328 村人、見張りの盗賊の正体を見破る。
「イーストン達は───
まだ行った事の無い街へ向かった筈だが、朱雀……彼等を探知できるかな?」
「彼等は探知できませんが、進路上の洞窟で盗賊どもが騒いでいるようですね」
【天空牢獄】にて、恩人イーストンの敵である【名を失いし神】と敵対する【ドラゴン】の部下、【ワイバーン】を倒したキュア達。
片付ける過程で、嘗てキュアとイーストンが退治した【レッサーワイバーン】の群は……実はイーストンの妹、シーナを狙っていた事が判明。 【謎の銅板】と【イーストンの剣】を入手したキュア達は、彼等と合流するために 旅をする。
「仮にイーストン達が盗賊に襲われたとしても、遅れを取るとは思えないが……みんな、一応急ごう!」
「おっしゃー!」
「任せろ!」
「最短の道を御案内致します」
◆◆◆
「【拡散・弾丸】!」
「【魔人炎】!」
「小娘、私の火燐に合わせて彼処の岩を斬り崩しなさい」
「ああ、【ソウルイーター】!」
「「「なんだっ!? 敵襲かっ!?」」」
盗賊がいる洞窟へとやって来たキュア達。 16人の見張りはラットマンやドッグマンではなく、むろん魔人族でもない。
一見、遠目からは妙に顔色が悪い光燐種の人間であった。
キュアから見れば差別に感じるのだが、光燐種はVR法に守られていて殺せない。 然れど仲間の危機かもしれない以上、キュアが躊躇う理由にはならず盗賊めがけて魔法弾を射ちこみ女性陣も追撃する。
…………が。
「───えっ? 死ん……!?」
光燐種である以上、HP0に成っても蹲るだけで、死なない筈のソレは───キュアの隠蔽攻撃を受け、一撃で即死した。 しかも悪い顔色を、みるみるウチに緑色へと転じさせながら。
「き、キュアー……!?
あ、アイツ等ってー……!??」
「人間に擬態した魔物、か?」
≪キサマ等ぁっ!!≫
キュア達を、敵を確認した他の盗賊達も……光燐種以外の 『生き物』 へ。
「……主様?」
「…………みんな、考えるのは後だ!
まずは奴等を蹴散らすぞ!」
「わ、分かった!」
「こっち来んなー!?」
「地球で言う 『ゴブリン』 に似た生物ですね。
……醜い」
キュア達を襲う盗賊は……変化する前は、ガッシリとしたマッチョ体型であった。
しかし変化後は───
緑の皮膚に体毛はなく、耳が長く尖り、腹がぽっこりと出て、牙が伸び、語る言葉は片言となってゆく。
≪ギャギャッ! 死ネェ!≫
「醜い……ホントにな。
魔人族だって光燐種とは違う見た目だが、コイツ等と違ってキレイだ」
「えへへー。
そ、そりゃー魔人族は最強の人間種だからなー……───ってー、ヘイスト?
目 (?) が恐いぞー?」
「今……キュアは、『魔人族を』 キレイと言ったのか?
それとも……『チェンを』 キレイで美人で可愛いと言ったのか? ん?」
「ま、魔人族だなー……」
盗賊は、数こそ多いが所詮は 外を見張る役割しか与えられない雑魚。 キュア達の敵では無い。
「最後の一匹!」
≪───ギャ……!?
折角、勇者ト巫女ヲ……捕ラエ……タ……ノニ…………≫
「勇者と巫女? イーストンとシーナの事か?」
最後の敵のHPを0にしたと同時に、ナニやら不安げな単語を遺して死んだ盗賊達。
人型魔物といえば【餓鬼】系が多いが、【盗賊】は人間だ。
しかし、こんな人間は───
「───あっ、朱雀!?」
「ええ、主様」
「なんなんだー!? 二人ともー!?」
ピンと来ていないチェンとヘイストを置いて、とある可能性に思い到り頷きあうキュアと朱雀。 キュア達が知らない人間種が居るとすれば……。
「邪神の使徒、かもしれませんね」
「ああ。
【ロス村】村長が連れていった【バイオ工場】の工場長が、『新しい責任者』 について特に特に何も言わなかったから……てっきり【名を失いし神】へと裏切った光燐種の者達を、邪神の使徒と呼ぶのかと思い込んでいたんだけど……」
「邪神の……【名を失いし神】が加護を与える者達か!?」
【黒鼠神】にラットマン。
【餓狼神】にドッグマン。
【魔神】に魔人族。
【光燐神】にキュア達タイプの人間。
今まで考えもしなかった、五番目の人間種である可能性は有る。
「『責任者』 とやらの正体も、此の盗賊どもと同じく醜い内側を隠し持っているかと」
「……イーストン達は洞窟の中だろうな。
行こう、みんな!」