238 村人、ソウルイーターを手に入れる。
「ええぇーーーっ!?
ダンジョンから【ゴーレム】が消えちゃったんですかー!??」
【ロシマ】の街の、魔法ギルド。
『ダンジョンのボスを倒せ』 という依頼を受けたキュア達は、ボス───【王ゴーレム】を倒したが……何やら、歓迎モードでは無い。
「王ゴーレムを倒したら、全てのゴーレムが霧のように消えたんだが……ソレが依頼だろう?」
「そ、それはそーですけど……まさかアレを倒せちゃうなんて……。
あのダンジョン、良いドロップ品を出すんですよねー」
「ドロップ品……【壊れたゴーレム核】、コレか」
「うっわ……!
な、何なんですか、この数…………」
どうやら、ダンジョンは魔物が湧き続ける危険な場所であり───無限の富をもたらす場所であったようだ。
ダンジョンを消したい……という 『体』 で実力者を送り、ドロップ品を集めていたらしい。
───と。
「まあ、せめて最後のひと儲けには成ったんで───」
「銭ゲバ娘」
「ふ、ふぇにへはッ!?」
ゴーレム核を数える魔法ギルド受付嬢の鼻を摘まむ朱雀。 火燐が周囲を舞う。
慌てて止める、キュアとチェン。
「主様が、わざに依頼を熟し完遂してきたのです!
感涙に噎び、言祝ぎ、体を差し出すぐらいしなさい!
まあ主様は!? そんな貧相な体を欲しはしませんがねっっ!?」
「ふぁあっ!?」
目が据わっている朱雀。
片足をカウンターに上げて、受付嬢を威嚇する。 対し受付嬢は朱雀を睨み返すが……その勢いは弱い。
朱雀が恐い───というのも無論あるが、ギルドのダンジョン対応もマズかった。 なので、他のギルド職員も見て見ぬフリをしていたのだ。
「せめて、誠意を見せなさいぃ!」
「す、朱雀! 分かっている!
俺は朱雀やチェンが認めてくれるなら、ソレで充分だから!」
「そ、そうだぞー!
朱雀が居てくれるだけで百人力だからなー!?」
クレーマー。 違う。 正当要求だ。
朱雀が騒いでいると、ギルド事務所奥から小太りのオッサンが出てきた。 装備からして、受付達の上司っぽい。
「お、御嬢様がた、どうぞ此方を差上げますので……どうか御容赦を」
「はあ……」
と、オッサンが告げた所でイベントクリアの声。
☆【ゴーレムビルダー・あの城を浄化せよ】
『金10000』
☆王ゴーレムを倒す
『SP3』
☆ゴーレムを全て倒す
『SP2』
☆末妹の魂を癒す
『ソウルイーター』
☆魔法ギルドを恫喝する
『杖の製作キット』
「恫喝ってなー…………」
「せ、正当な権利要求です!」
「末妹の魂を癒す、か」
朱雀の恫喝はともかく。
地下室にあった白骨死体。 植物に食われるように、あるいは食うように、絡まっていたソレを……キュアは庭園の適当なスペースへと埋めた。
王の剣はキューブ化しなかったので、墓標代わりに墓へと突き刺して帰ってきたのだ。
『☆』 に、多少は安堵し……リザルトである【ソウルイーター】を取りだし装備してみる。
「コレは…………あの王ゴーレムの剣か」
「どんなモノなんだー?」
「【鑑定】で見てみよう。
【ソウルイーター
魂を別け与える能力を持って生まれた少女の魂を食った……食ってしまった剣。 慈愛に満ちた少女の魂を受けついで、剣なのに人を傷付けられなくなった】
───とある」
「んー?
どういう意味だろー??」
「……何処にでも、しょうもない人間は居るって事かなあ?」
「……ふーん?」
謁見室に入った時、親衛隊ゴーレムは寄って集って何も無い場所をつ突いていた。
王公たちは、ソレを見て笑っていた。
慈愛に満ちた少女に、何をしたのだろう。
「───主様」
「……っと、朱雀?」
「終わった事ですよ」
「……そうか、そうだな」
魂を別け与える少女。
白骨から生まれたゴーレム核。
討伐依頼され、討伐されたゴーレム達。
ゴーレム核の動力源は何だろう。
討伐された動力源は何処へ行くのだろう。
いずれ、再ポップするゴーレム達。
討伐依頼をされ続け、討伐され続けたゴーレム達。
───もはや、キュア達には関係の無いことである。
「ココにはもう、用はない」
「ええ」
朱雀が 『リザルト』 と 『リザルトを気にするキュア』 に意識を向けている間に、魔法ギルドを後にするキュア達。
「あ、【杖の製作キット】とやらについて魔法ギルドに聞きたかったんだんだがな」
「今は無理っぽいかなー」
魔法ギルドを後ろに見遣ると、受付嬢が中指を○ているのが微かに見えた。
「まあ仕方無い。
【仮想現実装置】から───は、まだ連絡が無いな。
コスナーさんの所へ行って、魔法名を買うか」