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15 村人、成敗されそうになる。

 

「ふう……。

適度な運動で、意識はハッキリしてきたか……」




 出掛ける前の【仮想現実装置】( パーシテアー )使用による 『程好い疲れ』 と、領主舘に勤める 『緊張』 から、キュアはアシッドから 『走って』 逃げた……と思いこんでいる。


 魔ナシであるキュアにとって、殺気を向けられる事など珍しくとも何とも無い。 何時もの、よくある 『無意識』 のウチに逃げてきた 『だけ』 なのだ。 すぐにアシッドから逃げだした事など、取るに足らない普段の出来事の一つとして記憶の底に沈め───領主館街に到着。

 そのまま領主舘へと辿り着く。




しようにん用の入口はコッチだったな」




 以前面接に来た時の事を思いだしつつ、領主舘の裏口から敷地内へ入るキュア。




「───おいっ、手を挙げろ!

貴様、何者だっ!?」


「えっ?」




 キュアが暫く領主館敷地内を歩んでいると、突然背後から怒声を浴びせかけられた。 声の主は、その質からおそらく声変わりする前……10代後半に入る前ぐらいの少年だろうか?


 アシッドのような、『殺し』 と 『悪ふざけ』 の区別の付いてない……悪餓鬼の遊びとは違う、『本物の殺意』 がキュアの背中に突き刺さる。




「我が愛槍に貫かれたく無くば動くなっ!」


「おっ、俺は今日からココで働く使用人で……」


「嘘を言えっ!

貴様の声など聞いた事ないぞ!!」




 そりゃ今日から働くんだから、まだ顔を合わせていない人間も多い。 声を知らない人間もいるだろうと思うキュア。




「た、確か……リカリスさん?

俺を面接した女性に聞いてくれっ!?」


「適当を言うなっ、討伐隊に突きだすまでも無い!

自分がこの場で成敗してやるっ!」




 本物の殺意が乗った槍が、キュアへと奮われる。 幼いころから肉盾として魔物や盗賊と戦い、最近では【ドラゴンハーツ】でも戦闘経験を積んでいるキュアだからこそ避けられた鋭い一撃であった。



「ちっ……なかなかヤるな!」


「だ、だから俺は───」


「───ヘイストっ!?

アナタ、何をやっているのですかっ!?」


「り、リカリスっ!?」




 面接の時に聞いた記憶のある女性の声がしたと同時に、殺気が消えた。

 素早く、槍の範囲外へと飛び退くキュア。

 

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