18 村人、同僚と会話する。
倉庫の荷物運びを終え、給料を貰ったキュア。 仕事内容が違うクリティカルとは行きも帰りも別々の時間なのだが……彼女に礼も言いたいので、共に帰ろうと使用人達が休憩所としても使う食堂で待っていた。
領主館内でも有名人の 『警護秘書副隊長クリティカル』 の 『兄』 に興味津々の使用人達は、キュアが魔ナシだと知っても、誰も差別してこない。
クリティカルから話は聞いていたが……内心、キュアはかなり戸惑っていた。
「クリティカルの仕事が終わるのは夜だしな……───ん?」
「あっ……」
そんなキュアが見つけたのは、朝方彼に絡んできた少年であるヘイストであった。
気不味そうにキュアへ語るヘイスト。
「な、何だよ……サボリか?
クビになるぞ」
「まさか。
ちゃんと働いて給料も貰ったぞ」
「そ、そうなのか……?」
何やら、そわそわするヘイスト。
申し訳なさそうに俯く。
「朝の勢いはどうした?
心配しなくても、クリティカルに告げ口したりしないよ」
「そ、そんなんじゃない……!
…………。
……でも、朝は済まなかった」
しっかり、キュアの顔を見て……頭を深く下げるヘイスト。
「ははっ、リカリスさんに余程キツく叱られたらしいな」
「だから、そんなんじゃないって言ってるだろっ!?」
からかい過ぎたか、若干泣きそうなヘイスト。 キュアも、言い過ぎたかなと反省し。
「オマエが何を悩んでいるのか知らんが……俺は 『魔ナシ』 だから、焦る気持ちは分からんでもない」
「そ、そうだったのか。
……いや、ソレでも自分の気持ちが分かる訳はない」
「おそらく、オマエは魔法が使えるんだろう?
魔法を使えない人間の人生なんて───」
「───眼病……なんだ」
「えっ!?」
「日常生活はギリギリ送れる。
だけど……門番として必要な視力が───」
門番という仕事は、主の客の 『顔の識別能力』 が要求される。
視力の低下は死活問題だろう。
「す、済まない……」
「……謝るな。
自分も、魔ナシの事や朝の事など……色々済まなかった。
では、失礼する」
「あ、ああ……」