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190 村人の妹、巨大ロボに乗る。

 

「儂が人類最後の砦、対・ベノム組織【アーク】総司令官の『江ノ島 清八』であぁぁるっ!!」


「はあ……」




 【仮想現実装置】(パーシテアー)VR(アクティビティ)、【機鋼神ベノムセイバー】にダイブしたクリティカル。


 巨大百足から、【ベノムセイバー】という『巨人の鎧』に助けられたクリティカルは……彼女が助けた少女と共に『馬の無い馬車』にて、砦へと連れてこられていた。


 ピカピカの石材だの、動く床だの、治療と称して棺桶に詰められるだの……驚きすぎて、ある意味では百足から逃げるより疲労したクリティカルである。




「8年前……突如、何処からともなく現れた【ベノム因子】!

大概の生物がコレを吸収しようと、何も起こらんが……毒を持つ生物、例えば百足が吸収すると【ベノム】となるのであぁぁる!」


「はあ……」


「【ベノム】とは『生物毒ベノムに反応する因子と適合した生物』という意味であぁぁる」




 そして現在。

 アークの総司令官とやらは、何故か一民間人のクリティカルに対してクドクドと説明していた。


 クリティカル達の領主、レイグランは民に優しい。

 然れどソレでも、いちいち民の一人一人に会ったりはしない。 そんな暇が在るなら、とっとと有益な政策を進めた方がよほど民の為に成るからだ。




「【ベノム因子】と【ベノム】は、スッポリと日本を覆い隠して諸外国と通信も取れんのであぁぁる」


「はあ……」




 日本とは地名か?

 聞いた事は無いが……彼等は古代人なのだろうか? まさか大昔に【ベノム】とやらが実在して人類を襲っていた───と、一瞬考えて止めたクリティカル。


 たぶんVR(アクティビティ)とは、絵本の一種なのだ。

 キュアが【仮想現実装置】(パーシテアー)を被りながら寝るように……古代人の子供は寝物語に、【ドラゴンハーツ】や【機鋼神ベノムセイバー】を聞か(ダイブ)されるのだろう。


 古代人の赤ちゃん凄いわ……と、感心するクリティカル。 キュアが子供並みだと言っている事に気付いているのか否か。




「8年のあの日……日本人は見た!

日本を取り囲む諸外国の潜水艦から一成発射された、核の光をっ!!

……ソレでも【ベノム】は全滅しなかったし、世界から見棄てられた日本人が【ベノム】の壁に守られたのは皮肉であぁぁるが!」


「はあ……」




 核の光は分からねど……権力者なんてのは、そんなものだろう。 レイグランの秘書をするクリティカルは、歴史書もソレなりに見ている。


 現実ならば、その後は国土を外国で奪いあう戦争だろうが……日本とやらは【ベノム】の所為で、外国の軍隊が侵入できなかった訳だ。




「独力で【ベノム】と戦わねばならなく成った我等は……巨大化もしていないダニの一匹相手に、千人以上の死者を出してしまった事もあぁぁる!」


「はあ……」




 ダニから感染する病気の多くは、媒介する菌・ウイルスが原因だが……生物毒ベノムを自己生成するタイプのダニが【ベノム因子】に遣られたらしい。




「……だがっ!

尊い犠牲の果てに、【ベノム】の死体を入手した我等は【ベノム】を解析し、より強大な【ベノム】を倒すチカラを手にしてきたのであぁぁる!」


「はあ……」


「一歩ずつ、確実に!

その一歩一歩で、何度も犠牲は出てきた!

……しかぁぁし!

日本人はついに、全ての【ベノム】を倒す剣───【ベノムセイバー】を手に入れたのであぁぁぁぁるっ!!!」


「はあ……」




 【機鋼神ベノムセイバー】は、私に何を遣らせたいのか……いい加減疲れてきたクリティカル。


 【ドラゴンハーツ】の魔力が使えないクリティカルではキュアの役には立てないだろうと、【ドラゴンハーツ】以外のアクティビティ(ベノムセイバー)にダイブした訳だが……コレならば、キュアが訪問していない場所や杖の情報を仕入れるだけでも良かっただろう。


 クリティカルがログアウトを考え始めた頃───




「……ですが、【ベノムセイバー】は誰でも操作できる訳では有りません」


「…………」




 そりゃ強力な兵器が誰にでも使えたら大変な事になる。 番犬代わりに一家に一台、攻城兵器を! という訳にはいかないのだ───とか、今のクリティカルは考えられない。


 総司令官とやらの隣に立っていた黒髪の女。


 今まで、女は書類らしき物を胸の辺りで(・・・・・)確認しており……クリティカルの位置からでは気付けなかったが、憎々しい駄肉が引っ付いている。


 見せつけるように、揺らしながらクリティカルに向かい歩いてきたのだ。

 怨怨怨怨……。


 キュアが【機鋼神ベノムセイバー】をプレイすれば、今ココに居るのは兄なのか。 クリティカルは、絶対にこのアクティビティをキュアにプレイさせないと誓う。




「【ベノムセイバー】は、【ベノム】由来の素材・技術を使用している所為で……【坑ベノム因子】の強い人間でないと、操作できないのです」


「ああそうですか。

だから?」




 【仮想現実装置】(パーシテアー)と出会い、領主館で働きだす前のキュアは……領主館で働く大出世したクリティカルに嫉妬していた。


 ので、当時のクリティカルは領主館の面々と少しだけ溝が在ったし、魔ナシ差別をする【アジルー村】の人間を裁く権限を行使できなかった。


 しかし今のキュアは、クリティカルだけでは無く領主館の仲間を傷付ける者にも容赦はしない。


 等しくクリティカルも、キュアや領主館の敵には容赦しないし、基本他人はどーでもイイ。 キュアが思っているほとクリティカルは良い子では無いのだ。


 まあ……今、クリティカルの機嫌が悪いのは別の理由なのだが。




「此方の書類は、貴女の治療結果なのですが……」


「コレが如何か?」




 ちなみに、書類は日本語ではなく(・・・・・・・)クリティカル達の(・・・・・・・・)国の言語で(・・・・・)書かれていたが……クリティカルは、その異常性に気付けない。




「貴女の、坑ベノム因子は歴代最高値であり……2位の二郎くんを大きく引き離しています」


「……だから?」


「……申し訳有りませんが、国法により貴女を強制的に【アーク】へと徴兵します」


「はあ?」




 チカラ有る者は、国の良いようにされてしまう。


 クリティカル自身、攻城兵器の一撃をも防ぐ防壁魔法の使い手ゆえ、実に様々な貴族富豪から徴兵・婚姻・妾の要請が来た。 今のレイグランに拾われなければ、クリティカルはキュアと一緒には居られなかっただろう。


 ので、坑ベノム因子は知らないが……こうなるのは嫌という程に分かっているクリティカル。




「何なのよ……もうっ!」



◆◆◆



「よっ」


「…………」





 総司令官とやらの長話が終わり。

 格納庫という、やたら広大な場所に連れてこられたクリティカルが出会ったのは、赤髪でやたら珍妙卦体な……俗に『ヒーロー服』と呼ばれる格好の青年『貞蔵 二郎』だった。


 クリティカルが来るまで、坑ベノム因子一位だった男で……百足からクリティカルを助けた男である。 不機嫌そうなクリティカルを見て、苦く笑う二郎。




「徴兵の件は済まなかったな」


「……アナタも関与しているの?」


「いいや、オレも徴兵された側だぜ。

ま、オレは一郎兄ちゃんの仇を討てるから望んで徴兵されたんだがな」


「…………そう……兄さんを……。

───あの女の子は?」


「彼女は病院だ」


「病院?

そんなに酷い怪我だったとは思えなかったんだけど……」




 クリティカルの問いに、歯噛み再び表情を苦くする二郎。




「……あの百足の出現ポイントの近くで女性が死んでいた。

遺伝子調査の結果、彼女の母親だと判明したよ」


「……そう」




 『遺伝子調査』は分からないが……【機鋼神ベノムセイバー】にダイブしてからは、そんな単語ばかりなのでもはや慣れたクリティカル。




「保護先が見つかるまで、入院の体をとって保護しているのさ」


「あら、坑ベノム因子が低ければ手厚い保護を受けられるのね」


「…………」




 クリティカルとて分かっている。

 クリティカルの世界とて、魔物や盗賊の闊歩する世界。

 【アジルー村】はキュアが居たからトップクラスの安全が保証されていただけで……国全体を見れば、少女のような孤児は幾らでも居る。




「……御免なさい」


「仕方ないさ。

青春を奪われたり、子を奪われたり……徴兵制度を取る政府や軍を【ベノム】以上に恨んでいる奴は少なくない」


「……兄さんも、ある意味【アジルー村】に徴兵されていたような物ね」


「何か言ったか───」




 ───と、ソコで鳴り響くサイレン。 初めて聞く音なれど、不安感を煽る音であり……【機鋼神ベノムセイバー】の警鐘であろうと予測するクリティカル。




「【ベノム】出現の合図だ!」


「またあんな化物が……」


「クリティカルっつったか?

……来い!」


「えっ? あっ? ちょっ───」




 二郎に引き摺られるように、壁に開いた変な丸い2m程の穴の前に連れて行かれるクリティカル。




「こ、この穴は?」


「【ベノムセイバー】への入り口だ」


「入り口?」


「百聞は一見にしかずってな!」


「きゃっ!?」




 壁の穴へと突き飛ばされるクリティカル。 踏ん張ろう……とした床が、とてつもなく滑る坂道であった。




「きゃあああっ!?」




 【アジルー村】に滑り台など無い。

 『滑る』といった経験なんて無いクリティカルはパニックだ。

 しかも───




「いやあああああっ!?

服がああああああああっ!??」




 坂道の壁から蛇の如く伸びるナニかに、服を奪い盗られるクリティカル。

 恥ずかしさでパニックが加速し、自分が何やら着せられているのに気付けない。




「ああああああ………………あ?」




 突如、坂道が終わり……薄暗い個室の椅子の上に落とされたクリティカル。 落下の勢い・姿勢などは計算されているようで、痛くは無い。




≪【ベノムセイバー】2号機、【セイバーピンク】パイロット搭乗完了≫


「は? へ?」




 個室に響く声。

 女性の声であったが……ふと、ひんむかれた自らの格好を思いだして、身体を隠そうとし───




「ぴ、ピンク?」




 やたら珍妙卦体な……俗に『ヒーロー服』と呼ばれるデザインな上、悪趣味なド派手ピンク色の服を着せられていたクリティカル。

 絶望。

 

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