11 村人、指輪を手に入れる。
【レッサーワイバーン】を撃破したキュアと、向かいの牢屋の囚人の二人。
出口に向かうまでの至る所に、多数の雑魚魔物が襲来してきていたが……レッサーワイバーンを倒したキュア達の敵ではなく、危な気無いままターゲン帝国の天空牢獄を脱走する。
「ふう……ココまで来りゃあ安心か」
「いや、上空にゃあまだレッサーワイバーンが何十匹も飛んでんし……衛兵だって生き残りが居るかもしれんぜ?
休憩にはもうちょい離れとこう」
「分かった」
天空牢獄を脱獄後、無言のまま二人は暫し進み。
「キュア、其処の白骨死体……」
「……旅の親子か、可哀想に」
「そのリュックとウェストポーチを貰ってこうぜ。
簡易天幕に角灯……旅具も有る」
「ど、泥棒じゃ無いか?」
「コレも旅人の供養さ。
骨は墓に、遺品は廻る」
「……そうゆうモンか」
魔ナシであるキュアに、旅など出来る筈もなく……その感覚は分からない。
親子に墓を作り。
「───オリャあ、もう行くぜ。
病気の妹が待ってんだ」
「あっ……」
犯罪者嫌いのキュアが、咄嗟に目の前の脱獄犯を捕まえようとして───やめる。 どんな形であれ、恩人だからだ。 短い付き合いだが、彼が悪人では無い事くらいは予想がつく。
「病気の妹、か。
ソレが盗みをした理由か?」
「薬代欲しさと…… 『アイツ等』 が下流の村の事なんか考えずに、工場から毒を川へと垂れ流した事への腹いせからだな」
「……そうか」
「じゃあ、もう出会う事も無いだろう。
……アバヨっ!」
コレが【ドラゴンハーツ】というVR───夢だという事は理解しつつ…… 『妹』 の為に命を張れる彼に、好感を抱くキュア。
立ち去る 『元』 囚人を見送りつつ、捕まえようとしなくて良かった……と考えていたキュアに、メッセージが出現する。
☆【ターゲン帝国天空牢獄からの脱獄】クリア
『金4000』
☆レッサーワイバーンを倒す
『レッサーワイバーンの唾液線』
☆義賊を見逃す
『劣化病忌避石の指輪』
「……な、なんだこの板は?
うわ!? 何時の間にか手の中に指輪が……コレじゃあ俺が泥棒を───……はあ。
義賊って、あの男のことか?
もう彼も見えないし、仕方ない。
何時の日か、返すとしよう」
一度に色々と起こり、パニック気味のキュアは……何時の間にか己の手の中に有った指輪を握りしめて、彼の去った方角を眺めつつ返す事を誓う。
「さて、コレからどうするか……」
【ドラゴンハーツ】は、所謂 『オープンワールドRPG』 である。
先程までのオープニングイベントのような 『メインクエスト』 は有るものの、自分で 『サブイベント』 を探しだして装備品と魔法・スキルを集めねば成らない。
次に何をすれば良いか悩むキュアの頭に、メッセージが流れる。
≪ユーザー名・キュアさんの脳に疲れを検知。
キュアさんの健康の為、【仮想現実装置】は一旦閉じます。
御疲れ様でした≫
「え……っ!?
ちょ……待っ───」
───そして、キュアの意識は暗転してゆく。