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280 村人、上位魔人族と出会う。

 

「───っ」


「……朱雀? どうした?」




 【イベントゲイザー】と【イビルローパー】を倒し、最後の鉱山をクリアしたキュア達。

 魔物の素材回収をしようとしていた所で、朱雀が 『何か』 に反応していた。




「主様、御注意を。

何者かが鉱山内に侵入してきました」


「…………」




 咄嗟に思い至るのは、【ゲイザー】しか出現してこなかった【魔神城】城壁外部の鉱山にて、三カ所目にして急に【ローパー】が出現した事。

 依頼サブイベントの気配。




「(…… 頭上(・・)は?)」


「(何も(・・)御座いません)」


「(…………。

おそらく、会話の流れしだいで依頼サブイベントが起きる類いなんだろう)

みんな、構えろっ!」


「お、おー!」


「ま、まだ何か居るんでやすか?」


「勘弁して欲しいんでごぜぇやすがねぇ」




 ボス部屋の中心より、やや奥。

 何時、何が起こっても大丈夫なように散開して構えるキュア達。

 一本道の鉱山を抜け、部屋に入ってきたのは。




「…………ほう、キサマか。

五柱神の封印の向こう側から来た者は」


「オマエは……上位魔人族、か?」


「そうだ」




 ピョウやユンとは違う、くすみの一つもない真っ白な肌。 栄養失調など微塵も感じさせない、逞しい肉体。 キュアの持つ、どの剣よりも重厚そうな爪と角。 圧倒的存在感。


 ───その男は、どう見ても上位魔人族であった。




「真なる鍵を使われた(・・・・)気配を感じ、暫し泳がせていたのだが……」


「…………」


「まさか【光燐】如きが【イビル】二体を相手に勝つとはな」




 朱雀をチラリと見遣り、キュアへと視線を移す上位魔人族の男。

 その視線や気配は……弱小種族への嘲り、である筈の偉業への感嘆、そして…………怒り。




「部下を殺したのは悪かったが───」


「部下? 何の……ああ、イビル共の事か」




 つまらん、といった表情で口をすぼめる上位魔人族。

 背筋に寒気が走ったキュアが動く。




「………………っ!!

避けっ……!!!」


「……【魔人炎】」




 チェンが【魔人炎】を吐く仕草を見馴れていなかったら───気付けなかったかもしれない。 上位魔人族の意図に気付いたキュアが咄嗟に思考発動による【火特防】(ファイアガード)を唱えつつ、射線上にいた下位魔人族のピョウとユンを突き飛ばす。


 上位魔人族の炎は、下位魔人族を狙った物ではなく……【イビルゲイザー】と【イビルローパー】の死体を狙った物だったらしい。 着弾と同時に爆発炎上し、魔物の死体が消滅した。




「す、スゴいなー……。

チェンの【魔人え───むぐっ」


「キサマ……今、彼等に当たる所だっただろうっ!?

同族だろうが!」




 チェンが、望ましくない(・・・・・・)言葉を言いそうだったので怒りに紛れさせてチェンを突き飛ばすフリをし、ソッとクチを塞ぎながら朱雀へパスするキュア。

 上位魔人族の、次の台詞は予想しつつ。




「ゴミを焼却しただけだ。

代わりにクズが如何か成ったとしても、知った事じゃない」


「…………」




 もしキュアがアジルー村の人間を攻撃している時に、仮に (現実には居ない) 他種族から 「同族なのに酷い事をするな」 などと言われれば、白けるだろう。

 同族であろうとクズは居る。

 上位魔人族が下位魔人族を酷く見下しているのは知っていた。


 ピョウとユンは仲間なので、怒ってはいるが……上位魔人族の台詞は予想通りだったので取り乱したりはしない。

 目的通り、チェンから情報を漏らさせずに朱雀へと任せられた。




「……何が目的だ?」


「…………。

他の【右腕】どもは、放っておけと言っていたんだが───」


「……っ」




 一瞬でキュアの前に瞬間移動した上位魔人族。 キュアには見覚えが有るスキル……キュアが最も頼りにするスキルの一種だったから、辛うじて、反応できたのだ。




「ほう、今のを止めたか」


「【バックステップ】の前進版か……っ」




 以前、【魔神神殿】にて【魔神の右腕】に襲われた時に【バックステップ】を使用された経験が活きた。

 上位魔人族の爪を剣で受けるキュア。




「……何が目的か───か」


「…………っ」




 キュアと鍔迫りあう上位魔人族の爪。 長身のキュアより更に背の高い魔人族の爪が、キュアの鼻先へ数mmずつ近づく。




「───殺したんだろう?

()に居た、上位魔人族を?」


「…………」


「真なる鍵は、清らかな乙女の魂を生贄にせねば生まれん。

清らかな魂とは、神に近しい(・・・・・)魂の事。

上位魔人族以外にそんな魂は存在せん」


「あのなー、チェンは───むぐっ」


「(羽根娘。

何のために先程、主様が上位魔人族の証である【魔人炎】と語らせなかったと思っているのですか)」


「(んー? 言わないのかー?

アイツ、怒ってるぞー?)」


「(主様が、そう望むなら)」


「(……分かったー)」




 真なる鍵を使われた(・・・・)気配、と言った上位魔人族。


 つまり、上位魔人族たちは。

 いや。

 【ドラゴンハーツ】は。

 【魔神神殿】にて【真・魔神城の鍵】を使った事で、イベントがチェン生贄ルートに入っていると判断したキュア。


 ならば彼等にチェンが死んでいると思わせれば───チェンと【真・魔神城の鍵】が同時に存在するという【ドラゴンハーツ】の矛盾が、破綻しないのでは?

 というのがキュアの考えである。

 

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