234 村人、中級者になる。
「ココが魔法ギルドか」
「ギルドって何だー?」
「うーん、同じ職業の人間が集まる場所……ってのは何となく分かるんたが」
「そうですね。
同業者が集まり、同業の発達発展を目的とした同業者組合の事をギルドと呼びます」
「魔法ギルドなら、魔法使いの地位向上や魔法使いに便利な商売の仕組みを作ろうって組織か」
「はい。
ですので、ギルド同士で縄張り争いに成ったりしますね」
「世知辛いなー」
キュア達がやってきたのは、【ロシマ】の魔法ギルドが有る建物。
狙っているのか、魔法儀式にでも必要なのか……やたら奇抜な配色だったり正体不明の飾付けだったり。 早い話が、気持ち悪い。
しかし警戒心が湧こうと、寄らない選択肢など無く中へ。
四階建ての建物の中は、外に比べて更にオドロオドロしい。 薄暗く、微かに薬臭く、偶に人とは思えぬ悲鳴が聞こえた。
「地球でいうなら、『魔女の大釜』 といった雰囲気ですね」
「そ、そうなのか……地球って怖いな」
地球への風評被害が広まる中、キュア達は受付らしき場所へ行く。 何故なら自分達と同じ旅人風の人間が列を作り集まっており、その中心に 『?マーク』 が浮かんでいたからだ。
受付では、キューブと金が交換されていた。
「売買かな?」
「魔法ギルドが【錬金】に必要な素材を旅人に依頼し、旅人はそのリザルトを受け取っているようですね」
「なら次の依頼も、素材集めかなー?」
「かな?」
行列に並び、暫し待ち、キュア達の番。 だが受付の魔法使い用装備をした女性は、キュアを一別してタメ息を漏らす。
「あなた……まだ魔法使い初心者でしょ?」
「ま、まあこの歳まで魔法を使った事が無い魔ナシですが」
「なら3番受付へどーぞ。
中級者試験を受けられるから、合格した後にまた来てちょーだい」
「分かりました。 有難うございます」
朱雀は、キュアを嘗めきった受付の態度に憤慨していたが……キュアの人生からすれば、見放されていないだけかなり好意的な対処であったので不満はない。
で、3番受付は一瞬で見つかった。
少し離れた場所で新たな 『?マーク』 が浮かんだからだ。 そちらへ行くと、先程と同じ装備の男性が対応していた。
「コチラで中級者試験というのを受けられると聞いたんですが」
「ええ。
10本以上の魔法の杖所持が条件で───大丈夫なようですね」
ちなみに、キュアが手に持つ杖は1本だけ。 残りは全てキューブ化して【 道具箱 】の中なのだが、受付の男性は一発で見抜いたようだ。
所持品フラグという奴を何となく理解しているキュアであるが、やはり得体が知れなくて怖い。
で、いきなりイベントクリアの声。
☆【魔法ギルド中級試験】合格
『中級者の杖』
『SP1』
「おぉ……依頼だったのか」
「リザルトは、いかにも 『繋ぎ』 という感じですね」
「俺が初めて手にいれた魔法の杖……【火球】の【初心者の杖】の次の杖なのか?」
「魔法名は【火柱】です」
「おお、どうも」
魔法ギルドは本来、攻略wikiを見ている魔法使いプレイヤーからすればもっとゲーム初期に来る場所であり、今更なのではあるが……そんな事は露ほども知らず、杖と魔法名をタダで手に入れてウキウキなキュア。
そして再び、最初に並んだ受付に浮かぶ『?マーク』。「たらい回しでしょう!?」 と怒る朱雀を宥めつつ、最初の受付へ。
「はーい、初めての中級者さんはこの依頼しか受けられませーん」
「コレは?」
「近くに炎弱点の敵が大量に出現するダンジョンが有るんで、そこのボスを倒して下さーい」
「ダンジョン?」
「最後まで守られるべき貴人の部屋、もしくは地下牢、といった意味ですね」
「違いまーす。
魔物が自然に湧く巨大迷宮の事でーす」
「…………」
朱雀の周囲に、火燐が舞いとぶ。
自分への嫉妬の時は気付かなかったクセに、朱雀を宥めようとするキュア。
「主様、証拠は残しませんから……ぜひ」
「ぜひ……何っ!?」
プレイヤースキルを得体し、プレイヤーしか認識出来ない【ドラゴンハーツ】の声を聞けれど、VR法適用外の朱雀。
「だ、ダンジョンのボスとやらを倒したら良いんだなっ!?
さあ、あまり時間も無いからサッサと行こう!」
「おっ、おおー!
チェン、ガンバるぞー!
朱雀もガンバるよなー?
……なーっ!?」
「…………。
はあ、仕方有りませんね。
主様の、良しなに」
目が据わるほどの怒りであったが……キュアとチェンの訴えに、落ち着く朱雀。
キュアへの忠誠心も大事だが、キュアを精霊王に育てる事も大事な朱雀にとって、ココでこのNPCを消───如何にかするのは都合が悪いかもしれないからだ。
◆◆◆
「マップボードだとこの辺だが……」
「主様、彼方の巨石が積み上がった場所……其処に扉が在ります」
「まわりに魔物とかは居ないなー?」
平原のただ中、ポツンと転がる幾つかの巨石。
キュアも半信半疑だが、今は高い山の山頂でも大昔は海の底だったという説を本で見たが、ソレか……もしくは山が火を噴くと、時に家よりもデカイ岩が宙を舞うという説か。
どちらにせよ、【アジルー村】や【コタリア領】ではあまり見ない光景だ。
「こんな平原の地下に、ダンジョ───魔物の住処が有るのか。
話を聞くに、唯の地下空洞などとは違うらしいが……」
「強い敵、居るかなー?」
「居たとしても、火炎に弱い魔物ばかりらしいからな。
チェンと朱雀には頼りにしたい」
「任せろー!」
「主様の、良しなに」