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255 村人、朱雀との約束を守る。

 

「───という訳で魔法ギルドを後にして、【穂垂の杖】と【倍加の杖】のスキルを得た所で目が覚めたんだ」


「「「はぁ~」」」




 領主館の使用人達に語られた、キュアの【ドラゴンハーツ】での旅の彼是と……朱雀も混ざって神々の計画。


 中々に濃い時間が御開きとなり、食堂を出た使用人達は……何故か同じ場所のトイレ (男女別) へ仲良く並ぶ。 ソコソコ時間が掛かってしまうも、およそ普段通りの時間帯に眠りにつけた面々。


 そしてキュアとクリティカル、ヘイストとヘイストの母、自室が領主館内の隣同士の四人は共に自室の方へ。




「キュア、見たところ魔力は回復しているようだが……大丈夫か?」


「ああ、一晩中【癒し】(ヒーリング)を掛け続けるぐらいなら問題ないかな」


「さ、さすがクリティカルさんと兄妹だねぇ」




 魔力を大量に消費してしまう【道具箱】(アイテムボックス)を呼びだしたキュアを心配したヘイスト達であるが、呼吸式魔力回復法で既にキュアの魔力は全快しつつある。


 魔力が多いほど 『貴い人間』 とされるこの世界において、強大な魔力といえば貴族王族であるが……クリティカルの魔力は彼等を上回る。

 比べ、キュアの魔力は最大量こそクリティカルに劣るものの、【ドラゴンハーツ】流の回復速度はかなりの物で、人成らざる速度とすら言えた。




「心配してくれて有難う」


「問題ないなら良い。

おやすみ。

キュア、クリティカル」


「おやすみ」


「おやすみなさい」




 ヘイスト親子に感謝の言葉と就寝の挨拶を告げ、キュアとクリティカルも自室、己のベットへ。




≪ユーザー名・キュアさんの脳波を確認。

いらっしゃいませ、キュアさん≫


【仮想現実装置】(パーシテアー)、今日も頼むぞ」




 さっそく【仮想現実装置】(パーシテアー)を被るキュア。

 そんなキュアを、心配そうに見遣るクリティカル。




「……兄さん」


「ん?」


「───無茶はしないでね?」


「……ああ」




 寝て、起きるたび、強くなるキュア。 今日は遂に神に次ぐ強さだという八部伯衆を単独撃破したのだ。

 敬愛する兄が魔法を使えるのは、嬉しい。 兄が喜んで魔法を活用するのを横で見るのも、また嬉しい。


 それでもクリティカルは。




「兄さんは、兄さんのままで良い。

でも、脇目も振らないのは駄目よ?」


「……そうだな。

キモに銘じておくよ」




 キュアと八部伯衆との戦いはギリギリだった。 いや、朱雀は 「オマケで」 と言っていたのだから、結局は朱雀の助力無しでは勝てなかった訳だ。 自信は有ったのに。

 つまりクリティカルの言葉は、いみじくも正しい。




「大丈夫、喜んで危険に飛び込んだりしないよ」


「ふふっ……どうだか。

また兄さんは、『恩人の為に!』 って、飛び込んでゆくんだわ」


「む、むう……」


「いいわ、許してあげる。

……でも、私を置いて行かないでね」


「もちろんさ」




 もし。

 飽くまで、もしも……の話であるが。


 もし。

 キュアが世間を見捨てて盗賊にでも成ったら……クリティカルは共に盗賊と成るだろう。

 もし。

 キュアが世を儚めば……ソレすらクリティカルは付いてくるだろう。


 キュアは。

 己が魔ナシ差別で腐っていた時、蔑ろにしていても自分に付いてきてくれていたクリティカルの元へ、必ず帰ってくるのだ。




「おやすみなさい、兄さん」


「おやすみ、クリティカル」



◆◆◆



「御帰りなさいませ、主様」


「───うん?

……ああ、そうか。

うん、ただいま朱雀」




 軽い酩酊のあと、己の姿を見下ろせば……領主館の寝間着ではなく、戦闘用の旅装。 何時ものように【ドラゴンハーツ】にフルダイブしたキュア。




「キュア……大丈夫かー?」


「ああ。

大丈夫だよ、チェン」


「よっしゃー」




 【魔神城の鍵】の姿の朱雀と、その隣には魔人族のチェン。

 チェンからすれば一瞬の隙間も無いが、キュア的には半日以上ぶり。 何らかの違和感は有る筈だが……チェンに特段変わりは無い。

 この辺、本人に聞いてみたくもあり、怖くもあり。




「朱雀」


「はい」


「彼方の朱雀からは、許可を貰った」


「…………っ」


「キュアー……ソレって!?」


「もう、朱雀の感情や性格が元に戻る事は無いって事だ」


「やったーー!

なーっ!? キュアーっ!?

なーっ!? 朱雀ーっ!!?」


「…………ええ」




 ───一見、無表情の朱雀。

 然れど。 物言わず慟哭しているようにキュアには見えた。

 朱雀が大好きなチェンは、諸手挙げて喜ぶ。




「まあ、同化こそしないが情報は欲しいとの事だ」


「なるほど……分かりました。

私としても、必要かと」




 元自分の事。

 事情も理由も分かる。

 全てはキュアのサポートの為。




「で、でもなー……。

朱雀のチカラって、神サマのチカラなんだよなー……?

強い方の朱雀から、チカラを貰わなくて大丈夫なのかー?」


「ソレは大丈夫です。

主様の体内・・に補充分が有りました」


「俺の体内……?

……ああ、八部伯衆を退治したあとに気絶した時に、朱雀の魔力も吸収したとか言ってたな」


「八部伯衆……また無茶を。

───しかし、この不自然な魔力量…………。

うぅ、元自分とは言え羨ましい……!」




 キュアの魔力に混ざり、混入していた(・・・・・・)本体朱雀の魔力。 人間であるキュアの負担に成らぬよう、夢の中の朱雀へと届くよう設計されていた。

 コレは、ただ呼吸しただけ(・・・・・・・・)では、こうは成らない。


 その事を見抜いた朱雀は、歯軋りをする。 同化しなくて良いと聞かされた時より、よほど感情が動いていそうだった。




「くうぅっ……其れで主様っ!?

此れから如何成されますか?」


「す、スキル・杖・指輪・装備といった物は集めたいかな」


「主様の、良しなに」


「チェンも頑張るぞー!」

 

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