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181/420

181 村人、絶対に上を見ない。

 

「───あ……ああ…………」


「しっ、シーナぁ!??」




 辺り一面を照らす、強烈な光を放ちながら光り輝くシーナ。 溢れる魔力(MP)が光と成って放出されているのだ。


 その光は、人間が一人で持てる魔力量で出せる物では無く……キュアの最大MPの数十倍、数百倍もの量が必要である。




「兄さ……ん…………キュア……さ───」


「シー……ナ?」


「…………」


「シーナっ、シーナ、シーナぁ!!?」




 シーナの目は、徐々に虚ろに成ってゆき……ブツブツと何事かを呟きだしてた。


 イーストンは半狂乱で必死に呼び掛けるも、シーナ無反応は無反応である。 その視線は、この場の(・・・・)何処をも見ておらず……遠くを眺めていた。

 シーナの、視線の先を追っていったキュアは───




「───北?

まさか……北連山を見ているのか?」


「キュア?」


「いや……さっき君達の会話に、北連山が出てきたから───なんとなくな」




 シーナとゾリディア。

 友達となった二人は、互いの故郷を想っていた。 ゾリディアの故郷……北連山の【名も無き集落】へと行く約束をした直後シーナが輝き、こう成った事からキュアは北連山を連想したのだ。




「…………【……名……無……】」


「シーナ?」




 キュアの発言が切欠なのか……シーナは北連山に関係有る単語を呟く。 両腕に集めた魔光を皮膜のように拡げ、バサッと羽ばたかせると───3m以上フワリと浮いた。





「「「飛ん……っ!??」」」


「しししっ、シーナっ!?

降りてこいっ、パンツが丸見えだぞっ!?」




 イーストンの台詞に、ドン引きの女性陣。 しかし彼もパニックなのだ。




「…………行か……な……きゃ───」


【強化】(ヘイスト)




 シーナは、北の方角を見据えたまま空中で身構え……フッと魔光が消える。 意識を失ったらしいシーナは、そのまま落下し…………何が起ころうと対処できるよう、【強化】(ヘイスト)を唱えた直後だったキュアが素早くシーナを受け止めた。




「シーナっ!?

キュア、済まねぇ!」


「取敢ず、シーナを家に運ぼう!」


「お、おう!

コッチだ!」




 イーストンとシーナの自宅へと急ぎ行くキュア達。 シーナを、定番の御姫様抱っこするキュアに、イーストンが「イヤらしい」とかなんとか。

 そんな場合じゃないと怒りながら、兄妹の家へと着く。



◆◆◆



「婆ちゃんも、事ぁ無えってよ」


「イーストン」


「まあアタシゃ唯の産婆で……内科医みたいな事は、見よう見まねでしか診察できないんだがね」




 シーナを診察した老婆が、全身くまなく調べたが……何も異変は無かったようだ。 今は安らかに眠っている。

 キュアとしては当然、今のシーナも心配だが……。




「ゾリディア……気付いたか?」


「ああ、今のシーナが飛んだ時の両腕の光───」


「竜の前足みたいだったぞー」


「航空力学的には有り得ませんが、翼竜と呼ばれる存在の仕組みに近いですね」




 イーストンはシーナのベットに付き、キュア達は居間のテーブルで相談している。

 シーナの魔光。

 アレは……竜が住む巨大湖の漁村で戦った、【キッズグリーンドラゴン】の前肢ソックリであったのだ。




「まさか……【ゾンビ化】治療に使った【竜の心臓】(ドラゴンハーツ)の所為───ゾリディア、君は!?」


「い、いや……私は何とも無い」


「【ロス村】の他の村民も同じだよ。

アタシ含め、何も問題無いね」





 だが、無関係と考える者などココには居ない。 特に、竜と戦ったメンバーは。




「……イーストン」


「あ?」


「実は君達兄妹は……血が繋がっていない、なんて事は───」


「有る訳ねぇだろっ!?」


「ソレはアタシが保証するよ。

二人とも、アタシがこの手で取り上げたんだ」


「主様?」


「イーストンは二千年前の『その者』とやらの子孫だった。

しかし、シーナは『その者』では無かったのは何でだろう……?」


「ソレを言うなら……二千年も前から『その者』は、この地に住んでいたのだ。

【ロス村】の人間、全員が子孫だっておかしくない」


「ならイーストンと他の人間を別けたのは……何だ?」


「───テメェ、キュアっ!

シーナが……シーナが全ての原因だとでも言いたいのかっ!?」




 激昂するイーストンに……動じないキュア。

 暫し、睨みあい───




「───に、兄さん……」


「シーナ!?

目が覚めたのか!?」


「御免なさい、心配をかけて……。

皆さんも、申し訳御座いませんわ」


「馬鹿っ!

オレ達じゃなく、オマエの事だろ!?」


「イーストンの言う通りだ。

身体やMPに異常は?」


「いいえ……寧ろ、絶好調といって良いぐらいですわ」




 【ゾンビ化】治療直後の、微かに疲れた様子……目の下の隈や、肌荒れ等が見えない。 シーナ自身の言う通り、絶好調なのだろう。

 シーナと友達となったゾリディアが、目線を合わせて手を繋ぎ……問う。




「シーナ、無事で良かったが……さっきまでの自分の事を覚えているのか?」


「ええ。

北連山……貴女の故郷に行かなきゃって」


「北連山?

【名を失いし神の神殿】か?」


「そういった情報が、ワタクシの頭に入る前に……兄さんが助けてくれたのですわ」


「お、オレ??」




 シーナの、不思議な言い回しに……イーストンが止まっていると。




「ゾリディアが漁村で言った台詞。

アレが、いみじくも現状通りなんじゃないかな」


「私? 私が何を言ったか?」


「大いなる者共の胸中など知らぬ。

奴等がどう動こうと、我等には迷惑にしか成らぬ例……なんだよ、シーナも」


「邪神の企みだと?」


「むしろ、邪竜どもの企みかもな。

イーストンが邪神の『その者』なら……シーナは、邪竜の『その者』かもしれん」


「ソレがシーナの、竜ソックリの両腕なんだなー?

キュアー?」


「ああ。

根拠は、たったソレっぽっちだけどな」




 人間の都合を無視し、自分の都合を押し付ける者にシーナは選ばれてしまった……かもしれない、という訳だ。




「どうすれば良いってんだぁ?」


「邪神の古文書には、『その者』が邪神の都合が良いように書かれているが……イーストンは邪神の言う通りにするつもりは無いんだよな?」


「あたぼうよ!」


「シーナは?

北連山云々は邪竜の意志っぽいが……イーストンが助けてくれたんだよな?」


「あたぼう、ですわ!」


「……敵同士の子供が、君達兄妹なんだろうか?」


「お互い打ち消す感じかー」


「イーストン、【ロス村】の村長代理は?」


「オマエの目の前に居るぜ。

その産婆の婆ちゃんが村長代理さ」


「ただ一番年寄りってだけだがね」


「そうでしたか。

……未だ【ロス村】は大変な状況ですが───兄妹が旅立っても大丈夫ですか?」


「キュア?」


「一番詳しい【名も無き集落】の代表者へ、話を聞くべきじゃないか?」


「……私は、歓迎する。

理由は、ただただ遊びに来て欲しかったがな」

 

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