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196 村人を想う少女、何でもカードで解決したがる奴に困惑する。

 

「「───『バトル』!!」」




 ヘイストとサキヒコ、二人の【デュエリスト】の宣言と共に採掘者ギルド本館・隣接する酒場・周辺の建物と道が白く変色してゆく。

 コレが、『特殊フィールド化』という現象なのだろう。


 その場に居た、人間や野良犬といった生物は白化はしなかったが……全身が黒───というより、光を失った暗い色になって動きが酷く鈍化した。




「かっ、彼等はどうなった!?

大丈夫なのか!?」


「ボク達と彼等とでは、時間の流れが違っている。

余程が無いかぎり、死にはしないのさ!」




 言いながら、スタートと同時に路地へと入りこむサキヒコ。

 この辺は全て廃墟。

 散乱する巨大な瓦礫、建物の至るところに開いた穴……完全な迷路である。


 まして『ビル』という建物の構造に慣れてすらいないヘイストでは、絶対に追い付けられなかった。




「【ディメイションカード】の、基本戦法すら分からないからな……。

たぶんサカヒコは、安全な所で魔物モンスター召喚に必要なディメイションエネルギーを貯めているんだろうが……」




 地理に明るくないヘイストが、下手に同じ戦法を取ると迷子に成りかねない。 物陰に隠れる程度にして、ディメイションエネルギーを貯め始めたヘイスト。




「…………?

この『ディメイションエネルギー』の溜まり方……魔力操作に似ている?」




 ヘイストが現実で使う魔法は、身体機能の強化。 だがクリティカルや貴族クラスの魔力など無いので、効果は微々たる物。

 しかしフルで使っても、素のキュアにすら敵わなかった。


 ───で、在ろうと……魔ナシでは無い以上、ヘイストは周囲や己の魔力の動きが分かる。




この世(ディメイション)カードには、魔力が無かったんだが…………まさか?」




 朱雀の話では、魔ナシ以外にも【ドラゴンハーツ】の魔法・スキルを使えるようにしたという。


 朱雀の飼い主…………『神』が。




「……コレも、その一つか?」




 分からない。

 偶々、似ているだけなのかもしれない。




「良く分からないな。

こんな時は、キュアに倣おう」




 『良く分からん』とゆう理由で、島一つを蒸発させる美女の顔面をブン殴ったキュア。 情報の無いなか、下手に考えて後手に回るよりは勘の赴くままに遣る方がマシ。


 遣らない後悔より、遣った後悔……という奴である。

 そうか?


 キュアに倣い、神の思惑だ何だは全部無視する。

 倣って大丈夫な奴か?




「取敢ず、【冷帯魚】★を召喚!」




 ディメイションエネルギーが★一つ分貯まったヘイストは、【冷帯魚】★のカードを取りだし召喚。

 カードが白化し、魔力がカラッポになる感覚。


 現実ならば、魔力欠乏症に成るところだが……『カードバトル』前までは一切魔力を感じられなかったので『そうゆう物』なのだろう。


 召喚されたモンスターは、体長18cm前後の真っ青な魚。 ───が、ベチャッと地面に落ち、息苦しそうにピチピチと跳ねる。




「えっ? あっ? アレっ?」


≪ハア……ハア…………ハ………………≫




 何やら、【冷帯魚】から『-1』『-1』『-1』と出続け……上に浮かぶ緑色の板が、右端から赤色へと変わってゆく。




≪……ハア…………ゥベ───≫




 【冷帯魚】がクチから水を吐き出した。

 水の掛かった部分の、白い特殊フィールドが、ピンク色になる……と同時に、板が全て赤色へと変化。 【冷帯魚】が消滅した。

 消滅する直前、【冷帯魚】がコッチ見た───気がする。

 世の諸行無常の全てを乗せた目だったのは、気のせいか。




「…………たぶん変化したこの『ピンク』は『自陣地』、だよな」




 泣いている暇は無い。

 勝負は無常なのだ。

 陣地を獲得したから【冷帯魚】が消滅したのか、死……力尽きて消滅したのかは分からない。


 取敢ず、水の無いところでは二度と魚系モンスターを呼ばないと決めたヘイスト。

( ヘイストもキュアと同じく川・湖・海の無い土地で生まれ育ったので、調理された魚以外を知らない。)




「★モンスターは、もう一体【炎の胡桃を食べるリス】★ってのが居るが……味方にもダメージという能力が恐いな。

次は★★まで魔力を貯めて、【コロポックル】★★というのを召喚してみよう」




 サキヒコの気配はまったく感じられない。 かなり遠く離れているのだろう。


 サキヒコの様子から、★モンスターばかり所持している筈。 ならば現在は二体、効率よくやっていれば三体目を召喚し終えた後あたりだ。




「……貯まったな、【コロポックル】★★召喚!」


≪きゃあきゃあきゃあっ♡≫


「か……可愛い♡」




 ヘイストが召喚した【コロポックル】とは、身長10cm足らずで3.5頭身の小人の女の子。

 召喚者であるヘイストに、とびきりの笑顔を振りまいていた。




「え、えっと……君はこの辺の物陰に隠れつつ、自陣地化していって欲しい」


≪きゃあ!≫




 人間の言葉は喋れないようだが、ヘイストの頼みを理解する【コロポックル】。 ヘイスト(にんげん)の入れないスキマへと入っていった。


 先程の【冷帯魚】は、召喚と同時にショッキング過ぎる事件が起きてしまい気付けなかったが……ヘイストの脇に、【コロポックル】の視界が見える『板』が有った。


 キュアの、【ドラゴンハーツ】でいう各種『ボード』ソックリである。


 【コロポックル】の視界では、彼女が手に持つ植物を振ると、目の前の陣地がピンク色に変化。 【冷帯魚】のように、死……消滅したりはしなかった。




「や、やはりアレは自分のせいだったんだな。

だが、お蔭で色々とルールは理解できた」




 【冷帯魚】に哀悼の意を示したヘイストは、物陰から少しだけ頭を出して周囲をチェック。 サキヒコやサキヒコのモンスターの気配は無い。

 サキヒコの戦法は、隠れながら秘密の場所を己の陣地で一杯にするつもりらしい。




「何処が秘密の場所か、自分には分からないからな……。

サキヒコが一箇所を重点的に陣地化するつもりなら、自分は広範囲に分散してみるか……」




 一箇所を重拠点化するより、徐々に相手を広くとり囲んで一斉に挟み込む……ヘイストがガキ大将だった時代、別のグループと争いに成った時の戦法である。


 基本、守るより攻める方が好きな面々ばかりだったから生まれた戦法だが……貧民街でのシマ争いは、子供同士とは言え生活に直結しうる。

 割りと確度は高い。




「ジギン達の能力や癖は理解しているが……カード達のチカラは何も分からない (【冷帯魚】のように) のだから、注意しないとな」




 サキヒコ達が居ない間に、目星を着けた物陰へ駆けるヘイスト。 魔力が貯まるのを計算し、物陰に入ると同時に【サラマンダー】★★★を召喚。

 体長1.2mのトカゲが出現した。




「さて、広範囲の攻撃とやらを見せてくれ」


≪シャアー!≫




 ヘイストの頼みに【サラマンダー】が扇状に火を吐くと、一気に白い特殊フィールドが自陣地ピンク化した。




「おお、スゴいなオマエ」


≪シャアー!≫


「【冷帯魚】より緑色の板も長いし……ギルド前の大通りを自陣地化してて欲しい。

目立つし危険だが……頼めるか?」


≪シャシャアー!≫




 任せろと言わんばかりに、尻尾を上げる【サラマンダー】。


 もう【冷帯魚】のような悲劇は繰返したくは無いが……コレは『カードバトル』。 頼れる者に頼るのは、当然なのだ。 のんびりとだがノッシノッシと、道の広範囲をピンク色に変えてゆく【サラマンダー】。


 特殊フィールドと化した世界は木製であろうと燃えない。 色が白からピンクに変わるだけだ。




「さて……サキヒコは、全てが★一つなら6~7体のモンスターを召喚している筈だが」




 ヘイストは三体 (実質二体)。

 質より量だとは信じたいが、初の『カードバトル』。 不安も有る。




「偵察も欲しいな」




 パッと見、サキヒコは一向に姿を見せない。 キュア程では無いとはいえ、ヘイストも気配探知には自身が有る。

 最初の物陰から一切出ないつもりなのかもしれない。


 ヘイストは魔力を★★まで貯め、【エアリー】★★を召喚。

 空中を浮かぶ、透明素材の女の子が現れた。




≪ぴー?≫


「この子も可愛いらしいなあ」




 ガキ大将だったヘイストは面倒見が良いし、割りと子供好きだ。




「こんな子に、偵察なんて遣らせたくは無いが……」


≪ぴぴっ!? ぴーぴーっ!≫




 ヘイストに、怒りの感情を向ける【エアリー】。 「こんな子」を、「役立たず」発言と取ったらしい。




「す、すまない。 そうゆう意味では無かったんだ。

危険だが偵察を頼まれてくれるか?」


≪ぴっ!≫




 分かった! といった感じで頷く【エアリー】。 サキヒコの消えた路地を、空から偵察しに行った。




「……うん。

【エアリー】の視界も分かる…………けど、三体の視界が同時に見えると目が回るな」




 ヘイストの視界には、三枚の『ボード』が有る。


 【コロポックル】が居るところは、人が入れる場所ではない。 同じ小さいモンスターが来れば危険だが……サキヒコと違い、定期チェックするヘイストの視界を抜ける心配はソコまでしなくて良いだろう。


 【サラマンダー】は大通りのど真ん中。 視界共有関係なく、特殊フィールドの何処からでも良く見える。


 【エアリー】の視界は重要だ。

 空を飛べる上、半透明なので隠密偵察能力がかなり高い。




「【エアリー】の視界を第一に……わっ、動かせるのか」




 【エアリー】の視界に集中するため、他の視界を手で塞ごうとして……ボードを押してしまった。 ボードの位置や大きさを変えられるらしい。


 調整し、使いやすい視界ボードを得るヘイスト。


 その間に魔力が★★に成ったので、【井戸から出た蛙】★★を召喚。 この物陰に隠れて自陣地を増やすよう指示。

 再び、別の物陰へ移動。


 着々と、サキヒコを取り囲んでゆく。

 

 

 イメージとしては、モンスターを召喚して『スプ○トゥーン』をヤらせます。

 ★が少ないと、弱いけど大量に。

 多いと、強いけど少量にしか召喚できません。


 フィールドの80%を先に自らの陣地にした方が勝ち。 敵デュエリストのHPを0にしても勝ちでは無く、一時的にモンスターの召喚・指示出しができなくなるだけ。


 なお、モンスターの能力は割りと適当なので、★の数だけで考えて下さい。

 

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