26 村人、回復に悩む。
キュアが盗賊の財宝を暫く集めた所で、≪荷物がいっぱいです。 要らない荷物を売るか棄てるかして下さい≫ と書かれたボードが出現した。
確かに、腰と背中のバッグが両方一杯である。
ちなみに【ドラゴンハーツ】でプレイヤーが入手出来る物に触れた時、それは 『キューブ』 と呼ばれる立方体となる。
小さな品物なら小さなキューブ。
大きな品物なら大きなキューブ。
しかもバッグには自動的に整理整頓される機能がある。
見た目より遥かに大量の荷物が運べる訳だが……それでももう入らない。
「売る……にしても、あの村に質屋なんて無いだろうしなあ」
物を売ると言ったら質屋。
質屋と言ったら都会。
そんなイメージのあるキュアは、【ドラゴンハーツ】において始めての人里である小さな村に、質屋が存在するとは思えなかった。 ので、要らない物を捨てる事にしたキュアが手にしたのは【回復薬】。
「仕方無い……。
コレ、気持ち悪いんだよな。
回復って、『何を』 回復するんだよ……?」
アクション・ロールプレイング問わず、敵と戦うゲームで有りがちな体力やHPを回復する薬である。
【ドラゴンハーツ】もHP制。
しかしHPなど存在しない現実しか知らないキュアは、『回復』 という言葉に気色悪さを感じてしまい一度も試してはいない。
「コレ、やたら手に入るしな」
然して惜しくもない……と、回復薬を大量に捨て、空いたスペースへ盗賊の財宝をバッグに摘めるキュア。
ココにも幾つか在った回復薬は無視する。
「じゃあ、村に戻るか」
◆◆◆
「キュアさんっ!?
無事だったんですねっ!」
キュアに盗賊退治を依頼した女性の下へ。
「ええ。
コレが、盗賊から得た財宝なのですが───」
「道具屋ならガンヒルさんの所ですよ」
「ど……ドウグヤ?
何で、今の会話の流れで───」
『リマぁーーっ!』
女性の話に違和感を感じていると、突然村に響きわたる男性の声。 キュアが何事かと声のした方角を見ると、二十歳ほどの男性が駆け寄ってきた。