28 村人、危険な一人言を言う。
「マップボードの真ん中に細長い……矢印?」
初めて見る地図の見方がよく分からず、色んな角度からマップボードを見ようとして……真ん中に印された矢印が動く。 キュアが向きを変えたら、矢印の向きも変わったのだ。
「……まさか、この矢印は───俺か?」
試しにキュアがその場で一回転。
矢印も一回転する。 キュアが前後左右に動くと、矢印も前後左右に動く。
「な、なるほど。
…………む」
キュアの、回転したり前後左右の動きを不審に思ったか……子供が 「じぃーっ」 と眺めていた。
まるで変な人を見つめる目で。
慌ててキュアは誤魔化すため、マップボードに適当に触れると……地図の移す範囲が変わり、別の場所も見れた。
更に動かすと───
「『道具屋ガルヒン』!
さっき聞いた場所か」
マップボードに幾つかの文字。
その中に、聞き覚えのある名前があった。 現在のキュアの向きから考えるに……右手の道を進めば辿り着くハズ。
「この茶色い線は……道か?
取敢ず、せっかく分かった機能なんだし行ってみるか。
……何なんだ? 道具屋って??」
基本、料理道具なら『包丁屋』『鍋屋』など。
大工道具なら『金槌屋』『木槌屋』『鋸屋』などといった専門職人が作って、職人 (若しくは、その家族) が売るような専門店しか知らないキュアは、問屋のような概念が分からない。
『道具屋』などと言う曖昧な店に不気味さを感じつつ、「騙される謂われも在るまい」 と、『道具屋ガンヒル』 を目指す。
「この青い線は、あっちの川と湖か。 ……って事はこの灰色は家で───うわっ、この地図だけでこの村の弱点丸分かりじゃないか!?
そりゃ現実では、地図が違法になる訳だ」
かなり物騒な一人言をいうキュア。
……無論、回りに人が居ないと分かって言ってはいるが。