211 村人、鍛冶師も食う。
「さて……。
【光を食らいし蜘蛛】だが、どうするか……」
「え!? に、逃げるんじゃないのっ!?」
「ムキムキ、主様の決定が全てですよ。
……ふにゅ♡」
一時は酷く狼狽していた朱雀であるが……キュアの説得 (!?) により、落ち着きを取り戻したようである。 凜とした態度でキュアの話を聞いていた。
───偶に、怪音がクチから漏れ出るように成ったが。
一方、【蜘蛛】への対処をもらすキュアに……逃げるつもりだったダイが驚愕する。
「【蜘蛛】のLVは高いが、動きは単純だ。
遣りよう次第で勝てる」
「でも……」
「チェンはヤるぞー!
魔人族ナメんなー」
「主様の、良しなに。
…………ふにゅにゅっ♡」
LV161の『化物』に尻込みするダイとは逆に、戦意高揚するキュア達。
基本、生きている場所が違うのだ。
怯えるどころか倒し方を考え始めているキュア達を、有り得ないモノでも見るかのような目で見つめるダイ。
「鍛冶師である君は魔物慣れなんかしていないだろうし……安全な場所に下がってくれていれば良い」
「あ……アタシだって、新作の剣を魔物相手に試し斬りぐらいするわ!
……でも、『アレ』は───」
「朱雀も復活した。
チェンは強敵と戦い慣れている。
……戦力は充分だ」
「えっ……?」
「お任せ下さい主様♡」
「任せろー。
キュアの敵はチェンの敵ー!
チェンの敵もチェンの敵だー!」
「…………っ」
別にキュアに悪気はない。
ダイを仲間外れにする意志など、コレっぽっちも無いのだから。
だが。
仲間だと思っていたキュアから、戦力外通知を受けたダイは、己が御荷物扱いをされた気が───否。
邪魔者と見られた気がした。
「……あ、アタシ……キュア達を心配して言ってるのよ?」
「俺は、君の依頼を達成するためにココに居るんだ」
「…………っ」
キュアの責任感は知っていたつもりだったが……自分の所為で危険に突っ込ませている事実に、改めて衝撃を受けるダイ。
そして、自分の所為なのに。
ソコに自分の居場所が無い。
≪シュフーーー……!!≫
「逃げだしそうにしつつ、何時まで経っても動く気配のない俺達に【光を食らいし蜘蛛】が苛ついてるっぽいな。
さあダイ、君は下がって───」
「…………あ」
「ん?」
「……アタシにも、『俺に付いてこい!』って言ってくれないの?」
「は?
い、いや……だが君は戦士では」
「……朱雀には言っておいて───何でアタシには言ってくれないの?」
「に、逃げようと言ったのは君で……」
【光を食らいし蜘蛛】から遠ざけようと、離れるよう促すキュアに───抱きつくダイ。 ウルウルと……微かに震えながら下から見上げられ、パニくるキュア。
「ちょっ……まっ…………!??」
「アタシの為に頑張ってるキュアを、一人には出来ないじゃないっ!?」
「……おーい? チェンも居るぞー?」
「主様の寵愛は、望むべくを働く者にのみ与えられるのです。
……ふにゅう♡」
「え? あ?
し……しかし君の目的は、【餓狼神】や【異世界の金属】に【光燐神】だろう!?」
「なら依頼変更よ!
キュアとなら、化け物とだって戦いたいの!」
「…………」
「……『俺に付いてこい』って、言って?」
「わ、分かった。
ダイ……君も俺に付いてこい!」
「……はい♡」
キュアを、全身で感じとらんと強く強く抱きしめるダイ。
どうすれば良いか分からず、固まり為すがままのキュア。
「結局、朱雀に嫉妬してただけなんだなー………………キュアー?
チェンにも言って欲しいかなー?」
「あ、ああ……。
チェンには助けられた記憶しかない。
もっと俺に付いてきてくれ!」
「おー! キュアに付いてくぞー!
……くふふー、悪くナイなー♡」
「……主様、もう一度私にも」
「つ、付いてこい、朱雀!」
「何処までも。
……ふにゅふにゅふにゅにゅう♡」
通常ならば【ドラゴンハーツ】において、一つの依頼を受けている間は別の依頼を受ける事は出来ない。
ヒロイン同士で搗ち合う事は、絶対に有り得ないのだ。
しかし。
PCでもなければNPCでもない───イレギュラーな存在である朱雀は、【ドラゴンハーツ】内で本来起こり得ない事を起こし得る。
完全なる人工知能に、『嫉妬』を起こさせる事すら有り得るのである。
「キュア!」
「キュアー!」
「主様!」
「ああ、もうっ……全員俺に付いてこい!」
「分かったわ!」
「おっしゃー!」
「主様の、良しなに!」
「……………………?
…………………どうして、こうなった??」
斯くいうキュア自身が、一番現状の展開に付いてゆけていない。
恐るべし、天然タラシ。
「でも、【光を食らいし蜘蛛】が強敵なのには違いないわ。
どうするの?」
「奴の行動型に、捕食行動がなかった。
【デビルスパイダー】などは、俺達を捕まえようとしていたのにな」
「途中の蜘蛛の巣にも、獲物がグルグル巻きだったぞー?」
「ああ。
ソコで気になるのが、【光を食らいし】という名前だ。
ダイ、異邦神ヘルメスの【オリハルコン】の説明を覚えているか?」
「確か……『太陽光を搾りし金属』、だっけ?」
「つまり【オリハルコン】は、太陽光の加護だか何か……そんなチカラが有るんじゃないか?」
「そういえば【蜘蛛】が出現したのは、主様が【オリハルコン】製の指輪を造られようと為されていた時でしたね」
「って事は……」
「【オリハルコン】は、【光を食らいし蜘蛛】のエサに成る。
囮が通用するハズだ」
【ドラゴンハーツ】はRー18ではありません。