317 村人、【生命の台座】の話を聞く。
【ロシマ】南区、住宅街。
魔法ギルドの依頼を受け、依頼者が居る場所へと向かっていたたキュア達。
───だが、彼等は区域を仕切る壁の門番に呼び止められていた。
「魔法ギルドの紹介状があるので、アナタ方が通行する事そのもの───は、構わないのですが……」
「「「…………」」」
チラリと、門番が見遣るはキュア達……の横でフワフワと浮かぶ 剣、ソウルイーター。
ヘイストを、困り顔で見ていた。
「じ、自分は生き物を傷付ける能力がない魔剣だから……」
「はい。
それは私も【鑑定】スキルを持っているので分かります。
ですが……独りでに動く剣など、住民にとっては恐怖の対象でしかなく……」
「ぐぐぐ」
喋る剣に対し、困りつつも真摯に対応する門番。 そしてヘイストも現実では元・領主館門番である。 彼の言い分は尤もであり、自分でも 止めるに決まっている。
二人(?)の遣りとりに、埒が明かないと判断したキュアは。
「俺達の装備品は問題無いんだよな?」
「ええ」
「……なら仕方無い。
ヘイスト、済まないが俺に装備されてくれないか?」
「へあ"っ"!?」
悲鳴を上げて、キュアの腰に吊るされるヘイスト。 彼女の顔(?)すぐ横に、キュアの股間があるが、問題はない。
「…………。
なんなら、私が装備しても良いんですよ?
私も【光燐神】のチカラで、装備が出来るように成ったので」
「へぶん"っ"!?」
顔(?)を赤く(?)し、謎の悲鳴を上げるヘイスト。 『天国』 と叫んだ訳ではない。
そこまで変態では 無い。
「これで問題は無いかな?」
「はい。
問題を起こさなければ、問題は有りませんね」
「では、失礼する」
住宅街へと進むキュア達。 住宅街という名前だが、【ロシマ】の街人全体がココに住んでいるのではなく、ある程度裕福な人間ばかりが住む場所らしい。 身形の良い人間が目立つ。
然りとて、キュアの同業者かはたまたボディーガードか。 武器や杖を装備した強者の姿も少数ながらチラホラ存在している。
そんな住宅街を確認しながら、目的地の依頼者宅へと着いたキュア達。
「ココだな」
「大っきい家だなー」
以前、キュア達は別のサブイベントで【ロシマ】領主館へと行ったことがある。 そこには劣るものの、充分立派な建物であった。
ここの門番へ、魔法ギルドからの紹介状を見せると家の中へ案内される。 リビングで暫し待たされ、ようやく部屋に入ってきたのは使用人に肩を担がれた40手前ぐらいの男性。 顔色はあまり良いとは言えない。
「儂がココの主だ。
早速だがオマエ等には、とあるダンジョンに潜って貰いたい」
「目的は何でしょうか?」
キュアの質問に、男性が手を上げると、側の使用人がキュアの前に紙を差し出す。 紙にはダンジョンの位置、ダンジョンのおおよそのマップ、出現する敵の種類、台座の外観などが書かれていた。
「【生命の台座】というアイテムを探してきて欲しいのだ」
「【生命の台座】……?」
「千年近く、【ライフイーター】というアイテムを飾っていた台座だ。
儂は特殊アイテムである【ライフイーター】だけを持ち帰ったのだが───」
望むアイテム名が出て、おもわず反応しかけたが……ぐっと堪えるキュア達。 しかし無邪気なチェンは。
「おっちゃん、【ライフイーター】の事をもうちょっと詳しく聞きたいなー」
「お、おっちゃん……ま、まあいい」
チェンの角を見る男性。
【ライフイーター】が、元魔人族の秘宝だと知っているのかもしれない。
「生まれつき体が強くない儂は、様々な回復系アイテム・魔法を収集していた。
そんな中で【ライフイーター】の噂を聞き、ダンジョン化した滅んだ国の廃城から入手したのだ」
「役に立たなかったのですか?」
「アレにはHP吸収能力が在るが……戦士が装備してこそ役立つ物だったのだ」
「なるほど」
凡そ予想通りの効果に、心の中でガッツポーズを取るキュア。 見透かされて、チェンに小突かれた。
「【生命の台座】にはどんなチカラが?」
「元々は只の台座だったらしい。
だが……主無き【ライフイーター】が吸収したHPは、永い時の間で台座に染みいったという」
「台座にHP……?」
意味が分からないので、ヘイストのような 『魂吸収能力』 が有る、もしくは得たのだろうと納得するキュア。
「【ライフイーター】を回収した者達の話では、台座の上に立っている間、非常に気分が良かったらしい。
【ライフイーター】の効果と勘違いしていたらしいがな。
儂は、その台座でベッドを作りたいのだ」
「はあ……」
話を聞くに、誰も特別な台座とは思わなかったらしい。 ならば【生命の】とか誰が名付けたのだろう。 誰がその効果に気付いたのだろう。 【ドラゴンハーツ】の謎常識であるが、今のキュアには関係ない。
「分かりました、【生命の台座】を持って帰ります」
「頼むぞ」