22 村人、初サブイベントを受ける。
「盗賊のボスは、ラットマンの魔法使いで 『魔法使いっ!?』 ……す」
盗賊のせいで恋人が待ち合わせ場所に来れず、弱っていた───頭上に 『?マーク』 が浮かぶ女性村人。
キュアの剣幕に若干引いている。
「え、ええ。
盗賊のボスは、壁越しであろうと敵の姿が認識出来るようになる魔法の杖を持っているそうです」
「成程……手強そうだ。
でも羨ましい杖だな」
「盗賊の持ち物は、全て討伐した者の物ですよ」
「はあっ!?」
日本で例えるなら、自転車泥棒を見つけたらその自転車は発見者の物になる……といった感じだろうか。 討伐隊と協力して盗賊・魔物退治の経験が有るキュアは、ココで初めて違和感に気づく。
キュアの世界で盗賊からその財宝を接収した時は、事前被害申請をした者達に返還される。 被害者やその家族など受取人が死亡・行方不明でもない限り、財宝が討伐した者に入る事など有り得無い。
「す……全て!?
財産の元の持ち主は文句を言わないんですか?」
「個人による奪還依頼などでは、返すケースも有りますが……お金など、貨幣一枚一枚の証明なんて出来ないでしょう?」
被害者感情より、報酬額を高めにしておいて誰かが盗賊をサッサと退治してくれる方が余程マシ……という訳だ。
金を惜しんで、命を失う訳にはいかない。
ソレは分かるが、自分達の世界とかなり違う。 やはり討伐隊の職業体験では……自分達の世界の話では無いのでは───と思い始めるキュア。
「まあ、【仮想現実装置】の中の……【ドラゴンハーツ】の世界という事なんだろうさ」
ソレを理解した所で、元々夢の中でだけでも魔法を使いたくて【ドラゴンハーツ】を始めたキュアは、「そんな物か」 と納得する。
◆◆◆
「アレが盗賊の根城か」
依頼女性の案内通り進み、アジトを見つけたキュア。 天然の地形を利用した要塞……の、つもりらしい。
上り坂で、確かにコチラに不利な地形では有るが……ソレは盗賊側が訓練された軍隊に匹敵する戦力相手の話。 実際の砦に突撃させられた事も有るキュアにとって、攻め辛いが向こうからの死角も多い地形。
隠れつつ進めば、ナワバリ争いに負けて田舎に逃げてきたのであろう盗賊などキュアの敵では無い。
「【弾丸】×2っ!」
容易く、見張り台のラットマンの盗賊2名を死角から撃破。
夢だと思えば、殺しも精神の負担では無い。 【後退即歩】の無音高速移動も交え、素早く見張り達の死体の元へ。