表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/420

180 村人、光る少女を見る。

 

「【料理:LV0】……と」


「うむ、無事にスキルを会得できたな」




 村民全ての【ゾンビ化】を治療した【ロス村】。

 その夜。

 キュアは、人間に戻ったゾリディアとシーナとで皆の食事の準備をしていた。


 完全に【ゾンビ化】していた者の【ゾンビ】が治っても、その間失われた体力が直ぐに戻る事はなく……MP回復手段の乏しいキュアの【癒し】(ヒーリング)に頼る訳にはいかず、地道な手段で村民の回復に努める事となったのだ。




「キュアさん、ゾリディアさん。

今、村の者に聞いてきましたが……村の中に有る食材は全て自由に使って宜しいそうですわ」


「シーナ、君も一応【ゾンビ化】が治ったばかりなんだし……」


「ワタクシは症状が軽かったですし、キュアさんから頂いていた【HP回復薬】で、其処まで消耗しておりませんもの」




 【料理】スキルの講習で、並び調理するキュアとゾリディアの隣に……シーナはソソソと寄り立つ。




「……其よりキュアさん?」


「ん?」


「ゾリディアさんは、心配しなくて宜しいんですの?」


「な、なんの事だっ!?」


「心配して無い訳じゃないがな。

ゾリディアは確とした戦士だ。

自己管理は俺なんかより、遥かにしっかりしている。

今は頼りにさせて貰うよ」


「……ふん」




 顔を赤らめ、照れるゾリディアと……ゾリディアが【ゾンビ】だった時と、なんら変わらぬ態度のキュア。




「もちろん、疲れたら直ぐに言ってくれ」


「……ああ」




 二人の様子を見ながら、クスクスと笑うシーナ。 やや寂しそうに。




「ただ心配して貰うより……羨ましい、かな?」


「だ、だから何の話をしているっ!?」


「?」




 ゾリディアとシーナの、意味不明な会話にキュアが首を傾げていると。




「キュアー、食材持ってきたぞー!」


「主様。

この村に氷室は無かった所為で……ナマモノの幾つかは、腐っておりました」


「香辛料はソコソコ残ってたんだがよぅ……」




 今、動ける者で【料理】スキルを持っている者が、キュア達三人だけだった。 といっても……他の生産系スキルのように、適当調理で料理が出来上がっていくのだが。


 とかく、他の動ける者……チェンと朱雀とイーストンが、村と裏山から食材をかき集めてくる。

 その食材で簡単な料理を作ってみたキュア。




「試しに作ってみたが───

ゾリディアの【料理】レベルは高くて美味いが……俺のは、まだまだ不味いなあ」


「初めてにしては上出来ではないか」


「妹が料理上手なんだ。

貧しい家庭だったが……舌は肥えているつもりだ」


「シスコンか」


「まあ否定はしない。

俺の魔ナシ含め、敵が多かったからな」




 キュアが故郷の村で受けていた仕打ちは聞いている。 兄妹に両親が居ない事も。

 助けあって生きてきたのなら───まあ……シスコン (と、天然) も仕方ナシかと納得するゾリディアとシーナ。




「オレも会ってみたいぜ」


「妹とイーストンは……あー…………」




 嘗て一度だけ【ドラゴンハーツ】をプレイしたクリティカルは、イーストンと会っている。

 しかし……『別の』セーブデータで。


 そもそも、『セーブ』という概念じたい、キュアは持っていない。 テレビやネットが無く、創作娯楽という物がほぼ無い世界ゆえ『パラレルワールド』等の概念もない。

 この辺、どう成っているのか……内心怖くて、余り触れられないキュア。




「そんな事より……俺の故郷では見ない食材ばかりだな」


「40人分以上作るし……カレーかな」


「『カレー』?

どんな料理なんだ?」


「香辛料をタップリ使う料理で、辛いが美味い。

しかも【状態異常:毒】の治療と、一定時間攻撃力が上がる」


「( 如何にも【ドラゴンハーツ】だなあ。)

どんな香辛料を使うんだ?」


「クミン・コリアンダー・リカリス・シナモン……」


「ちょ───……はあっ!?」


「なんだ?」




 料理の材料に、知り合いの名前がドバドバと入ってきた。


 クミン・コリアンダー・リカリスは、領主館の3トップの名前。 シナモンはキュアに魔ナシ差別をせず、自らの知識・技術を惜し気もなく伝えた者である。

 突然の仲間の乱入に、軽く目眩を起こすキュア。




「あ……アレか?

【病忌避】(キュア)【強化】(ヘイスト)といった『アレ』なのか?

最近は無かったのに……」


「どうしたんだ、キュア?」


「いや……ちょっと説明しづらいんだがな。

ちなみに……カレー? 以外に使う、他の香辛料の名前は有るか?」


「香辛料なんて、私が知るのは百種も無いが……ソレでもこの世の香辛料の、ほんの極一部に過ぎん」




 言って……ゾリディアが上げる香辛料名に、幾つか領主館メンバーや【アジルー村】で聞き知った名前が。 目眩がちょっとだけ大きくなるキュア。




「───と、こんな所か」


「……ハァ。

クリティカルの名前が出なくてホッとすべきか否か……」


「【クリティカル】か?

ソレ───は……」


「何だ、急に言い澱んで……ま、まさかっ!?」




 【ドラゴンハーツ】の人間が、こういう反応を示すのは……キュアが購入していない『魔法名』に触れた時である。 効果そのものの説明はしてくれるが、『魔法名』となると、イベントに関係ある魔法以外は頑なにクチを閉ざしだすのだ。




「うーん……」




 【仮想現実装置】(パーシテアー)は、魔道具である(・・・・・・)


 魔道具とは、過去の古代人が作った(・・・・・・・)謎の道具である。


 その中に入っている【ドラゴンハーツ】もまた、古代文明なのだ。




「───古代には、キュアとは『病忌避』という意味でも有ったのか……」


「はい?

現代でもキュアとは『病忌避』という意味ですよ?」




 キュアが一人、仮説を立てていると……シーナ達が不思議そうに訪ねる。

 古代人が作ったゲーム(ドラゴンハーツ)の住人であるならば───シーナ達もまた、古代人・・・なのかもしれない。




俺の故郷(げんじつ)とこの国は、一部文化が捻れて繋がっているのかもって話さ」


「「「???」」」



◆◆◆



 領主館の同僚達と同じ名前の材料で作った料理は美味かった。




「ふう……材料が無いかもしれんが、故郷の妹にも教えてみるよ。

ゾリディア、【料理】スキルを有難う」


「いや、構わない」


「シーナも……序でに成ってしまったが、【裁縫】スキルを有難う」


「どういたしましてですわ。

チェンさんとゾリディアさんの着ている服は……?」


「シーナの【裁縫】で、キュアが縫ってくれた服だぞー!

竜退治にも役立ったなー」


「私もだ。

有難うシーナ」


「此方こそ、ワタクシ達の【ゾンビ化】を治してくれて有難う御座いますわ」


「ソレは私自身の問題でもある。

礼には及ばない」




 口元を拭きながら立ち上がるゾリディア。




「キュアは、この村の人間を放っては置けないのだろう?」


「ゾリディア?」


「私は【名も無き集落】へと帰る」


「【ゾンビ化】……急がないとヤバイのか?」


「まさか。

村長達は、二千年前の劣化竜の心臓(ドラゴンハーツ)とは言え【神薬】を使っている。

キュアの【防毒マスク】も有るしな」




 「なら……」と、言いかけ───黙るシーナ。 自分達【ロス村】の人間が【ゾンビ化】が治った場面を見たのだ。 ゾリディアとて、郷愁にかられるのも当然だろう。




「ワタクシ達……もう友達よね?」


「……ああ、当然だ」


「此方が落ち着いたら、【名も無き集落】へ行っても良いかしら?」


「彼処は【名を失いし神】……邪神の神殿の前に作られているからな……。

そもそも、北連山が危険だし……」


「あら。

ワタクシだってキュアさん程じゃ無くとも、それなりに強いのよ?」


「オレも付いてゆくしな。

オレの先祖が『その者』とやらなのか、知りてぇんだ」




 イーストン達は『その者』について何も知らなかったし、記録のような物も無い。 だが……自分の所為で【ロス村】や周辺地域に、【バイオ工場】を使って毒をバラ蒔かれたという。

 無視できる話では無い。




「仕方あるまい……分かった。

兄妹で、来ると良い」


「俺も、この村の憂いが無くなれば直ぐに行く」




 キュアも宣言する。

 【ロス村】を放って行くと、イーストンとシーナが無茶をしそうな気がしたからだ。




「ふふっ、キュアさん。

ゾリディアさんと一緒に行っても良いの───あら? ら? ……ら」


「しっ、シーナ!?」




 シーナが……止まる。

 まさか再び【ゾンビ化】かと皆が注視していると……シーナの身体が光っていた。


 ソレは───魔力の光。

 人成らざる、莫大な量の光。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ