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282 村人、仲間を奪われる。

 

「……───下らん」


「…………」




 殺意が本気では無いと言われ、暫し黙っていた上位魔人族ユキーデ。 キュアへの興味が失せたらしく、両腕をだらりと下げる。 彼を無視し、朱雀───【魔神城の鍵】を見遣り。




「…………来い、真なる鍵。

オマエ(・・・)は、オレと共に来るべきだ」




 手を差しだすユキーデ。 その表情は、憐憫。

 受けて、朱雀は。




「お断りします」


「……なに?」


「私が付いてゆくのは、主さ……彼のみ」




 キュアを見つめ、凜と答える朱雀。 まさか断られるとは思ってもいなかったらしいユキーデは、ポカンとした表情で、差しだした手を所在なさげにしていた。




私が(・・)彼に殺される(・・・・・・)道を選んだのは貴方方にも理由が有ります」


「す、朱雀ー……!」




 泣き顔のような、笑顔のような、そのチェンの表情を見るに……朱雀は、己が的外れな内容を語ってはいないのだと、誇りを持って彼女の頭を撫でる。




この方(キュア)に異議あると言うのならば先に貴様等が謝罪せよ、低級神のペット(・・・)共」


「そ、そうだぞー!」


「……貴様」




 嘗て。

 チェンは、キュアを殺すつもりで彼に近付いた。 光燐の盗賊に、両親と友人と世話になった人々を皆殺しにされたチェンは、寂しさから魔人族がたくさん居るという【魔神城】へと行く事を決めたからだ。


 然れど……元々は心優しい少女である。


 【魔神城】へ行く為に必要な【魔神城の鍵】を探す旅するウチに、善き光燐の人間と出会い。 キュアと出会ってからは彼に懐き───

 ……人殺しを考えた事を後悔し。

 自分がこの世に残された最後の魔人族だという事実も合わさり……己が【魔神城の鍵】に入り、悪しき魔人族が犇めくという【魔神城】へ行く事を望んだのだ。


 しかしそんな事を望まず、チェンを説得するキュア。 キュアと、説得されたチェンを邪魔と見た【魔神の右腕】の一人が【魔神城の鍵】に取り憑き、二人を殺そうとしてきたので協力して撃破。

 キュアとチェンは仲間となった。


 チェン生存ルートに入った顛末である。




「……そんな、下位魔人族(・・・・・)を選ぶというのか?」


「囀ずるな、下郎」




 チェンに愛着を抱き、一連を知る朱雀は、悪しき魔人族を嫌悪する。

 特に、【魔神の右腕】などと名乗る輩を。


 現状、チェン生贄ルートへと転じていると予測するキュアがチェンを隠したがっている事にも気付いている朱雀は、本来【真・魔神城の鍵】の中に入っている筈のチェンに成り代わり、代弁する。




「我等は、魔神にも上位魔人族にも興味などない。

用を済ませば【魔神城】を去る」


「…………。

何をも理解せぬ愚か者共が───」


「知らん!」


「……あ?」




 一喝するキュアと、呆気に取られるユキーデ。 面倒くさく成った……訳では無い。 たぶん。




「何も語らんというのなら去れ、ユキーデ!

昔に、魔神と悪しき魔人族と善き魔人族の間に、何が有ったか知らんが【魔神城の鍵】もその中身(・・・・)もやらん!」


「キュアー……」


「…………」




 ユキーデは瞑目し。




「───ならば、真なる鍵よ。

オマエ自らコチラへ来たくなるよう、仕向けてやろう」


「は?」


「下位魔人どもよ」




 目を開いたユキーデは、下位魔人族を(・・・・・・)纏めて(・・・)一睨みする(・・・・・)。 思わず 「「ヒイッ」」 と悲鳴を上げるピョウと(・・・・)ユンの(・・・)二人・・。 ユキーデがクチをすぼめたのを見たキュアは、すわ、再び【魔人炎】を吐きつけるのかと二人の下へ駆けつけ始め……。




「───が、かっ……!?」


「キュア……兄サ……!」




 しかし、クチをすぼめたまま動かぬユキーデ。 ユキーデは動かぬのに、苦しみだす下位魔人族の二人。

 キュアが怪しむまま……駆けつけた頃には、膝から二人は崩れおちた。




「ピョウ、ユンっ!?」


「「───……」」


「ふ、二人とも……?」




 二人は、意識は有るようだが……意思は感じられなかった。 その目はうつろで───まるで、理性を失ったかのような。




「ま、まさか……ユキーデ!

貴様っ!!?」


「そのクズ共から、魔人の核とでも言うべきチカラを奪った。

……ソイツ等は、もはや生きる屍よ」

 

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