表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
247/420

247 村人、賭けに勝つ。

 

「───はっ!?」


「御目覚めですか、主様」


「あ? あ、ああ……」




 八部伯衆を倒し、飛行する火の鳥形態の朱雀の背で目覚めたキュア。 多少寝惚けてはいるが体調には何の問題も無いようである。




「俺は…………寝ていた、のか??」


「主様は芋の八部伯衆を倒したと同時に、魔力欠乏症により気絶なされました」


「魔力欠乏症?」




 告げられ、徐々に記憶が蘇ってくるキュア。 仲間や武装など、条件は違うので一概には言えないが【ドラゴンハーツ】の三鬼より八部伯衆一匹の方が強かった。

 余力を残して勝てるような相手ではなく、全ての魔力を使いきるつもりで戦い───気絶したのだ。




「……魔ナシの俺には縁の無かった症状だからなあ」


「特に主様は、目眩や悪心など……主様の妹のような事前の初期症状がかなり薄いようですね。

御注意なさいませ」


「分かったよ。

戦場でブッ倒れるなんて、殺されても文句は言えんからな」




 【アジルー村】の人間がキュア達の生家に放火宣言をした時。

 精霊と莫大な魔力を遣り取りしたキュアは、朱雀を喚びだして気絶した。 あの時はまだ、魔ナシの己が魔法を使えるとなど考えもしなかったが───今は違う。

 キュアの失態と言われれば、間違い無くそうだろう。


 暫し反省していると。

 何かを思いだし、急にビクンッと飛び上がるキュア。

 キュアのビクンッにビクンッと成る朱雀。




「ど、如何か為されましたか?」


「───お、俺が気絶してから何日経ったんだ!?

領主様は……レイグラン様は、御帰りに為られているのか!?」


「主様が気絶した瞬間から、まだ一時間と経っておりませんが?」




 キュアが気絶すると、朱雀は火燐状態となりミイラの如く己の体内に包みこんだ。 後は領主館執事コリアンダーとの約束通り、二年程で友好領地の土地が癒えるように細工をして、一気に芋の八部伯衆が住んでいた洞窟を脱出したのだ。




「そ、そんなに早く回復したのか。

(ドラゴンハーツ流)の魔力は、呼吸で得られるとは言え……」


「私の魔力も吸収なされていましたから」


「そうなのか? 悪かったな」


「いいえ」




 どんな風(・・・・)キュアのクチから(・・・・・・・・)朱雀の魔力が吸収されたのか……ソレを知るのは朱雀だけ。

 正に、神のみぞ知るという奴である。




「……俺は、合格か?」


「オマケ付きでなんとか、といった所でしょうか」


「そうか……済まない、有難う」




 主従関係とは言え、人間と神。

 朱雀の望まぬ事を望外に叶えさせた賭けに、キュアが頭を下げる。




「私を───いえ、彼方の朱雀(・・・・・)を取り込むのと、記憶を読むだけなのとでは全く違いますから……惜しくはありますが、賭けは賭けです」


「向こうの朱雀だけではなく、朱雀自身も何か違うのか?」


彼女を(・・・)取り込めば、私自身が主様との【ドラゴンハーツ】の旅を体験した事と成ります」


「ふむ?」


「……記憶を読むだけでは、別人の体験談を聞くだけのような感じでしょうか」


「以前の、勇者や魔王に仕えたという 『別の朱雀』 みたいな物か。

記憶より記録みたいな」




 嘗ての精霊王達に仕えたのも朱雀だが、与えられた記録を共有しているに過ぎない。




「クリティカルやヘイストが、【仮想現実装置】(パーシテアー)の体験談を楽しげに話すのを聞くだけ、とか考えると…………嫉妬は有るかなあ」


「ですから、主様には私に面白楽しい冒険譚を用意する義務が有ります」


「え、鋭意努力するよ」




 キュアにとって、恩有る現実の朱雀も仲間であるVR内の朱雀も大事なのだ。

 どちらの朱雀も望むような冒険をするため、キュア達はコタリア領の領主館へと帰ってゆく。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ