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297 村人の仲間たち、動く。

 

「───ヘイスト?

確か【ディメイションカード】って、一度に12枚のカードしか出せなかったんじゃなかったかしら?」


「キュアが【ドラゴンハーツ】では不可能な 『武器の二本持ち』 を現実でヤるだろう?

アレを参考に、練習していたのさ」




 レイグランが治める領地、コタリア領に教会が攻めことを聞いたキュアは一番巨大で危険な軍隊に単身のりこんで行った。 然れど、暴走する末端が別ルートで領主館に攻めてくるという。

 領主館の面々は自衛のため、迎え撃つ準備を進めていた。




「ヘイスト」


「コリアンダー様」


「キュアに起こされてから、ずっと練っていた作戦だ。

この通りにディメイションモンスターとやらを配置してくれ」


「畏まりまし……こ、コリアンダー様?」




 本来、平民が所持する事はおろか見る事すら禁じられている 『地図』 を、ヘイストに渡すコリアンダー。 だが、地図を渡すその手が……微かに震えている。




「……すまない」


「い、いえ」


「異民族である母への教会の仕打ち……父の代からの怨念を、極僅かとはいえ晴らせるかと思うとな」


「「「…………」」」




 領主館執事コリアンダーは普段、様々な仕事を淡々とこなす。 寡黙で仕事の出来る男、ソレが領主館使用人達の共通意識である。


 ……しかし。

 今のコリアンダーは、悪鬼羅刹と言えるほどの憎悪を内包しており……仲間ですら後ずさるほどに、実戦経験のない者ですら感じとれる程に殺意を醸しだしていた。

 使用人達の尊敬・信頼を一身に集める執事は───




「チョビ髭」


「……す、朱雀様」


「主様にも問うた質問をする。

私に、教会の全てを焼き払って欲しいか?

其れとも神の名の下に、奴等から精霊を剥奪せしめようか?」


「……いえ」


「何故?」


「これは、人間の……私の問題だからです」


「ならば努努、忘れるな。

人間のチカラは、数。

貴様一人で解決できぬを知れ」


「…………」




 やや、自分だけの復讐に囚われている感のあるコリアンダーを叱責するような目で睨み───




「貴様の数は、一人か」


「……………………いえ」


「為れば同じ想いの者の問いを聞け。

……この館は、血の繋がりが無くとも家族なのだろう?」


「……はい」




 叱責の目から……普段通りの表情へと戻り、朱雀は。




「主様の居場所を守って下さい」


「…………。

……分かりました」




 コリアンダーに一言つげて、火燐を残してながら消えゆく朱雀。

 一瞬……微笑んだ気がする。

 助言も助力も、これで貰えない。




「こ、コリアンダー……様」


「……済まない、やや興奮していた」


「いえ。

コリアンダー様やキュア程じゃないにしても、教会へ恨んでいる身。

気持ちは分かります」


「うむ……我等レイグラン様の下に集った者同士、この危機を乗りこえよう」


「「「はいっ!」」」




 教会に魔ナシ判定され、差別され続けてきたキュア。


 異民族である母を迫害され続けてきたコリアンダー。


 その他、様々な理由で財を奪われたり傷つけられたり。

 領主館の使用人達が仲間家族意識が強のは教会という共通の敵が居るからなのだ。




「ディメイションカード!

みんな、この地図の場所へ行ってくれ!」


≪きゃあ!≫


≪ぴぴーっ!≫


≪しゃららららっ!≫




 ヘイストが【仮想現実装置】(パーシテアー)のアクティビティ、【ディメイションカード】で入手したのは、味方支援や攻撃能力など様々なチカラが有る【ディメイションモンスター】と呼ばれる存在の召喚能力である。




「へ、ヘイスト?

鮫のカードだけは使わないでね?」


「分かってるよ。

( ホントは便利なカードなんだが )」




 深海に潜るVRアクティビティで、鮫ギライになったクリティカルに、ディメイションモンスターの一体【スフィンクスニャーン】が親指を立てる。




≪お……オレっちの……百烈肉球……で……皆殺しにして……やる…………ニャーン≫


「そ、そう……御願いね」


「クリティカル、レイグラン様に付いて行かなかった警固秘書たちを指揮して皆の補佐を」


「はい」




 領主レイグランを、色々な技術・魔法で補佐する警固秘書隊。 クリティカルが副隊長であるが……キュアは殆んど有った事がない。


 何故なら、領主が外部の人間と会う時にほぼ必ず側に付いているという性質上───レイグランが女好きな訳では無いにせよ、美女が多い。

 ブラコンの(嫉妬深い)クリティカルは、副隊長の権限を使って出来るだけキュアに近付かないように厳命しているのだ。




「遠覚魔法部隊は教会・領民の動きを探知。

防壁魔法部隊は各拠点を守護。

攻撃魔法部隊は待機して下さい」


「「「はい」」」




 キュアが、攻撃から回復に探査などなど【ドラゴンハーツ】流の魔法を幾つも使用するが……本来、魔ナシではない人間でも、一種類の魔法しか使えない。

 複数の人間が協力して、初めて魔法とは実戦に使えるのである。




「シナモン」


「へい」


「討伐隊は領主館所属ではなく、領地所属ゆえ隊員は使えない。

戦況をみて、遊撃してほしい」


「分かったべ。

ジェノワーズ達やヘイストの幼馴染みが人手を貸してくれるらしいんで、色々やってみるだ」




 討伐隊隊長シナモンの専門は、キュアと同じく魔物や盗賊。 戦争向きとは言い難い。




「料理人は、怪我人や疲労困憊の人間が雪崩れこんでくると予想されるので、病傷・介護食を」


「キュアから貰った料理レシピに、薬効効果が載ってましたから、そういったのを優先させますよ」


「裁縫士たちは包帯や装備の不足が想定されるので、その準備を」


「コッチもキュアさんから色んなレシピを貰ってるからねぇ」


「後の者は、メイド長リカリス指示の下で兵士達や怪我人の補助を頼む」


「「「はい」」」


「我等にとって、教会は許されざる怨敵だ。

だが第一目標は、敵の倒す事ではなく……皆が無事に生き残ることだ!」

 

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