292 村人、グロがる。
「【ゲイルインパクト】【ドリルインパクト】【アースインパクト】っ!」
「───……フンっ」
「また空にっ……!」
【ゲイザー】【ローパー】系の援軍を呼んでは空中へ移動し、キュア達が援軍を全滅させれば地上に降りてキュアを攻撃。 ある程度HPが減ったら再び空に移動してゆくのを繰りかえすユキーデ。
繰りかえすたびに援軍の質も上がり、最弱タイプから【レッサーイビル】【イビル】、今はイビル上位種の【イビルゲイザーキング】【イビルローパーキング】を呼びだしながら、自らは空中で静観に努めていた。
朱雀とチェンも、ユキーデにはせいぜい牽制攻撃ぐらいでキュアと共に【イビルキング】を相手どっている。 二体の魔物はソレ程の敵だからである。
「【イビル】から地力が上がっただけで、攻撃方法は同じだから被弾はしないが……面倒だな。
チェン、HP・MP回復薬や治療薬に余裕は有るか?」
「ヴィタリとサンチョ相手にスキルを得れてなかったら、キツかったけどなー……【魔人球】!」
システム的には素早く着替えられるとは言え、戦闘中では中々上手くはいかない。 装備品でバッグの中身も圧迫してしまう。 装備・スキルを整えたあと、休息等々も挟められれば尚イイ。
サンチョ戦の後、【上位魔人族の街】へ戻れていなければ……キュアはともかく、チェンはヤバかったかもしれない。
「…………。
其れにしても……彼れから、一気に無口に成りましたね」
「奴にも、多少は罪悪感が有ったのかは知らんがな」
「女々しそうだしなー?」
キュアがユキーデに対して、『同じ【魔神の右腕】を棄て駒にした』 と告げてからは、無口無表情と成った。
『ユキーデに誉めてもらいたかった』 というヴィタリ。 彼女は何故あんな下手な演技までして一人でキュア達と戦ったのか。 サンチョも……まあ一応。
【ドラゴンハーツ】のイベントだからと言えば、ソレはそうなのだろうが───キュアにはユキーデの傲慢さが垣間見えた。
「【イビルキング】も撃破したぞっ!
降りてこい、ユキーデ!」
「……しぶといゴミが」
連戦につぐ連戦。
疲れている筈が……その様子も見せぬキュア。 想定外のしぶとさに、舌打ちをしながら降りてくるユキーデ。
キュアとの一騎討ち。
初めてユキーデと戦った時のキュアは、ユキーデとの筋力差に押されて苦戦した。
然れど。
嵐の如き爪角の連撃を、今のキュアは。
「くっ……光燐如きがっ!
なぜ今のが避けられるっ!?」
「安全地帯に居たからだ!」
「「「…………」」」
嵐を素通りするかの如く猛攻を掻い潜りダメージを与えてくるキュアに……チェンと朱雀からは称賛とも呆れとも言えぬ反応を、ユキーデからは隠しきれぬ苛つきが漏れだす。
「……安全地帯とか言われてもなー。
アレは確かにユキーデがパニくるのも分かるかなー……」
「主様とは格が違うということです」
「イチイチ癇にさわる奴等だ……。
オレの技にそんなモン有るかっ!」
「出し惜しみなんかするからだろう。
他の【魔神の右腕】と……仲間と共に協力すれば、俺は敵わなかったぞっ!」
「…………っ」
キュアの一撃が、苛つき精細を欠きだしたユキーデを捉える。
ついにHPが40%を切ったユキーデ。
「…………うっとおしいぞ!
オレからジャッキーを奪ったゴミ共が!」
「……アレは!?」
魔物の援軍を呼びだす時のように、空中へ移動するユキーデ。 更なる強敵を呼びだすのかと思えば…………彼の儀式めいた動きに、【イビルゲイザーキング】と【イビルローパーキング】の死体がフワリと浮かぶ。
ユキーデと二体の魔物は、溶けながら混ざりあっていった。
「ま、魔物を……食ってる、のか?」
「……グロいなー……」
食い、食われ……やがて一つとなった三つの肉体。
凡そ5m、樽状の肉塊からは【イビルゲイザーキング】の巨眼。 しかも分裂するようで、目の総数や位置が不気味に変化している。
両腕は失われ……その代わりに無数の【イビルローパーキング】の触手が全身から生えている。 その先からは【魔人爪】。
「醜悪な……。
今まで、故郷でもこの国でもいろんな魔物と戦ってきたが───こんな化物は見たことが無い」
「ふん……楽には死ねんぞ……?」
巨眼の上に、ムニッとユキーデの顔。 二体の魔物の肉体と能力を取り込んだらしい。
「ゴミ共が……。
人類最強の魔人族の中でも、最強のオレに───ジャッキーでも無い奴等が敵うと思うな」
「か……勝てるぞー!
押しきってやるんだからなー!」
「ああ。
どうやら察するに、昔からジャッキーとやらに負けつづけているらしいしな」
「ほざけ。
ジャッキーとの事を侮辱するゴミに相応しい死を与えてやるぞ!」




