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296 村人……が戦っている、その裏側で。

 

「にっ、兄さんと教会が戦ってる……って如何いうことなの!?」


「たった一人で、って……そんな!?」


「其のままの意味ですよ。

主様の妹、小娘」




 キュアは朝目覚めてすぐ、怨敵である教会が目前まで迫っている事を朱雀より伝え聞く。

 そのまま教会の軍隊へと突撃した……と、聞かされたクリティカル達領主館の面々はパニックである。




「教会が……」


「領主様が居ない隙を狙ったのか」


キュアさん(魔ナシ)が魔法を使ったのも有るだろうねぇ」


「それを言うなら精霊ナシの件もだろ」


「いくら炎の怪人(アシッド)を倒した英雄とはいえ……大丈夫か?」




 キュアの強さは知っている。

 一晩毎に強くなる。

 然れど。

 然れど、だ。




「なん……なんで、兄さんはそんな事を!?」


「主様御自身の危機、そして主様が大切に想う貴女方の危機だからですよ」


「ソレは……兄さんの性格を考えたら、そうするんだろうけど…………」


「朱雀、オマエなら教会が動きだすずっと前から動きを掴めたんだろ!?」


「ええ。

ですから主様が強くなられるまで、調整は行いましたよ?

何とか昨晩中に目標値まで達せられて良かったです」




 激昂するクリティカル達と、淡々と語る朱雀。

 例えば、クリティカルを誘導したように書類をたった一枚焼くだけで。 例えば、富裕層が乗る馬車の母衣ほろに小さな焼け穴を作るだけで。

 何百何千もの人間どもの動きを調整できる。




「だから確認のため、夜中に勝手に私達の寝室に入って兄さんの寝顔を覗きにきてたの!?」


「何だそれ、羨まし……じゃなくて、今すぐキュアを追いかけて───」


「無駄ですよ。

私が運ばねば一日がかりの距離。

其の頃には全て終わっているでしょう」




 人を乗せた状態でマッハ飛行出来る朱雀は、朝早くにキュアを運び終えていたようだ。

 乗せた人間の安全を考慮しなくていい帰りは、行きの数倍の速度で帰れる。




「だ……だからって!?」


「頼む朱雀、自分を助力に連れていってくれ!

【ディメイションカード】の能力ならキュアの助けになる!」


「小娘、貴女は主様の居場所を守る使命が有ります」


「い、居場所って…………うん」




 キュアが【ドラゴンハーツ】の魔法・スキルを使用できるのと同じく、かつて【仮想現実装置】(パーシテアー)を使用し、【ディメイションカード】というアクティビティをプレイした事で、その能力を使えるヘイスト。

 彼女は、キュアの居場所・・・と聞いて何を思ったか……顔を赤らめる。 呆れ鼻白む朱雀が、その目先で火燐を弾けさす。




「ひゃんっ!?

な、何を…………」


「主様はチョビ髭にのみ告げて行きました」


「コリアンダー様に?」


「兄さんは何を?」




 チョビ髭 = コリアンダーと即答した、割と不敬な領主館面々。

 違う。

 朱雀に合わせただけだ。




「教会とは世界的組織であり、大勢の構成員が居ます」


「そりゃ……軍隊を作れるほどにな」


「で、あると同時に各地方支部の寄せ集めでもあります」


「教会内部で権力争いが有るとは聞くわ」


「教会の教主は誰か……教徒ですら知らないってのは公然の噂だよ」


「だから、自分こそが教主だと言いはる連中が何人も居るとか」




 古今東西ありとあらゆる宗教で必ず起こる、宗派争いの一種である。




「ので、軍隊といえど一枚岩ではなく、派閥争いによる亀裂がありましょう」


「有る……んでしょうね」


「人間どもの感情を操るのに使う、魔ナシであるはずなのに魔法を使う教義違反者キュアを許せない派閥。

精霊ナシを生みだす悪魔すざくが許せない派閥」


「そして……反教会最大派閥であるレイグラン様が許せない派閥───」




 いかにキュアが強かろうと。




「其々各々の思惑により集まっている軍隊からハミ出た愚連隊が幾つかが、この領主館を目指しています。

───纏まった大群なら主様御一人で対処できますが……溢れた端数は、その手に余ります」


「つまりキュアを無視した部隊で、ココが……領主館が戦場になる───ってことか!?」


「主様は、斯々然々《かくかくしかじか》という訳で……領主館が戦場になる弊害を懸念して居られました」


「確かに……アジルー村ほどでは無いとはいえこの街も魔ナシ差別が有るのだし、街中で戦争になれば暴動は有りえるわ」


「故にチョビ髭は街中に陣を用意し……その陣を小娘、貴女が作成します」


「じ……自分が、か」

 

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