24 村人、防御力上昇スキルに理不尽を感じる。
盗賊のアジトは、複雑な地形とはいえ飽くまで基本は一本道である。 迷いようが無いし……何より、敵と一対一で戦うことが出来た。
「盗賊達は不意打ち出来ない、俺は不意打ちし放題。
要塞としては致命的だよな……兵の練度も低いし───っと!?」
言った側から、キュアは不意打ちを食らってしまう。 大したダメージでは無いが、地形の向こう側から山なりに矢が飛んできたのだ。
「壁越しなのに、えらく正確に俺目掛けて……あ、そうか。
盗賊のボスの魔法だな!」
壁越しであろうと敵を認識出来る魔法の使い手だと言う、盗賊のボス。
中々に脅威だ。
……こんな御粗末な要塞で無ければ。
【仮想現実装置】による痛覚遮断も有り、怯むことなく奥へと駆けるキュア。
この辺は幅広い岩場であり、地面にしかトラップを仕掛けられず、地面のトラップにしても長年の経験で踏んでしまいたくなる場所は凡そ解る。
蛇のように波打つ一本道の先……拓けた場所で多数の敵に囲まれて───といった事も無く。
最期の、一本道のドン詰まり。
ソコに居たのは……杖を持ったおそらくはボスと、弓矢を装備した4匹のラットマン。
向こうはドン詰まりに5匹も集まって居るので、ほぼ左右には動けない。
戦略も何もなく、ただボスだから奥に居た……といった感じなのだろう。
キュアは壁を使って、敵の【弾丸】や弓矢を避けつつ、己の【弾丸】を正確無比に打ちこむ。
……が、あまり効果が無い。
「……丈夫だな。 良い服を着ているのか?」
VRアクティビティだからか。
キュアは、ボロい服にしては不自然なくらい着衣による防御力を感じていた。 この世界の防御スキルとやらは余程効果が高いらしい。
今までのラットマンなら【弾丸】一発で倒せていたのに、このラットマンは4・5発食らって尚生きている。
「だが、当たれば怯んでいる。
無敵という訳では在るまい」
更に数発当てる事で、弓矢を装備した部下ラットマンの一匹を撃破。 一匹減った分、回避の手間を攻撃にまわしたキュアは次々と部下を撃破。
遂にボスの一匹だけとなる。