293 村人、ユキーデを倒す。
「ジャッキーを汚せし者共が……。
……惨たらしく殺してやるぞ」
醜い化物になったユキーデ。
LVはもはや173まで上がっており、絶対的な存在となって勝ちほこっていた。
しかし。
そこまでの化物なのに、最後の最後まで自分では出向かず【魔神の右腕】達を、魔物達を、貴重な戦力を……『止めを刺すため』 ではなく、小出しにしてキュア達を 『疲れさすため』 に送っていたのは。
「───他の誰かが、俺達を倒しても……ソレはオマエの手柄だったんだろう?」
「…………っ!?」
キュアの、確信めいた予想。
それはユキーデの肉体よりも尚醜い、性根の話。
自らより弱い者にしか手をあげず。
少しでも強い者には刺客を送り。
「途中までヴィタリやサンチョや魔物共で獲物を弱らせようと……弱ったところを最後は自分が止めを刺せれば、手柄は自分一人だけの物と思いこめるんだ。
オマエという魔人族は」
「違う……!
貴様等如きにこのオレが出るまでも無いと…………!」
「……成程。
真の魔人族最強であるジャッキーと、何ならば比肩できるかと考えた末…………下らない手段で並ぼう、と」
「敵に止めを刺した数は同じって事だなー?」
「実力か棚ボタか……。
その違いは、ユキーデには関係なかったんだ」
「違うと言っているだろうがあああAあ亜あァアっ!?」
最強の人間種である魔人族。
自らが強くなる事を喜びとし。
強い自分を誇る種族。
強くなりたい。
『憧れ』 と、並び立てる程に。
───然れど。
如何に努力しようと……『憧れ』 は 『憧れ』 のまま更に強くなる。 『憧れ』 は次第に 『焦燥』 となり、『焦燥』 は醜くく腐れて歪に脹れあがってゆく。
「アAああぁアアあアAAあ唖Aあ亞阿あぁぁ……あ…………」
今のユキーデのように。
彼は、獲物を無数の鍵爪付き触手で絡めとり、全方位の石化光線で動きを鈍らせ、魔人の炎で焼こうとしてくる。
もはやユキーデは、ユキーデではなく───『肉塊』。
「見苦しい……」
「チェン、チェンより強い他種族をいっぱい知ってるけど……頑張りたいからなー。
ユキーデの気持ちは分かんないなー」
「そうだな。
コイツも、仲間とみんなで協力すれば良かったんだ。
……行くぞ、二人とも!」
終の猛攻。
ユキーデは支離滅裂に。
キュア達は協力し。
「腑抜け呼ばわりした【上位魔人族の街】の人間のように、皆で楽しみながら。
ゴミ呼ばわりした【下位魔人族の集落】の人間のように、皆で別け与えながら」
最後の一撃。
互いにボロボロであったが……その紙一重は、何の差か。
「───魔ナシなら良くわかる。
人間ってのは、助けてくれる人の分だけ強くなる。
なんでそんなに自分を強くしてくれる人達を、棄て駒になんて出来るんだか……」
「其れは主様が主様だからですよ」
「まー、キュアみたいな事は中々できないかなー?」
「何も特別な事じゃないさ」
止めを刺され、腐りはてて、朽ちゆく化物の肉塊から……ユキーデ本人の肉体が溶けでる。
とはいっても上半身しか残っておらず、エネミーボードを見るまでもなくHPはとうに0であるが───
「…………お……オレ……は……オレは……ジャッキーさえ居れば……良かっ───」
「知らん」
「………………おい……」
冥土の土産、的なアレコレなど知ったこっちゃないキュアは、ユキーデ最後の台詞を無視して何も与えない。
「さっさと下位魔人族たちの理性を返せ。
そしてソレから死ぬんだな」
「……き、きさま…………」
「死んで、ヴィタリやサンチョ……あと名前の分からない【魔神の右腕】に謝ってこい」
「…………」
「そこに、ジャッキーが居るかは知らんがな」
ユキーデは……瞑目し。
「……ゴミ……め。
キサマは、最後まで嫌な奴……だった。
…………まる……で……アイツ……の……よう……な…………。
……何時も……ジャッキー……の……隣に………………居た……───」
「……………………知らん」
物言わなくなったユキーデの肉体が消滅していくと同時に、光る何かが溢れ出てゆく。 まるで光の一つ一つが細胞であったかの如く。
無数の光は、一度真っすぐ空へと向かい……【魔神城】の各地へと拡散していった。 その多くが【下位魔人族の集落】へ向かったを見るに、たぶん下位魔人族の理性なのだろう。
───と、いった所で【ドラゴンハーツ】からの声。
☆【魔神の肉盾】クリア
『金26000』
☆ユキーデを倒す
『金12000』
☆ユキーデの角を部位破壊する
『ユキーデの角』
☆ラストユキーデの眼球を全て潰す
『魔神の眼』
☆ゲイザー種を全て倒す
『イビルゲイザーキングの眼』
☆ローパー種を全て倒す
『イビルローパーキングの触手』
☆ユキーデを後悔させる
『【真の魔神城の鍵】の真なる形』
「───か。
魔神の肉盾……ね。
まあユキーデにはユキーデの悩みは有ったんだろうが、自業自得だ」
「かわいそーっちゃ、かわいそーだけど……ヤった事がヤった事だしなー?」
「我等には預かり知らぬ事かと」




