177 村人、恫喝する。
「本当に……本当に、申し訳有りませんですじゃ」
「…………」
御祭りムードの漁村。 取って置きの魚や酒が、竜を退治したキュア達の前に並ぶ。……しかしキュア達は何とも言えぬ顔をせざるを得ない。
旨そうな料理を挟み、村長がキュア達に対して地に膝をつき謝罪していたからだ。
「貴方方のような、英雄の御力を信じられず……騙し、竜の生贄にした事、本当に申し訳有りませんですじゃ!」
「はあ……村長、取敢ず頭を上げてくれ。
村民の皆も、銘々楽しんで下さい」
「「「は、はあ……」」」
まだ頭を下げたままの村長と、英雄が言うならばと祭りの準備に戻る村民達。
キュア達が村長に騙されていたと村民が知ったのは、つい先程。 キュア達の目の前に料理が運ばれてからなのだ。
「主様、此奴は如何なされるのです?」
「俺達は彼の企みと関係無く、竜を倒すつもりだった」
「…………」
「しかし───
万が一、彼の企みが成功していたら……俺達みんなが死んでいたかもしれないんだ」
「…………っ」
「無論、竜に脅されていた経緯も分かる」
「…………( ふぅ。)」
「だから依頼の報酬に、色を付けてくれ」
「…………っ!?」
百面相の村長。
ちなみに、ほぼ全ての依頼にて『恫喝』による『リザルト結果の吊り上げ』は有る。
『カルマ』という悪行ポイントが貯まるが……ソレよりも、増えるリザルトの方が美味しいと考えるプレイヤーや、悪人プレイをしたいプレイヤーにとって『恫喝システム』は美味しいのだ。
「キュアー……。
仕方ないとは思うけどなー……」
「私"達"が"食"ら"っ"た"割"は"、こ"ん"な"物"の"比"で"は"無"い"。
然"る"べ"き"罰"だ"。
キ"ュ"ア"の"判"断"は"間"違"っ"て"な"ど"い"な"い"」
「右に同じですね」
「そっかー」
チェンが世の真理を学んでいると、祭の準備をしている者達とは別の一団がキュア達の元へと来る。
「キュアさん、竜の解体作業が終わりました」
「よし、見せて下さい」
「コチラです」
飲み食いしてても良いんだぞと、女性陣に告げるキュアだが……女性陣とて自分達の戦果が見たい。
食事を中断して、解体作業をしていた村民達に付いてゆく。
「バラバラだなー」
「ソレは漁村に住む者として、この手の作業は御手の物ですので」
「コレが【竜の心臓】か……」
鱗・皮・角・爪・歯・骨・肉・脳・眼球・神経節・血管・リンパ腺・各種臓腑・各種肉・エトセトラ───
竜に棄てる所無し。
村民達の解体班は、竜の全てを綺麗に解体していた。
「キュアさん、本当にお渡しするのは心臓と端材だけで宜しいので?」
「今『この瞬間』も、島の竜共は俺達を監視しているんだろうが……動きは全く無い」
「ええ。
実は去年が生贄の10年目だったのですが……急に今年も竜が来て、生贄を差し出せ……と。
竜の敵、【名を失いし神】が胎動しているとの事ですが……ソレと関係が有るんでしょうか?」
「可"能"性"は"有"る"が"……人"間"を"路"傍"の"石"コ"ロ"と"し"か"見"て"い"な"い"連"中"だ。
気"紛"れ"と"言"わ"れ"て"も"、大"し"て"驚"か"ん"」
「そうだなあ……」
「大"い"な"る"者"共"の"胸"中"な"ど"知"ら"ぬ"。
奴"等"が"ど"う"動"こ"う"と"、我"等"に"は"迷"惑"に"し"か"成"ら"ぬ"例"と"い"う"訳"だ"」
ゾリディア達【名も無き集落】の民も、イーストンとシーナ達【ロス村】の民も、この漁村の民も。
全員、邪神や邪竜と……何も関係無い。
それでも、強者が動けば人間など一方的に被害を受けてしまう世界なのだ。
「ゾリディアさんには申し訳有りませんが……邪神の胎動をチャンスと見なし、漁村から脱出するつもりです」
「私"か"ら"言"う"事"は"無"い"。
好"き"に"し"ろ"」
「100人もの脱出・引っ越しともなると、莫大な費用が必要だろう。
心臓以外の素材は、ソレ用だと思ってくれ」
「1000人分にすら成り得ますが……有難く頂きます」
キュアが、竜の心臓を手にした途端……【ドラゴンハーツ】からの声。
☆【ドラゴンバスターズ】クリア
『金20000』
☆キッズグリーンドラゴンを倒す
『SP5』
☆氷室でダメージを受けない
『竜骨のナイフ』
☆村長を恫喝する
『【鍛冶】【裁縫】【錬金】【料理】レシピ集』
「ど、恫喝のつもりは無かったんだがな……まあ仕方ない。
───しかし、【料理】?
コレも製作スキルだろうが……」
「【料"理"】か"。
ソ"レ"な"ら"私"が"伝"授"で"き"る"」
「ゾリディアが?」
「……な"ん"だ"?
腐"れ"女"の"料"理"は"食"え"な"い"か"?」
「まさか!
楽しみだ」
「……ふ"、ふ"ん"」
「ゾリディアー、愛妻弁当───」
「チ"ェ"ン"?
何"か"言"っ"た"か"?」
「ん、んーん?」
チェンの角を掴むゾリディア。
チェンは動けない。
「そ"、ソ"レ"も"コ"レ"も"……ま"ず"、心"臓"か"ら"【神"薬"】を"作"っ"て"か"ら"だ"」
「この漁村には、【神薬】を作るのに必要な【錬金台】が無いからなあ」
「主様。
【ロス村】にて【ゾンビ】から逃げる時に、【錬金台】を確認しております」
「そうか。
ゾリディア、【名も無き集落】に【錬金台】は有るか?
君は一刻も早く、故郷に竜の心臓を持ち帰りたいだろうが……」
「二"千"年"前"の"【神"薬"】は"、集"落"の"【錬"金"台"】で"作"っ"た"。
だ"が"【ロ"ス"村"】に"は"、私"も"付"い"て"ゆ"く"」
「寂しいからかー……痛い痛痛痛痛ーー!?
ゴーメーンーなーさーーーいー!!」
チェンの角を素材にしようとするゾリディア。
「邪"神"の"古"文"書"に"書"か"れ"た"、イ"ー"ス"ト"ン"と"か"い"う"『そ"の"者"』と"や"ら"が"見"た"い"の"だ"」
「なるほど、分かった。
なら次は【ロス村】だな」




