106 村人、泣く。
「朱雀……っ!
お前、何をするつもりだっ!?」
「主様。
主様が抱く、我に対する強い怒り……。
幼馴染みの命を使い捨て、街を焼いた蛮行……その説明です」
「蛮行の…………説明!?」
朱雀が、火燐に溶けゆく。
その火燐の一欠片一欠片が、人間界においては異常なほどの熱を持つハズである。
然れど……呆然とする領主館の面々を置き去って、焦げ跡の一つも着けず窓の隙間から外へと流れ出ていった。
「朱雀……!?」
慌ててキュア達が領主館の外へと追いかけると、朱雀は領主館上空で火の鳥の姿をとっており教会の人間達を見下ろしていた。 領主館敷地内は普通の熱だが……領主館の外、教会の信徒が集まった場所は───大気が歪んでいる。
今の時期に有り得ぬ 『 異常な熱さ 』 と……自分たちの立つ場所だけが熱いという 『 熱さの異常 』 に、顔を顰める教会の信徒たち。
其処に現れた火の鳥に……信徒たちの恐怖は最高潮となる。
「ひ……ひひ、火の鳥…………!??」
≪人間共よ、神の裁定場に何用か≫
「あわわわわわ……」
≪答えよ、何用か≫
「ま───」
≪ま?≫
「魔ナシを……捕まえに…………」
肥え太った教会代表者らしき男は、ズボンを汚すだけ。 副代表らしき男が全身を酷く震わせながら答える。
≪何故?≫
「な……何故って。
魔ナシは……神への信仰を持たぬゆえ、神は慈悲を与えず加護を持たない───神の敵だから、我等が神の代わりに」
≪痴れ者が、神を語るな≫
朱雀が、答えた副代表者の男を一睨みすると……男は一瞬で火達磨となる。 慌てて周囲の一般信者が、水魔法で男の炎を消すが……なかなか消えない。
然れど、なかなか燃え尽きない。
≪魔ナシは、神意と関係ない≫
キュアは目を見開く。
キュアは、魔ナシは精霊 ( 神 ) に嫌われた者。 世界の害悪。
そう言われ、育ってきたのだ。
それが……否定されている。
しかも、神に属する者に。
「兄さん……泣いているの?」
「クリティカル……俺は───済まん」
「……いいえ、兄さんは悪くない」
朱雀がアシッドを使い行った一連の行動は……クリティカルにも危険を及ぼした。 キュアにとって、許せる筈の無い蛮行である。
しかし……。
「ムカつく女では有るけど───」
「お、おう……」
「───人知を超えた存在が、嘘をつく理由がない。
というか、意味がないわ」
「クリティカル……」
少なくとも、兄妹は……朱雀に対する毒気を抜かれてしまった。 憎めなくなった。
「ヘイストも、済まん。
ヘイストは怪我をしたというのに……」
「何を言うんだ。
お前達兄妹の人生を考えれば、仕方ないだろう?」
「…………有難う」
兄妹を、ヘイストやヘイストの母……領主館の面々が慰める中───怒声が響く。
「あ……あの鳥は 『 悪魔 』 だ!
神の眷族を騙る悪魔……魔ナシは悪魔にとり憑かれ───」
≪言うに事欠いて、愚物が≫
ズボンを汚すだけの男が叫び……朱雀を指差す。
≪神の地上代行者を騙る俗物。
神と、我が主様を貶めた罰を受けよ≫
「悪魔め、浄化されよ!
───され……れ、あれ?」
教会の人間が朱雀へ向け、魔法を使おうとするも……魔法が発動しなかった。
神僕たる精霊が、上位存在の命を受けたのだ。
≪神の慈悲は、魔ナシにも与えられる。
神の慈悲は、精霊ナシには与えられぬ。
愚物よ、コレが神の意志である≫
「なん……なんだ…………何なんだコレはっ!??
我等、神の地上代行者にこんな無礼を───」
自ら権勢をふるう為、差別要素を産み出した者は……自らの差別要素に取り込まれる。
『 精霊ナシ 』 という、この世で彼等だけの業罰を。
「す……朱雀───」
≪主様、教会などという有象無象は正直どうでも良いのですが……あんなモノに邪魔されて、貴方が魔ナシのままであっては困るのです≫
「困る……?」
領主館の庭園スペースに着地した朱雀は、大きく羽を広げ……兄妹とヘイストだけの秘密をクチにする。
その威光は、正しく───神。
≪貴方は、魔力は持っておられる。
だが、使い方を知らぬ。
夢の中で、使い方を学んでください≫




