17 村人、給料をもらう。
キュアが領主舘でする事になった仕事は倉庫の整理。 腕力・体力には自信が有るので、荷物運びに問題は無い。
……だが。
「なんでクリティカルは俺が計算できるからって、この仕事を薦めてきたんだ?」
領主舘で働く事が決まったキュアが緊張をクチにするたびに、「兄さんは、字も読めず計算も出来ないアジルー村の人間とは違うんだから」 とクリティカルに励まされてきた。
荷箱や樽には、フタを開けなくとも中身を確認できるように製品名が書かれていた。 なので、識字能力が必要なのは分かる。
……しかし計算能力の必要性が分からない。 計算能力だけなら自分を面接したリカリスの方が遥かに上だし、兄贔屓で適当を言われていたのか?
そう思い始めたキュアが暫く働いて、ある事に気づく。
「グリフ産ワイン樽13……必要なのは20樽だから、注文数は7と。
───ん?
まさか、コレか?」
書類に書かれた、『必要な数』 と 『倉庫内の実数』 から注文したり運んだりする数の計算。 コレは日本でいえば、殆んどが小学校低学年の算数レベルであった。
キュアでも一瞬で暗算できる。
「俺はこんな事しか出来ないと、思われている───」
いや違うか……と、自然に笑みがこぼれるキュア。
「アジルー村の連中は、この程度の計算も出来ないんだ。
なのに俺が魔ナシという理由だけで、連中から不当な差別を受けるのがクリティカルには苦痛だったんだな……」
つくづく、クリティカルには申し訳ないと思うキュア。 今でもやはりクリティカルのコネ、というのを多少情けなく思ってしまうが……それでもクリティカルの顔を潰す事だけはすまいと誓う。
◆◆◆
「もう終わったんですか?
流石クリティカルさんの推薦だわ」
「いえ、単純な仕事ですし」
メイド長の執務室。
言いつけられていた分の仕事が終わったキュアは、メイド長リカリスへ報告をしに来ていた。
「ソレがですね……。
書類が読めて、計算できて、あの荷物を運べる腕力があって……全部揃っている人ってそう居ないんですよ?
居たとしても、プライドが高いだけだったり」
「あー……」
プライドが高いだけ。
まさしく魔法が使えるというだけで自分達がこの世の支配者かの如く振るまうアジルー村の人間達だ。 1日でアジルー村村民の平均週給を稼いだキュアは、リカリスに頭を下げて部屋を後にする。




