178 村人、足を探す。
漁村にて竜の心臓を【 道具箱 】に仕舞った後、MP回復を持ちながら村民達のコレからを聞くキュア達。
「引っ越しに準備は、どれだけ掛かるんだ?」
「元より竜の所為で、満足な財産など有りませんから。
着の身着のままという人間ばかりですよ」
頷くキュア。
極貧の【アジルー村】の自宅から、領主館内の一室で過ごし始めた時のキュアも、今の彼等と似た感じだったからだ。
「竜の素材はどうする?
子竜とは言え、100人で別けるとは言え……結構な量だ」
「キュアさんの故郷は、魚が居ないとか」
「ん?
故郷の村と職場の街しか行ったは事ないし、どっちも川や湖が無くて地下水頼りだったからだが……ソレが?」
「そうですか……実は魚というのは、とても足が早いんですよ」
「!?」
自分が食べた魚の骨を見るキュア。
若干、顔が青い。
「あ、足……速いのか」
「ええ。
あ、もちろん今回御出ししたのは、特上かつ新鮮な魚ですから。
で、魚の運搬には、内部の時間が止まる【 道具箱 】が必須なんですよ」
「……???
よ、よく分からんが……ココの人達は【 道具箱 】を使えるのか」
解体作業班を見遣ると、確かに何人かが魔法の杖を振りながら【 道具箱 】を使い、竜の素材を仕舞っていた。
しかもキュアが使う、ピカピカ悪趣味【 道具箱 】ではない質素な奴。 内心でキュアは、嫉妬していた。
「保存・運搬には何も問題は無い訳だな?
では引っ越し先や、後の職には当てが有るのか?」
「卸しの業者ヅテに。
その業者の所や、余所で人手不足の漁場に行く者など……竜に怯える生活より遥かにマシな所ばかりです」
「そうか、なら良かった」
キュアの、心の底からの笑顔に『キュン』となる村民 (オッサン) が……渋面を作る。
「ソレで……村長の事なのですが」
「ど、恫喝して済まなかった」
「いえ……キュアさん達の立場なら仕方ないかと。
ですが、もし御許し頂けるなら」
「村民の立場なら仕方ない、だろう?
村民と余所者……村長なら悩むまでも無い。
───立派な村長さ」
魔ナシ差別の挙げ句……放火宣言・領主館で働くキュアとクリティカルの殺人未遂・収監・死刑確定・化物と化した息子に食われた【アジルー村】の村長と比べたら───立派な村長なのだ。
◆◆◆
「───という訳だ」
「む、ムチャクチャだな」
漁村を朝に出て、二日がかりで【ロス村の裏山】へとたどり着いたキュア達。
裏山へ行く崖を飛び下り、【ゾンビ化】しつつあるシーナと、シーナの治療をするイーストンの元へ駆け寄ったキュアは……無事な二人を確認し、事情を話す。
「コッチは問題ない。
御前サンから貰った薬はまだ有るし、村民達も【ロス村】の中だけでウーアー言ってるだけさ」
「キュアさん……全くもう。
ワタクシの為にムチャはしないで下さいまし」
「仲間を助けるのはムチャとは言わん。 見捨てるのは何より嫌だ」
「…………」
熱が有るのか、シーナの顔が赤い。
【ゾンビ化】を警戒し、シーナの首筋に顔を近付けてチェックをするキュア。
「───よし。
【ゾンビ化】は首筋のみのままで、進行はしていないな」
「んっ……」
「キュア? あ?
テメエ、こら……良い度胸してやがるなぁ? あ?」
「な、何がだ?」
割とガチな、イーストンの殺気。
「ふ"、ふ"ん"……!
そ"の"程"度"の"【ゾ"ン"ビ"化"】で"……オ"タ"オ"タ"す"る"な"、情"け"な"い"!」
「ど、竜の心臓でしか治せないんだぞ?」
割とガチな、ゾリディアの威嚇。
「と、とにかく……竜の心臓は手に入れた。
【ロス村】の【錬金台】にて【神薬】を作ろう」
「何も【ゾンビ】まみれン中で作らんでもよ……どっか途中に【錬金台】は無かったのか?」
「移動完了重視だったからな……漁村とココの直通ルート上に、他の村は無かったんだ」
「シーナの為に、命掛けで色々やってくれんのは有難いがよ……その所為で死なれちゃあ、困るのは俺だ」
「ワタクシもです!」
小さい村の中に、40人の【ゾンビ】で溢れる【ロス村】。 全滅させる『だけ』ならば、キュアの敵では無い。
しかし希望が【ゾンビ化】の進行を遅らせているのは───笑っていた間が一番シーナの【ゾンビ化】が小さかった事でも分かる。
もし【ゾンビ】を殺してしまえば……郷土愛の強いシーナの絶望は如何許か。 その場で【ゾンビ】と成ってしまうかもしれないのだ。
「【名"も"無"き"集"落"】で"も"、皆"同"じ"症"状"で"は"無"い"。
絶"望"が"強"い"者"ほ"ど"【ゾ"ン"ビ"化"】が"進"ん"で"い"る"。
……い"っ"そ"、ア"ッ"チ"で"【神"薬"】を"作"っ"て"か"ら"コ"ッ"チ"へ"持"っ"て"く"る"の"も"ア"リ"だ"ろ"う"」
「───しかし、ソレではシーナは救えても……【ロス村】の村民が治せないかもしれん」
「「「…………」」」
飽くまでも『二千年経過した』竜の心臓の話だが……ゾリディアに使用された【神薬】は、理性を残すのが精一杯の効き目である。
竜の心臓は劣化する。 キュアは、この『設定』が気に成っていた。 【ドラゴンハーツ】はとても楽しいVRゲームでは有るが……偶に闇が深い。
【ロス村】に【錬金台】が有る理由。
完全に【ゾンビ化】してしまった【ロス村】の【ゾンビ】は、【ロス村】で作った【神薬】でしか治せないのでは……というのがキュアの予測である。
「産地直送だ」
「ココで使う言葉じゃねぇ気がするが……キュアがソコまで言うなら、しゃあねぇ」
「は"あ"……
な"ら"ば"【錬"金"台"】迄"の"道"は"、私"達"で"切"り"開"こ"う"」
「何を……皆で行く理由は───」
「氷室に一人で行ったキュアは、信用無いかなー」
「うっ、あ……アレは話が長く成りそうだったから……」
「我等を守るためとは言え……危険な場所に一人で飛び込むのは、我等に役立たずと言っているような物です」
「…………」
「私"達"も"出"る"ぞ"?」
「…………はい」
どんどん小さく成ってゆくキュアを見て、クスッと笑うシーナ。
こんな笑いは要らない。
◆◆◆
「そうだ───
奥の手……という程でも無いが、万一の時はコレを【ゾンビ】に投げてくれ」
皆に、キューブを渡すキュア。
「コレは?
まさか……攻撃用じゃねえだろうな!?」
「【写真】という道具だ」
「【写真】?」
「主様……!」
「キュア、それって……!」
「特殊な効果は無い。
素材も、唯の紙で───」
「ウー……アー…………」
「来たっ!
良いか、各自安全第一で動いてくれ!」




