316 村人、【ライフイーター】のサブイベントを受ける。
「ここが【光燐神殿】……。
この虹色の球体一つ一つが、大陸中に繋がっているのだな」
「そうゆう事だ」
【魔神城】は【下位魔人族の集落】から異世界の神、【扉】を抜けて通常の世界へと帰ってきたキュア達。
【光燐神殿】の中、不思議な虹色の球体が並ぶ部屋へと転移してきた。
「もしかして自分達の国にも、こんな地球とやらの神が居る……とか?」
「あり得ませんね」
「神擬きを除くと……。
絵本で魔王四天王として語られている朱雀達四人と上位神だけ、で良いんだっけな?」
「ええ……寧ろ───」
「寧ろ?」
「……いえ、戯言です。
そんな事より、今すぐ魔法ギルドが有る【ロシマ】へ向かわれますか?」
「───……ああ。
他に【ライフイーター】への指針が無いしなぁ」
言い淀む朱雀。
これは嘗て、『精霊王にするため』 という 『神』 が 『人間』 如きに従う理由を、言い淀んだ時などと同じ雰囲気であった。 人間には介在できぬ神の都合、といった事情が垣間見える。
然れど。 そんな事は、魔ナシ差別に巻き込まれてきたキュアにとって慣れっこである。 なら自分を害する意図は見えない神の策略の方が、遥かにマシなのだ。 敢えて問わずに【ロシマ】近くへの【扉】を潜りぬけた。
「あれが【ロシマ】……鍛冶女が拠点とする街、か」
「鍛冶女……ダイの事か?
剣に関する事だから、何らかの助言は貰えるかもしれんなぁ」
「い……いやいやいや、まずは魔法ギルドだ。
そうさ、魔法ギルドに行くしか無い。
……なっ? そうだろう?」
「あ、ああ」
ヘイストの謎の気迫に圧されるキュア。
まあキュアとしても、『剣そのもの』 のマニアではなく 『剣鍛冶』 マニアであるダイ達に、太古に失われた剣の事を聞いても分からなさそう───というのは在る。
また、【ドラゴンハーツ】の 『イベントフラグ』 といった物を何となく理解しているキュアは、【ソウルイーター】と双子同然の【ライフイーター】が手に入るとしたら……同じ魔法ギルドから依頼を受けるのが最短の道だと予測していた。
以前来た時はトラブルで終わったので、注意しつつギルド内へ入るキュア達。
「魔法ギルド……何から何まで、正体不明な物ばかりなのだな」
「まあ慣れたら慣れるさ」
何らかの生首を干した物など、初めて見る奇っ怪な光景に警戒していた ヘイスト。 通りすがりの人々に奇異の目で見られていたが……他の奇妙奇天烈な物にまぎれ、直ぐに忘れさられていた。 そんな最中、受付の頭上に 『?マーク』 が出現。 最大級の奇っ怪な光景に、軽くパニックに成るが……キュア達三人が平然としていたので騒ぐのはやめる。
「キュアー、受付のお姉さんが別人だぞー!?
良かったなー!」
「ああ……助かった!」
「そ、そんなに朱雀は揉めたのか?」
「彼れは主様の努力を、然も 『余計な御世話』 などと抜かした牝狐が悪いのです」
「それはソイツが悪いな」
「とはいえ、二人とも暴れちゃダメだぞー?」
子供に嗜められる二人。
「済みません、以前に中級最初の依頼のみクリアした者ですが」
「……ああ、アナタが例の……」
「はい?」
「いえ、失礼しました。
以前の受付は、責任を取らされて窓際職に回されたんですよ」
「(窓際職が何かは分からないけど) す、済みません」
「お気に為さらず。
他の来客からも、怠惰な彼女への苦情は多く……アナタが悪いのでは有りませんから」
「そうなんですか」
「お陰様で、お偉いさんの娘ってだけで威張ってた先輩より私の方が出世して……くふふっ♡」
怠惰な受付の次は、 向上心旺盛な 受付のようだ。 まあキュアとしては、依頼をちゃんと斡旋さえしてくれれば関係ない。
「……っと、失礼しました。
コチラが現在のアナタに提示出来る依頼の一覧です」
「どれどれ───
【怪獣の妹、人間界に出現す】【不細工アデルはモテモテイケメンに成りたい】【空のアナタへ】…………変な名前の依頼ばかりだなぁ。
依頼者は、どんな理由でこんな名前を付けたんだ……?」
受付が、イベントボードに近い 『依頼書ボード』 をキュア達の前に出してきた。 並ぶのは、数々の内容が予測出来ない変なタイトルばかり。
面々が困惑していると。
「【血ぃ吸うたろか】……主様、此方の依頼は其れっぽく有りませんか?」
「血を吸うのがHP吸収能力、という事か?
確かに血を失うと体力は消耗するけど……」
「輸血という技術が地球には有りまして───」
「何か狙いの報酬が御有りで?
依頼名をスワイプすると、リザルトが出ますよ?」
「───そういうのは早く言いなさい」
「す、済みません」
【ドラゴンハーツ】の説明書を見れば一発で分かる事だが、その概念すらないキュア達には難しい。 「あーだこーだ」 と騒ぐのを見かねた受付が、依頼書ボードを操作する。
キュアの為に色々と頭を使った朱雀は、見当違いの努力をさせられた腹いせに受付に凄む。
「あっ、キュア!
有ったぞ、【ライフイーター】だ!」
「【求む、長寿の法】───か」
剣の体でもスワイプできるらしく、依頼書ボードをチェックしていたヘイストから声が上げる。 キュア達もチェックをして依頼内容を確認、特に問題はなく皆の了承を得た。
「この依頼を受けようかと思います」
「分かりました」
出だしだけ、オチだけ思いついていた短編タイトルの在庫整理をしました。
【怪獣の妹、人間界に出現す】
神話にしか存在しない怪獣に育てられた人間の少女(自分もその怪獣と同じ種族だと思いこんでいる)が、武者修行のために冒険者ギルドへ行く話。
だが義兄怪獣が大のシスコンで、こっそり付いてきていて、ゴブリン相手に神話的崩壊を撒き散らそうとするコメディ。
【不細工アデルはモテモテイケメンに成りたい】
勇者と魔王、人類と魔族が殺し合いの果てに絶滅しかかっている世界。 魔族の家畜だった種族(ムカデに近い生物)の村で育った勇者の子孫アデルは、魔物転生術を探す。
【空のアナタへ】
どテンプレ通りの異世界転移もの。
【血ぃ吸うたろか】
勇者召喚巻き込まれ系。
ただし巻き込まれたのは蚊。
転生の間で女神の血を吸い、神の如きチカラを得たその蚊は……。