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231 村人、仕掛けにビックリする。

 

「彼処が最後だな」




 怪しげな孤児院の地下へと侵入したキュア達。 地下には子供が牢屋に囚われており、強制労働をさせられていた。

 【アジルー村】での嘗ての己を思いだしてしまい、業腹のキュアではあるが……チェンと朱雀に助けられ、孤児院の職員だという黒尽めの人間共を生け捕り・捕縛しつつ進んでゆく。


 そして全ての通路と部屋を確認し終え、最後の部屋……拠点らしきテントが有る広場へとやってきた。




「中には、黒尽めから着替えた 『如何にも盗賊』 然といった連中が三人。

商人風のが一人居ますね。

装備も、ありふれた物です」


「【光を食らいし蜘蛛】の巣穴の例が有る。

慌てず、確実に行こう」


「了解ですわ」




 ゲーム製作者として、前準備されたく無い敵や場所を 『プログラム的に』 隠しているケースがある。 以前、朱雀はコレに引っ掛かってしまいショックを受けていた。

 神の知覚能力でも気付けぬ敵やトラップが突然現れようと、前回のような無様は晒さないと誓う朱雀。




【土球】(グラウンドボール)をテントに撃ちこむと同時に三方から突っ込んでくれるか?」


「分かったぞー」


「主様の、良しなに」


「よし……【土球】(グラウンドボール)!!」




 放たれるキュアの土魔法。

 【ドラゴンハーツ】では、罪人であろうと人間 (光燐種) を殺してはいけないらしい。 キュアにはその線引きが今一つ理解できないが、類焼といった二次ダメージを起こしにくい魔法でテントを襲撃。

 パニックを起こす敵を、三人は一瞬で制圧する。


 盗賊然とした男達は、自分達が組み伏せられていると気付いてから悔しがり……商人の男は。




「覚悟しろ、警備兵に突きだしてやる!」


「はいはい、参りましたよ……くふふ」




 やたら余裕のある、ネットリとした喋りで大人しく捕縛されてゆく。


 キュア達は異様に思うも、VR法とやらで 『殺し』 は勿論 『装備の剥ぎ取り』 も出来ない。 胸糞悪い連中が居ようと、【ドラゴンハーツ】は大好きなゲームなのだ。 その中で法律が有るというのなら、そのルールを守らねば。

 先程、チェンと朱雀に情けない姿を晒してしまったキュアはVR法に従い行動する。




「出口まで歩け、妙な真似はするな」


「くふふ……しませんよぅ?」




 商人は酷く肥えており、武を遣る者の体型ではない。 剣は無論、魔法とてキュア達ならば不意打ちを防げる。

 ───にも関わらず、余裕な態度を崩さない商人。




「(主様)」


「(【蜘蛛】のような、何か(イベント)が起こる前触れだと思う)」


「(強い敵かなー?

チェン、今度はキュアと一緒に戦うぞー!)」




 ヒソヒソ話すキュア達の前を歩く、縛られた商人。 孤児院へと繋がる階段へと着いた時。




「くふふふふっ、何も知らずに馬鹿ですねぇっ!」




 突如、予備動作ナシで発光する商人。 階段の周囲にいた商人以外の全て……キュア達や連行中の盗賊達も吹き飛ばされる。




「あー、うん。 そうだな」


「や、ヤられたなー?

痛いぞー……」


「あ~れ~、主様~!

朱雀は、朱雀は主様を~~!」




 吹き飛ばされると思っていなかったとは言え…………何かある事自体は予想通りだったので、キュアは空中で姿勢制御をして着地。 女性陣も、空を飛びつつ商人を見遣る。

 何故かド大根っプリを発揮していたが。


 逆にキュア達と共に吹き飛ばされた盗賊達は完全に予想外だったらしく……着地に失敗、ボロボロに転がってゆく。

 数人は岩に頭をぶつけるなどして致死。

 数人は手足があらぬ方向に曲がり。

 数人は商人に怒号を飛ばす。




「テメェ、裏切りやがったなっ!?」


「裏切るもナニもぉ───

下賤な盗賊如き、始めから味方では在りませんよぉ。 才能有る子供たちを集めて貰っていただけですからぁ」


「才能有る子供?」


「ええ。

街中に魔物が入れないのは何故か?

ソレは街の外壁を指輪に見立てた、超巨大な防壁───いえ、『結界魔法』 が在るからなのですよ」


「その太古の魔法を、個人携帯用ゆびわに出来ないか……コイツの命令で【錬金】を使えるガキ共を集めていたんだ!」




 何故か急に、自らの悪事を暴露し始めた悪党ども。 キュアにはよく分からねど、自白してくれるなら有難い。




「この指輪が完成の暁には、ワタクシがこの国を乗っ取り───いえ、世界征服すら……!」


「だがその【結界の指輪】は、まだ欠陥品だぜ!」


「一時間も持たず、壊れるんだ!

残念だったな!」


「くふふ……お馬鹿さん達ですねぇ。

貴方方の死を見届けた後は、別の街で別のお馬鹿さんを使って、指輪を完成させますよぉ?」




 その間も盗賊達が必死に攻撃するも……円形に展開される光の球体が商人の周囲4mを囲み、傷一つ着かない。

 鼻唄まじりに、商人が階段脇の壁を弄るとスイッチが出現。




「(あんな装置、探査した時は在りませんでしたのに……)」


「(蜘蛛の巣穴と同じだな)」


「そのスイッチはっ!?」




 イベントが始まって、初めて出現するようプログラムされていたスイッチを───商人風の男が操作する。




「主様!

鍾乳洞の奥、壁が破壊されて大量の水が流入してきています!」


「どんな作りだよっ!?」




 ココから、水の流入場所まで800m。

 魔道具もビックリの、超オーパーツな仕掛けである。 ゲームとは言えヤリ過ぎだろうと呆れるキュア。




「おや、この一瞬でよく気付きましたねぇ。

そうです。 査察などが入った時に証拠ごと洗い流せるんですよぉ」


「キサマはどうする?」


「貴方方が溺れるのを見物し、階段から脱出するまでは指輪は持ちますので……どうか御心配為さらないで下さいねぇ」


「するか……」




 地下鍾乳洞、唯一の出入口に立ち塞がる 『結界』 。

 どうやら、水圧で壊れるようなヤワさでは無いようだ。

 

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