
「……オメェがヤると、シャレになってねーンだがな」