332 村人、使徒共のボスへ迫る。
またムカデに噛まれました。
「ほらっ、シーナと言ったか……【ライフイーター】を身につけていろ!」
「はあ……? ええ……??
あの、貴───女(?)は……?」
「良いからサッサと着ろ!
裸軍をさせても良いのだぞ!」
「ええぇ……?? 理不尽ですわ…………」
邪神の使徒が支配する洞窟に侵入したキュア達。 イーストンが罠に嵌まり、ゾリディアと激しく対立する事になったが…… キュアは、【ドラゴンハーツ】スタッフが用意したイベント進行を丸きり無視。
本来はイベント後期でないと助けだせられない筈の、捕らわれのシーナを───イレギュラーな存在であるヘイストを使ってイベント初期で助けだしてしまう。
≪な、何なんじゃ!? 貴様等は!?≫
「ふっ、『キュアと真の仲間達』 とでも名乗っておこうか」
「だ……ダサい上に、『真の』 を強調する辺りが何やらムカつきますわ」
きゃいきゃいと囂しく騒ぐ女二(?)人に、作戦をブチ壊された使徒のボスが激昂する。
≪ふざけるなぁ!
儂が……儂等がどれだけ、この作戦に労力をかけたと思とるんじゃ!?≫
「知るものか。
お前等は、一番怒らせてはいけない者を怒らせたのだから」
≪剣風情に何が出来る!?≫
「自分の事ではない。
……たった一人で、街の一部を焼く怪人を屠り。
たった一人で、千軍万馬の偽神軍を討ちやぶる。
───凄い男のことだ」
「……きっとその男性は。
……たった一人で雲霞の如く押し寄せるゾンビを滅し。
竜をも討つ中心人物。
───素晴らしい男性なのでしょう」
「ふふふ……」
「あはは……♡」
睨みあう、 ヘイストとシーナ。
置いてけ堀をくう、ボス。
……その、耳に届くのは。
「───ぉ ぉ ぉ ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
≪…………っ!?≫
……響く、声。
怒声。
極限の怒りを、込めて、練られ、固められた、純粋な殺意の塊。
「そうら、来たぞ」
≪なん……っ≫
「家族と仲間を、何よりも大事にする男が……貴様を討ちに」
「兄さんとゾリディアを、あの方の前で争わせようとするなんて……見た目通り、知性を欠片も持ち合わせていない化物なのでしょうね」
≪くっ……クソ共がああぁぁぁぁ!≫
◆◆◆
「主様!
敵です、数は50!」
「【魔神城】でも、ユキーデと戦う前に色々と戦わせられたなー……」
「基本的に支配者なんて、どいつも臆病なんだろうさ」
アジルー村村民の肉盾だったキュアは、ボスの肉盾である盗賊タイプの邪神の使徒共に同情する。 容赦は無論一切ないが。
ワラワラと現れる使徒共に、キュア達はイーストンを囲んで構える。
≪オ、オイっ!?
ホントニ今ノタイミングデ良イノカ!?≫
≪仕方無ダロッ!?
女ト男ガ、戦イヲ続ケラレナクナッタンダカラヨ!?≫
≪ドッチカガ勝ッタ時点デ俺等ガ突入スル予定ダッタンダカラ、コレデ良インダ!≫
プラン変更に、おたつく使徒共。
【ドラゴンハーツ】本来のイベントでは、イーストンとゾリディアが殺しあうシーンである。 プレイヤーが取れる行動は、
①
イーストンとゾリディアのどちらか、もしくは二人とも死ぬ。
シーナがドラゴンゾンビとなり、新たなる邪神と化す。 最終的にシーナを倒した主人公もまた邪神に覚醒するBADEND突入ルート。
( 過去から同じような事が繰り返されており、歴史的には正しい。)
②
ボスの制止を無視し、壁に突撃。 パニクったボスがシーナを殺してしまう。
イーストンvs邪神とゾリディアvsプレイヤーの三つ巴となり、ゾリディアを取り込んだ邪神を倒して世界に平和が訪れた後、イーストンと1対1で対決する後味最悪ENDルートである。
③
二人のHPとボスのヘイト調整し、誰も殺さないで戦闘を決着させる。
一応はHAPPYENDルートではあるのだが……調整しだいで三人の誰かが半ゾンビ化したり好感度が乱高下したりと、色々ルートが細分化する。 イーストンを眠らせて彼の憎悪を溜めないのは、一つのテクニックだが……この後に迫り来る 『使徒共の群』 と 『ボスの指示を受けるゾリディア』 から、動かない彼を守りきらねばならない。
「だが……俺達なら問題ない。
さっさと済ませてヘイストとシーナの下へ行くぞ」
「邪神の使徒だがナンだか知んないけど、人間種最強は魔人族なんだからなー!」
「腐女子は……まだ動きませんね。
取敢ず雑魚に専念致しましょうか」
ヘイストに気をとられ、ゾリディアに指示を出し忘れているボス。 このパターン最悪の敵が彼女なので、烏合の衆である使徒共の群などキュア達の敵ではない。
「五種族中、もっとも邪悪な連中め」
襲いくる使徒共の群を次々と討ちたおすキュア達。
怒らせてはいけない者を怒らせたと使徒共のボスが理解するのは……群を全滅させ、自らに怒声を上げながら向かってくるキュアを発見───対処も間に合わず、一撃を食らってからである。