288 村人、おまえのようなお嬢様がいるか。
「あ~れぇ~~!?
ソコな旅の戦士様、どうかお助けを~!」
「「…………」」
キュア達が【魔神城】城壁内部の【上位魔人族の街】を観光し終えて、街の外れにやってくると…………頭上から 『?マーク』 を生やした女性が、ゴロツキであろう魔人族数人から襲われていた。
「キュアー!? 朱雀ー!?
早く助けてあげなきゃー!??」
「あ、ああ……うん」
「…………喜劇としてもド三流ですね」
素直なチェンは、悲鳴を上げて襲われている女性を真剣に助けようとしていたが……キュアと朱雀は乗気ではない。 どう見ても 『コレからサブイベントを始めますよ?』 といった、演技臭い流れがキツかったからだ。
「…………はあ。
【巨獣の牙】、【ロングディスタンスレンジ】」
「ぐあっ!? て、テメェっ!?」
振り回すぐらいしか出来ないが、魔人族の然ほど器用ではない手でも持てる……巨獣 (地球で言う所のマンモスに似た獣) の無加工の牙で、ゴロツキの一人に攻撃するキュア。
ゴロツキ共に演技臭さはない。
本気で女性を襲っていたようだ。
「あー……おいオマエ等、その【魔神の右う───じゃない、女性から手を引け」
「……っ!?」
呆れ顔のキュアと、狼狽顔の女性。
とことん演技が下手らしい。
「え? 【魔神の……ええ??
き、キュアー?」
「……………チェン、チェンなら分かる。
あの女をよく見ろ。
『アレ』 は、戦士の 『ソレ』 だ」
「羽根娘、貴女の素直さは美徳です………………が、起きている事柄だけでは無く、他も見なさい。
『彼れ』 は、街人の 『其れ』 とは桁が違います」
「……っっ!!」
女性を (胡乱に) 観察するキュア達と……観察され、アタフタと挙動不審になる女性。
そして突然の乱入者のせいで、
『自ら誘ってきたクセに、突如股間を蹴りあげて逃げた女』 への制裁を邪魔されたゴロツキ共が、キュアへ食って掛かる。
「な、何をワケの分からねぇ事をくっちゃべってやが───」
「【鈍鉄の盾】、【ロングディスタンスレンジ】」
「ぐぼっ!?
…………チクショウ、覚えてやがれ!」
茶番をサッサと終らせたいキュアは……やはり魔人族でも持てる、只の鉄塊に取っ手をつけただけの盾を、ゴロツキに叩きつけて追っ払う。
キュア達と、ゴロツキに襲われていた女性……4人だけとなり。
「ユキーデの使いか?」
「───な、なんで……!?
アタ……わたくしは只のお嬢様で……」
「まずそんな化物みたいな筋肉で、あんなヒョロヒョロのゴロツキに負けんだろう」
「ヒドっ!?」
「序でに其んな2mを超える大女、あんなヒョロヒョロのゴロツキに負けないでしょう」
「気にしてるのにっ!?」
キュア達の前に現れた、サブイベントの女は……2mを超える、魔人族の角を含めれば3m近いゴリッゴリのマッチョであった。
身長も筋肉量も、キュアを上回るユキーデを更に上回っていたのだ。
「そ、そっかー……。
悲鳴にパニくっちゃったけど、言われてみれば確かに変だなー」
「で、こんな時に話しかてくるヤツなんて、【魔神の右腕】しか居ないだろう?」
「二人とも、ゴメンなー?」
「よく反省し、よく考え、よりよく成長なさい。
然すれば…………彼のようには成らないでしょう」
「…………というか、魔人族ってやっぱり最強の人間種ともなると色々犠牲に───」
チェン親子は光燐の村で育てられたから……などとは声には出さず魔人族の (特に【魔神の右腕】の) 残念っプリを考えつつ、女性魔人族へ武器を向けるキュア。 そんなキュア達の言葉の一つ一つにプルプルと震える女性は、ぶつぶつと小声で何かを呟き……。
「───っだらァ!?
ザッけんじゃネェぞ、糞があっ!」
「うぉ?」
狼狽える様子から一転、憤怒の表情で、キュア達を睨む女性。 筋肉や角と相まって、地獄の鬼にしか見えない。
「このプリティロリボディにイチャモン付けやがって、○○○野郎共が!」
「プリ……何て?」
「……彼れの対極でしょうか」
筋肉は着てても心はロリ。
乙女心らしい。
「ボケがっ!
せっかく、ユキーデ様に誉めて貰おうとしてたっていうのにヨォおお!」
「騙し討ちのつもりだったのか何だか知りませんが……自業自得でしょう?」
「るっセェんだよっ、糞人形!
人間は大人しくアタシにブチ殺されやがって、糞人形は黙って付いてくりゃア良いんだよっ!」
「───なら、オマエは俺の敵だ。
大人しく俺にブチ殺されろ」
仲間を害する者へは、女であろうと容赦しないキュア。 【魔神の右腕】すら霞む殺気を持って、相対した。




