表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
214/420

214 村人、間に合わなかった。

 

「あれ? 朱雀、胸元が光ってるわよ?」


「あら、何でしょうか??」




 キュアが【光を食らいし蜘蛛】を退治した頃。 朱雀、ダイ、チェンの女性陣も【デビルスパイダー】や【アローデビルスパイダー】を全滅させていた。

 蜘蛛を全滅させたと同時に、光る朱雀の胸元。




「此れは……主様への愛ですね。

……ふにゃっ♡」


「ば、馬鹿言ってんじゃ無いわよ!

光ってんの、キューブでしょ!?」


「嫉妬は見苦しいですよ、ムキムキ。

如何やら【オリハルコン】が光っているようですね」




 万が一、【光を食らいし蜘蛛】が女性陣の方に来た時の囮用【オリハルコン】である。 【オリハルコン】を反対側にでも投げつけて、【蜘蛛】がソチラを捕食している間に逃げる算段であった。




「ま、まだ蜘蛛が居るとかかー!?」


「いえ、完全に全滅させました。

───今まで居た分は」




 プログラム上、存在しなかった【蜘蛛】には気付けなかった朱雀が……やや自嘲気味に補足する。




「ともかく、主様抜きで判断して良い案件では在りません。

急ぎ合流を」


「そうね、指輪の部屋への炎を消して───」



『よくぞ、我を食らい辱しめたる蜘蛛を退治してくれました』



「「「え?」」」




 突如、蜘蛛の巣穴の最奥に響く声。

 部屋全体から響くように聞こえてくる。

 高音の、男の声に聞こえた。

 低音の、女の声にも聞こえた。

 不思議な響きの声である。




「この感じ……まさか!?」


「神気……っぽいなー?」



『あの蜘蛛には、我の再誕直後を狙われました……しかし───』



「あの、そういう話は主様が居られる時にして下さいな?」


「ちょっ……朱雀っ!

ヤバイって!? この雰囲気、どう考えても……」


「知りませんよ。

コレ、本来は主様の御前で語られるべき内容イベントでしょう?」


「た、たぶんね」



『───という能力により、我は多重人格神と呼ばれ───』



「この人(?)、コッチの話聞かずに喋り続けてるぞー!?」




 本来、巣穴へは【光を食らいし蜘蛛】を退治した後にしか侵入できない。


 具体的には、【光を食らいし蜘蛛】を退治してドロップ品である【光の燐 (半分)】を入手すると、天井の一部が崩れて巣穴から糸が垂れてくる。 ソレを登ってから、初めて巣穴に侵入できるのである。


 ダイが遣ったように、空飛ぶ仲間に運んでもらう方法も他のプレイヤーには不可能だ。 【ドラゴンハーツ】にて仲間になるキャラの中で、空を飛べるキャラはチェンだけ。 チェン一人でプレイヤーを巣穴までは運べないからだ。


 また、イベント中の仲間は基本的にリーダーであるプレイヤーから離れる事に対して強い忌避感を抱くよう設定されている。 ので、チェン一人で巣穴の奥へ行く事もない。


 ならば何故チェンとダイが、キュア(プレイヤー)から別行動を取ったかというと…………またもや、イレギュラーな存在である朱雀のせいだ。

 一時的にとはいえ、朱雀を限定リーダーとして認めたのだ。

 結果、その立案にしたがったのである。

( 渋々であり、キュアから離れる事への忌避感が無かった訳ではない。)


 故に───【蜘蛛】は全滅しているのにキュアがこの場所に居ないという事態は、本来絶対に有り得ない。




『───よって、我は今暫く眠らねば成りません。

この【神殿】と【扉】は───』



「す、朱雀!?

キュアはっ!?」


「私達のステータスボードに異変が無いので、急いではいますが全速力では無いですね」


「キュア、警戒心が強いから戦闘以外でMPを消費する【強化】(ヘイスト)とか使わないからなー」



『───最後に───』



「最後っ!?

……こうなったら自傷して、HPを減らして…………」


「そっ、ソレはキュアが怒るかなー!?」



『───を、そなたに授けましょう』



「えっ!?」


「「あ」」




 何らかの光が、繭の奥からフワリと漂い……………………朱雀へと吸いこまれた。

 ダイとチェンが朱雀を限定リーダーと見なしたように、『謎の声』もこの場に居ないキュアの代わりに朱雀をリーダー(プレイヤー)と見なしてしまったらしい。




「ちょっとぉぉーーー!?

何ヤってんのよおおおーーーっ!??」


「い、いえ……私は…………」


「あーあ……ヤっちゃったなー」




 作戦の立案・実行は朱雀であるが……こう為る事を知らなかった朱雀を攻めるのは酷であろう。




「───みんな、無事か!?」


「「「…………」」」


「……ど、どうした? みんな?」




 まるで『見計らった』かの如きタイミングで、女性陣と合流したキュアと……ドンヨリとした女性陣。

 女性陣の様子に、ポカーンとするキュア。 しばきたい。



◆◆◆



「そ、そうか……そんな事が……」


「も……もも……申し訳あり、ありま…………あ、ああああ主様ああ……!」


「朱雀、おちつけ」


「どうするのよ、キュア!?」


「取敢ず、俺は朱雀を責める気はない。

俺も、二手に別れる作戦は了承したんだ」


「……キュアが、そう言うなら」




 謎の声と光の相談をする一同。

 朱雀は自責し、パニックだ。




「朱雀ー?

キュアの為を想っての結果だって分かってるぞー!」


「チェンの言うとおりだ。

朱雀は悪くない」


「主様…………」


「あ、アタシだって朱雀を攻めたくは無いけど……。

もし、さっきの光が無いとキュアが困るんじゃない!?」




 ダイとて朱雀の提案を了承したし、想いは分かる。

 それでも、それにしても。

 キュアの事を考えれば、落ち着いてはいられない。 言うなれば、現状は【ドラゴンハーツ】の『バグ』のような状態である。 登場人物としての本能なのかもしれない。




「朱雀。

朱雀は故郷げんじつだと、相手の能力が分かるらしいが……自分に吸いこまれたという光の正体は分かるか?」


「……………………駄目です。

何らかの『スキル』だとは分かりますが、今の私では───」


「そう……か」


「ですが、故郷げんじつに帰って本体に取り込まれれば……!」


「ソレって……朱雀……!」


「えーっ!?

また朱雀、変わっちゃうのかーっ!?」




 ゲーム内の朱雀と、本体の朱雀。

 本体の朱雀は、ゲーム内で性格の変わってしまった分身を善しとしない。 今のキュアにベタ惚れ状態の朱雀は、ゲーム内だけの朱雀のもの。

 本体に取り込まれては、その想いも……消える可能性がある。




「私の失態です。

本体のすざくならば、主様にスキルを譲渡する手段が分かるかもしれません」


「「「…………」」」

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ