3 村人、VRに触れる。
≪キュイイィ……ン≫
「なっ……何の音だっ!?」
キュアが生まれて初めて聞く、怪げな音───『機械音』。
まるで頭の中から直接聞こえてくるようなその怪音を警戒していると…… 『兜』 は、キュアの頭の形に合わせて変型して簡単には動かせなくなる。 更に混乱するキュアの、視界が突如開けた。
「えっ……!?
か、顔が───顔が完全に兜に包まれているのに、前が見える!?」
恐る恐る、目元へ伸ばされたキュアの手は……不透明だった筈の、兜の鍔に遮られる。
「な……何なんだコレは……。
ま、まさか───魔道具か!?」
キュアは魔法を使えない引け目から、少しでも技能を得ようと識字率の低いこの世界で読み書きを猛勉強した。
簡単な四則演算も出来る。
ただ、勉強の為の教科書が妹のクリティカルが買った物のお下がりであり……ソレもまた妹へのコンプレックスになっているのだが───現状、物語とは関係が無いので置いておく。
とにかく。
文字を覚え、様々な本を読み、魔道具の存在を知ったキュアは、使えない魔法の代わりに成らないかと色々と調べあげた。
結果……平民がとても買える代物ではないと分かっただけであるが。
「……もし魔道具だったなら俺は億万長者に───あ、いや…… 『何故平民が魔道具を!?』 とかって成ったら面倒だな……」
ソレでも、憧れの魔道具なのだ。
取敢ず色々と調べてみる事にしたキュア。
「文字が空中に浮いている……ん~?
───し……しす……?」
≪システムデータの破損を確認。
【仮想現実装置】を使用するには、データの復旧作業が必要です≫
「……か、仮想? 現実??
パーシテアーとは、この兜の名前か?」
【仮想現実装置】から、この世界の言葉で装着者であるキュアに色々と指示が来る。
意味の分からない言葉もある所為で、時に間違った行動をする事もあったが……そんな場合は、【仮想現実装置】が正しい手順を丁寧に教えてくれた。
試行錯誤の末、正しい行動をすると ≪次は───≫ という、新たな行動示唆文がキュアの目の前に浮かぶ。 何時しか……ワクワクする子供のような笑顔をキュアは浮かべていた。
≪【仮想現実装置】の、基本設定が終了しました。
以下のデータが復旧出来ました。
───────
─────
───ユーザーデータは、復旧出来ませんでした。
『ユーザー』 の登録をして下さい≫
「…………ユーザー?」