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337 村人、滝を見る。

 

「……なあ、キュアよぅ。

オレぁ一個───たった一個だけ、オメェーとゾリディアに強い仲間意識を抱いたぜ」


「ホントかっ!?」




 過去の伝承を頼りに、ゾリディアを操った邪神の使徒共から【名もなき集落】の民を守るため、キュア達は【聖なる泉】を目指す。


 しかし泉は川の上流にあり、道中は谷や巨岩がゴロゴロしていた。

 苦労して登るキュア・イーストン・ゾリディア……の上空を、フワフワスイスイと飛んで行くフライングヒューマノイド女性陣。




「彼女達は……まあ、な。

だけど俺はイザとなったら【魔神の指輪】で、短時間とはいえ空を飛べるから───

イーストンとゾリディアの仲間意識はより強固だな」


「…………はあ、さよけ」




 天然に嫌味は通用しない。

 だがそれはそれとして、事実イーストンの態度は極々微かにだが軟化していた。


 恩人 (かつ天然) であるキュアや最愛のシーナが、以前と変わらぬ態度でゾリディアと接しているのもそうだが……一番の理由は、イーストン・シーナルートとゾリディアルートが合体してしまった事であろう。


 本来ゾリディア操られイベント終了後、すぐに二組は別行動を取る。 合流するのは相当先となり、その頃には御互いのわだかまりがとても強くなってしまうのだ。

 ───と、そこで朱雀からの声。




「主様」


「……ああ、こっち(エネミービジョン)でも捉えた。

あれは……ワニか?」




 皆に注意を促しつつ進めば、谷と谷のスキマ……陽当たりの良い広大な平原になっている場所にて、大量の【アビスゲータ】が日向ぼっこをしつつ眠っていた。

 ザッと見るに、複数の種類が居るようだ。




「エネミーボードには……赤いのが【ファイアアビスゲータ】、黄色いのが【サンダーアビスゲータ】っていう名前で出てるな」


「うげっ、でかいトカゲって聞いてたがよ……化けモンじゃねェか」


「あれが【アビスゲータ】か……。

集落の子供は、『イタズラっ子はアビスゲータに食べられる』 と脅さて育つ物だが……」




 危険な魔物だと聞いており、顔をしかめるイーストンと……絶滅した筈の怪物に、顔を青くするゾリディア。

 しかし───




「邪神官の装備品、【邪神官の剣】と【邪神官の服】のスキルを得るのに丁度良い数だな」


「私も装備・スキル獲得出来るように成った身。

程良いザコですね」


「(キュアさんから頂いた) この【ワニ皮のドレス】……【裁縫】で、【ワニ皮の靴】も作れるようですわ♡」


「ワニ肉、ウマイかなー?」


「魔法系攻撃の敵か。

【ソウルイーター】のままでイイな」


「「…………」」




 キュアと空から降ってくる女性陣は、皆とくにビビる様子も無い。


 御互いに顔を見合わせるイーストンとゾリディア。 溝が出来る前までは、癖になるまでやっていた仕草である。

 二人は慌てて魔物へ向きなおりつつ……タメ息を吐き、群の中へ突っこむパーティメンバーに一瞬遅れて攻撃に参加した。



◆◆◆



「アビス……ですか」


「朱雀?」




 【アビスゲータ】を数の暴力で蹂躙したあと、皆で素材回収しつつ疑問の声を上げる朱雀。




「……主様、飽くまで可能性の話ですが、この先はダンジョンかもしれません」


「ん? ダンジョン?」


「アビスとは、地球にて 『地獄』 と呼ぶ所や 『別の星』 と呼ぶ所が有ります」


「要するに、アビスとは特殊な地名か。

確かにダンジョン名かもな」




 【ドラゴンハーツ】におけるダンジョンとは、『通常空間と異なる常識が働く場所』 である。


 例えば。

 人々の魂が、狭い範囲で流転し続けたり。


 例えば。

 無機物に、命が宿ったり。


  (例えば。)

  (半裸の巨乳メイドが、) (誘惑してきたり。)




「ただ、川を遡れば【聖なる泉】に辿りつくってワケじゃあ無さそうってことだな」


「『地の底』 という意味も御座いますので───

ただ、谷底にワニが大量に湧いているだけの可能性も勿論有るかと。

様々な御覚悟を」


「分かった、みんなも意識していてくれ」



◆◆◆



「川が空から降ってくるっ!??」


「きききキュア!

じ、自分が何とか上を見てこよう!?」


「二人とも、此れは滝という物ですよ」




 【アビスゲータ】の群が居た更に先、マップボードにモヤが出現。 洞窟へと変化した。 洞窟に近づくキュア達が見たのは、上が見えぬ高さの滝であった。




「確かに見事な滝ですけど……二人は何故にココまで興奮してらっしゃるのかしら?」


「……そういえば【キッズグリーンドラゴン】を倒した村で、『湖を初めて見た』 とか言ってたな。

故郷で水は、全て地下水で賄っていると」


「キュア、こっちに来るまで川も魚も見たこと無いとかって言ってたなー?」


「ならそりゃ、こんなスゲェ滝を見りゃあビビんのも仕方ねェか」




 川の途中で落差があれば、水は当然落下する。 そんな当たり前の事に……ついつい興奮しすぎたキュアとヘイストの二人は、顔を赤くしつつ誤魔化すようにマップボードへと視線を移す。




「こ、この先が洞窟のはずなんだが……」


「た、滝しか無いぞ!? 大変だ!」




 そんなキュア達を生暖かい目で眺めながら滝周辺を調べる他のメンバーは、滝の裏側に洞窟の入口を発見。

  (顔が赤いままの) キュアを先頭に、洞窟の中へ。




「ずぶ濡れだな、みんな平気か?」


「なんとかなー」


「【ソウルイーター】……錆びないだろうな」




 川や滝は知らねど雨に降られた事はあるキュアは、どう見ても丸一日乾かなそうな程に濡れた皆を心配するが……みるみるウチに乾く服。 例の謎常識である。

 数有る【ドラゴンハーツ】の謎常識の中でも、殊更キモい光景に軽く引くキュアであった。

 

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