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212 村人、痛い女に───

 

「コッチに来い、【光を食らいし蜘蛛】! オマエの大好きな【オリハルコン】だぞっ!!」




 【光燐の神殿】の指輪の部屋にて出現したボス、【光を食らいし蜘蛛】。 その名が示す通り、光エネルギーが好物らしい。


 ダイが持っていた【オリハルコン】のほぼ(・・)全てを預かり、【蜘蛛】へと見せびらかしながらその前へと飛び出すキュア。

 



≪シュッ……シュフーーー!≫


「MP回復薬が心許無いからな……先ずは【ワイルドスラッシュ】っ!」




 普段なら、常に天井の巣穴に身を隠す【蜘蛛】。 しかし【オリハルコン】から放たれる太陽光の如き黄金の輝きに、思わず身を乗り出す。


 そのタイミングに合わせて、斬撃を衝撃波に乗せて飛ばすスキルを【蜘蛛】に射ちこむキュア。 空を斬る白刃が、巨大蜘蛛の顔面へと放たれる。


 ───だが。




「【光を食らいし蜘蛛:LV161:HP99.9%:弱?:耐?】……か。

掠りキズにもなっていないな。

斬撃は弱点でも耐性でもないし」


≪シュシュー≫




 キュアの【ワイルドスラッシュ】などそよ風だと言わんばかりに意にも介さず、糸を吹き出して【オリハルコン】を捕獲しようと狙う【蜘蛛】。

 然れどキュアとて、己ではなく【オリハルコン】を狙った攻撃など容易く躱す。


 躱しながら【サラマンダー】(火ぞくせいの剣)を装備しなおして、再び【ワイルドスラッシュ】を放つキュア。 コレで属性は『斬』ではなく『火』となる。




「よし、【HP97.9:弱 火】だ!

糸と同じで、本体も火に弱いらしい

…………ソレでも2%しかHPが減ってないのか」



 火属性が弱点ならば武器・魔法の両方で弱点が突けるし、チェンと朱雀の得意属性でもある。 キュア達のパーティでは最良の弱点と言えよう。

 圧倒的LV差はデカ過ぎるが。




「後は…………【キッズグリーンドラゴン】が、挑発すれば墜落攻撃をして自滅してきたように、今まで【ドラゴンハーツ】の敵には必ず『型』があった。

ソレを如何に早く見抜けるかが勝負の鍵となるハズだ」




 【黒鼠教団幹部カビパラ】相手には本来、数十人の兵士で急襲(レイド)攻撃をしかけて 『始めて』 勝利が見えてくる。

 そんな【ドラゴンハーツ】開発者が用意したセオリーを、キュアは───


『敵の頭上を野原の如く駆けまわる』


 という……他のプレイヤーでは【ドラゴンハーツ】のスキルをどう駆使してもマネ出来ない動きで、魔物の群を退治しきった。

 実質一人で。

 そんなキュアに、『敵の行動パターンが如何の』だとか言われても……開発者は苦笑いかもしれない。




「このまま、お互い攻撃し合う……だけでは終わらないよな」




 キュアは【光を食らいし蜘蛛】に大して効かない攻撃を、【光を食らいし蜘蛛】はキュア(オリハルコン) に容易く見切られる攻撃を、10以上繰返していた。

 今の11発目の攻撃でやっと【蜘蛛】のHPが80%を切った所である。




「奴の『型』に、変化が無ければ何十発でも戦えられるんだがな。

……三人とも、上手くやってくれよ」



◆◆◆



「───ホントだ、【神の炉】側にも巣穴があるわ……」




 キュア一人に【光を食らいし蜘蛛】を任せ、別行動をしていた女性陣三人。


 朱雀は、巣の中に隠れていた【光を食らいし蜘蛛】を見抜けなかったが……実際には、プレイヤー(キュア)が【オリハルコン】を使用するまで【ドラゴンハーツ】というゲーム上に、【蜘蛛】も巣穴も存在していなかった。


 もし最初から存在していたなら、攻略wikiなどを見れるプレイヤーは、簡単に先制できてしまうためである。


 しかし、一度出現したなら一括で全て出現する。

 蜘蛛も。

 巣穴も。

 その奥の存在も。




「けど……キュアを放っておいていいの?」


「主様の戦闘力は知っているでしょう、ムキムキ?」


「だけど……」


「キュアが本気になったら、たぶんチェン達三人でも敵わないかなー」


「ま、魔人族よか……?」




 最強の人間種・魔人族にして、強敵とも戦い慣れているチェン。 特殊能力を使いこなす朱雀。 村一番の使い手ダイ。

 一騎当千の三人だが……キュアの戦闘力・経験・手段などには敵わない。 キュアが搦め手に回れば、チェンは手も足も出ないだろう。




「まあ竜とか倒すぐらいだしね」


「主様に『付いてゆく』というのは、片時も離れない───という意味では有りません」


「分かってるわよ。

私達はキュアのため、キュアはアタシ達のために動けてこそ……でしょ?」


「チェンも、ボス(光を食らいし蜘蛛)と戦いたかったけど……ボスはボス(キュア)と一騎討ちかなー」


「そういう事です。

我々は、主様の覇道に転がる石コロを払うが役目」


「も、もうちょっと良い役目が欲しいかしら」




 プログラム上に【光を食らいし蜘蛛】と巣穴が出現してからは、その広範囲探査能力を遺憾なく発揮した朱雀。

 巣穴の奥には、相当数の【デビルスパイダー】が蠢いていると判明した。


 【光を食らいし蜘蛛】の攻撃が単調だったのは、足止めを【デビルスパイダー】の大軍に任せるつもりだからだろう。




「『剣の炉』や『指輪の炉』の何処でも出れるよう【光を食らいし蜘蛛】は巣穴を広げていたのでしょうが……別の出入口が有れば、当然ソコから侵入されますよ」


「そりゃアンタ達みたいに、空を飛べる人ならね」




 天井まで約4m。

 こんな所まで梯子を持ってくる者も居らず (ちなみに【ドラゴンハーツ】に、『梯子』というキューブ化できる道具アイテムは無い) 通常の手段では【光を食らいし蜘蛛】を倒す前に巣穴へ入りこむ手段などない。


 チェンと朱雀に持ち上げられて巣穴へと侵入するダイ達。




「…………さ、さすが大蜘蛛が歩き回れるだけあって人間なんか余裕で歩けられるわね」


「壁や床の糸、ネバネバしないなー?」


「巣穴の補強材としては、粘度より強度なのでしょう」




 暫し、巣穴の中を進む女性陣。

 やがて複数の通路が合流する部屋へと辿りつく。




「さあ、彼方が『指輪』への道穴です。

羽根娘、いきますよ」


「おっしゃー!」


「火燐よっ!!」

「【魔人炎】っ!!」




 キュアと戦っている【光を食らいし蜘蛛】の居る道が、業火で塞がれる。 如何なLV差が在ろうと、火が弱点の魔物がこの業火を突き進むとは思えなかった。




「あ、アタシ達が窒息とかしない?」


「空気穴は確保していますし、火燐操作の序でに熱気流も操作しています。

さぞかし【光を食らいし蜘蛛】はお尻を炙られている事でしょう」


「エゲツナイなー……」


「朱雀……アンタ、ドMのクセにドSなの?」


「私は愛の奴隷……ふにゃっ♡」


「愛のために、敵ん家に放火する女……激ヤバじゃない」




 ヤンデレとかでは無い。

 無いったら、無い。

 

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