181 村人、絶対に上を見ない。
「───あ……ああ…………」
「しっ、シーナぁ!??」
辺り一面を照らす、強烈な光を放ちながら光り輝くシーナ。 溢れる魔力が光と成って放出されているのだ。
その光は、人間が一人で持てる魔力量で出せる物では無く……キュアの最大MPの数十倍、数百倍もの量が必要である。
「兄さ……ん…………キュア……さ───」
「シー……ナ?」
「…………」
「シーナっ、シーナ、シーナぁ!!?」
シーナの目は、徐々に虚ろに成ってゆき……ブツブツと何事かを呟きだしてた。
イーストンは半狂乱で必死に呼び掛けるも、シーナ無反応は無反応である。 その視線は、この場の何処をも見ておらず……遠くを眺めていた。
シーナの、視線の先を追っていったキュアは───
「───北?
まさか……北連山を見ているのか?」
「キュア?」
「いや……さっき君達の会話に、北連山が出てきたから───なんとなくな」
シーナとゾリディア。
友達となった二人は、互いの故郷を想っていた。 ゾリディアの故郷……北連山の【名も無き集落】へと行く約束をした直後シーナが輝き、こう成った事からキュアは北連山を連想したのだ。
「…………【……名……無……】」
「シーナ?」
キュアの発言が切欠なのか……シーナは北連山に関係有る単語を呟く。 両腕に集めた魔光を皮膜のように拡げ、バサッと羽ばたかせると───3m以上フワリと浮いた。
「「「飛ん……っ!??」」」
「しししっ、シーナっ!?
降りてこいっ、パンツが丸見えだぞっ!?」
イーストンの台詞に、ドン引きの女性陣。 しかし彼もパニックなのだ。
「…………行か……な……きゃ───」
「【強化】」
シーナは、北の方角を見据えたまま空中で身構え……フッと魔光が消える。 意識を失ったらしいシーナは、そのまま落下し…………何が起ころうと対処できるよう、【強化】を唱えた直後だったキュアが素早くシーナを受け止めた。
「シーナっ!?
キュア、済まねぇ!」
「取敢ず、シーナを家に運ぼう!」
「お、おう!
コッチだ!」
イーストンとシーナの自宅へと急ぎ行くキュア達。 シーナを、定番の御姫様抱っこするキュアに、イーストンが「イヤらしい」とかなんとか。
そんな場合じゃないと怒りながら、兄妹の家へと着く。
◆◆◆
「婆ちゃんも、事ぁ無えってよ」
「イーストン」
「まあアタシゃ唯の産婆で……内科医みたいな事は、見よう見まねでしか診察できないんだがね」
シーナを診察した老婆が、全身くまなく調べたが……何も異変は無かったようだ。 今は安らかに眠っている。
キュアとしては当然、今のシーナも心配だが……。
「ゾリディア……気付いたか?」
「ああ、今のシーナが飛んだ時の両腕の光───」
「竜の前足みたいだったぞー」
「航空力学的には有り得ませんが、翼竜と呼ばれる存在の仕組みに近いですね」
イーストンはシーナのベットに付き、キュア達は居間のテーブルで相談している。
シーナの魔光。
アレは……竜が住む巨大湖の漁村で戦った、【キッズグリーンドラゴン】の前肢ソックリであったのだ。
「まさか……【ゾンビ化】治療に使った【竜の心臓】の所為───ゾリディア、君は!?」
「い、いや……私は何とも無い」
「【ロス村】の他の村民も同じだよ。
アタシ含め、何も問題無いね」
だが、無関係と考える者などココには居ない。 特に、竜と戦ったメンバーは。
「……イーストン」
「あ?」
「実は君達兄妹は……血が繋がっていない、なんて事は───」
「有る訳ねぇだろっ!?」
「ソレはアタシが保証するよ。
二人とも、アタシがこの手で取り上げたんだ」
「主様?」
「イーストンは二千年前の『その者』とやらの子孫だった。
しかし、シーナは『その者』では無かったのは何でだろう……?」
「ソレを言うなら……二千年も前から『その者』は、この地に住んでいたのだ。
【ロス村】の人間、全員が子孫だっておかしくない」
「ならイーストンと他の人間を別けたのは……何だ?」
「───テメェ、キュアっ!
シーナが……シーナが全ての原因だとでも言いたいのかっ!?」
激昂するイーストンに……動じないキュア。
暫し、睨みあい───
「───に、兄さん……」
「シーナ!?
目が覚めたのか!?」
「御免なさい、心配をかけて……。
皆さんも、申し訳御座いませんわ」
「馬鹿っ!
オレ達じゃなく、オマエの事だろ!?」
「イーストンの言う通りだ。
身体やMPに異常は?」
「いいえ……寧ろ、絶好調といって良いぐらいですわ」
【ゾンビ化】治療直後の、微かに疲れた様子……目の下の隈や、肌荒れ等が見えない。 シーナ自身の言う通り、絶好調なのだろう。
シーナと友達となったゾリディアが、目線を合わせて手を繋ぎ……問う。
「シーナ、無事で良かったが……さっきまでの自分の事を覚えているのか?」
「ええ。
北連山……貴女の故郷に行かなきゃって」
「北連山?
【名を失いし神の神殿】か?」
「そういった情報が、ワタクシの頭に入る前に……兄さんが助けてくれたのですわ」
「お、オレ??」
シーナの、不思議な言い回しに……イーストンが止まっていると。
「ゾリディアが漁村で言った台詞。
アレが、いみじくも現状通りなんじゃないかな」
「私? 私が何を言ったか?」
「大いなる者共の胸中など知らぬ。
奴等がどう動こうと、我等には迷惑にしか成らぬ例……なんだよ、シーナも」
「邪神の企みだと?」
「むしろ、邪竜どもの企みかもな。
イーストンが邪神の『その者』なら……シーナは、邪竜の『その者』かもしれん」
「ソレがシーナの、竜ソックリの両腕なんだなー?
キュアー?」
「ああ。
根拠は、たったソレっぽっちだけどな」
人間の都合を無視し、自分の都合を押し付ける者にシーナは選ばれてしまった……かもしれない、という訳だ。
「どうすれば良いってんだぁ?」
「邪神の古文書には、『その者』が邪神の都合が良いように書かれているが……イーストンは邪神の言う通りにするつもりは無いんだよな?」
「あたぼうよ!」
「シーナは?
北連山云々は邪竜の意志っぽいが……イーストンが助けてくれたんだよな?」
「あたぼう、ですわ!」
「……敵同士の子供が、君達兄妹なんだろうか?」
「お互い打ち消す感じかー」
「イーストン、【ロス村】の村長代理は?」
「オマエの目の前に居るぜ。
その産婆の婆ちゃんが村長代理さ」
「ただ一番年寄りってだけだがね」
「そうでしたか。
……未だ【ロス村】は大変な状況ですが───兄妹が旅立っても大丈夫ですか?」
「キュア?」
「一番詳しい【名も無き集落】の代表者へ、話を聞くべきじゃないか?」
「……私は、歓迎する。
理由は、ただただ遊びに来て欲しかったがな」




