16 村人、妹に呆然とする。
領主館で働く事になったキュアの目の前に居たのは───
一人目は、キュアが領主舘にて働くための面接をした長身女性で黒髪をポニーテールにした20代半ばのメイド長リカリス。
二人目は、槍を構えたタキシード姿でクセっ毛の茶髪を短く切りそろえた……クリティカルに幾らか届かぬであろう、ヘイストと呼ばれた少年であった。
「ヘイスト?
何をしているのかと聞いているんです」
「そ、ソレは……コイツが……屋敷に不法侵入したから…………」
「彼は、今日から領主館で働くキュアさんですよっ!」
「えっ!? し……しかし……!」
「こんな事がクリティカルさんにバレたら───」
「な……何故、そこで彼女の名が出る……!?」
何で、そこで妹の名前が出る……?
ヘイストと同じ感想を抱くキュア。
二人して、リカリスの次なる言葉を待つ。
「キュアさんは……領主様の 『警護秘書隊・副隊長』 であるクリティカルさんの実兄です」
「クリティカルの兄っ!?」
「警護秘書っ!?」
警護秘書───
どんな仕事かは想像しかねるが……家で鼻歌を歌いながら食器を洗うクリティカルを思い浮かべたキュアは、呆気に取られてしまう。 てっきり領主舘でも家事手伝いとして働いていると思っていたので、茫然するしかない。
改めて、腐っていた時の自分は妹の事をしっかり見ていなかったのだなあ……と反省しきりであった。
「こ、こんな腰抜けがクリティカルの……!?」
「…………コレで、俺の疑いは晴れたか?」
「くっ……す、済まなかった」
悔しそうに、キュアの道を空けるヘイスト。 キュアはリカリスに案内されて、領主舘の中へ。
「……申し訳有りません。
あの子は……諸事情により最近、暴走気味でして───キツく叱っておきますので、今回は不問にして頂けませんか?」
「構いませんよ」
彼に、何らかの理由がある。
『魔ナシ』 とゆう理由で、クリティカルを蔑ろにしてきた自分にそんな資格は無い。
ならば、敢えては問わないキュア。




