105 村人、教会から睨まれる。
もう一方の連載が終わったので、今日からはだいたい17時丁度ぐらいに投稿でき ( ると、思い ) ます。
「さて……貴女様の事を何と御呼びすれば宜しいでしょうか?」
───領主館へと帰ってきた一行。
項垂れるキュア。
憤慨するクリティカル。
拗ねて母親としか会話しないヘイスト。
彼等は放っといて、女神───火の鳥が変化した女性に語りかける領主館執事コリアンダーと、領主館メイド長リカリス。
「我が名前……ね。
主様ぁん、我に名前を下さ~い!」
「……知らん」
「ハァ、いけずな主様ぁ♡
……仕方有りませんねえ。
昔のアダ名…… 『 朱雀 』 と呼ぶことを赦しましょう、人間」
「朱雀……様ですか」
「あら? コリアンダーさん、確か朱雀って───何処かで……?」
「うむ……?」
キュアに撓垂れる、自称・神の使徒が名乗ったアダ名。
この世界に耳慣れない響きの名に、リカリスは反応する……が、何処で聞いたか思い出せない。
「確か───魔王四天侯の一体が、そんな名だったような……」
「あぁ~ん、さすが主様!
博識です~!」
「ま、魔王……!?」
魔ナシ故に魔法代わりの技術を得ようとしたキュアは、識字率の低いこの世界において文字が読める。 沢山の本も読んできた。
その中には絵本も有る。
そのウチの一冊……大昔から伝えられてきた絵本、 『 太陽からきた魔王と、月からきた勇者 』 に出てくる魔王の僕を述べるキュア。
「確か3……20年前の子供の頃に読んだ記憶があるわ」
「3…………いえ」
キュアは、リカリスが20代半ばと思いこんでいたが……いや、20代半ばで良い。 なんか睨まれた気がするが、気のせいなのだ。
「あの絵本は真実だと?
朱雀様は……その───」
絵本を信じる子供はココには居ない。 然れど……朱雀の、神の如きチカラは嫌という程に知っている。
信じざるを得なくなる。
「人間の書いた本など知りません。
まあ前の私の主は人間共から 『 魔王 』 と、呼ばれていましたけど」
「魔王……」
「あっ、貴女……兄さんを魔王にするつもり!?」
「……ソレは全て我が主様が御決めになる事ですよ、主様の妹」
項垂れるキュアの頭上で言い争う美女たち。 見惚れる男使用人ども。
「朱雀様は、キュアの命令を聞かれると?」
「そうです。
……正確には主様の自由意志をネジ曲げんとする 『 運命 』 から守るだけですが」
「運命?」
「前の前の私の主は、勇者と呼ばれていました。
私の主様が 『 勇者 』 と呼ばれるか 『 魔王 』 と呼ばれるかは、『 世界 』 が決める事です」
「世界……」
「もうすぐ、主様を 『 魔王 』 としたがる輩共がこの邸に来ますよ」
「は?」
朱雀はキュアの首に回した腕の片方をほどき、指折り数え始める。
「3…………2…………1……」
「ちょっ───」
「……ゼロ」
『 【アジルー村】のキュアは居るか!
魔ナシのキュアだ! 』
「「「 っ!?? 」」」
突然響く声。 多数だ。
しかも、剣呑な雰囲気を纏せた声。
「我等は 『 教会 』 である!
今すぐ領主館は武装解除し、魔ナシを提出せよ!」
「コリアンダー様!?
リカリスさん!?」
どうやら、領主館を教会の人間が取り囲んでいるようだった。 しかも、かなりの人数……。
おそらく、この街に居る関係者全員が集まっているのだろう。
「───たぶん……俺の所為です。
教会が魔ナシと決めた俺が……魔法を使ったから」
「兄さん……」
「『 教義 』 か」
教会は、日本における市役所のような仕事もする。 出生届の受理、住民票の発行、そして魔ナシ判定……。
教会からすれば、魔ナシ判定をしたキュアが魔法を使うのは教義違反。 犯罪者も同義なのだ。
「……皆さんには、迷惑を掛けられ無───」
「兄さん!?
兄さんは皆を……街の人間すらも救ったのよ!?」
「クリティカル……」
「そ……そうだぞキュア!
お前が罪人なら、そのキッカケを作ってしまった自分はもっと酷い!」
「ヘイスト……」
「二人の言う通りだ、キュア。
迷惑などでは無い」
「コリアンダー様……」
「私の母は異民族でな……奴等の聖書とやらには『異民族は人間では無い』と、ハッキリ書かれている。
教会とは父の代からの敵だ」
「兄ちゃんよう……他にも領主館で働くキッカケに成ったのは 『 教会 』 の所為って奴が多いんだぜ?」
「皆さん……」
社会的弱者を自らの手で作り、管理する事で権力を拡大してきた組織……ソレが教会であった。
その理不尽さ故、王侯と仲が悪い。
その最大派閥が、この邸の主人コタリア・グヌ・レイグランである。
「魔王も───」
「朱雀?」
「魔王と呼ばれた主も、勇者と呼ばれた主も…… 『 自分の敵 』 を打ち倒して得た称号に過ぎません。
その 『 敵 』 が 『 世界の敵 』 かどうかで主様の未来が変わります」
「……俺に、教会を倒せと?」
「主様の良しなに。
我がチカラ、主様を教会のトップにする事も容易き事故……教義とやらを変えるも自在」
「…………っ」
先程までの甘えた感じが消え……キュアを───キュアの、奥の奥を覗き見るかのような朱雀の視線。
「お前は……何故アシッドを殺した?」
「主様は、我を召喚し……尚且つ、容易く降ろしました」
「兄さんが初めて魔法を使った時の……」
「アシッドは、チカラも無いのに……我を憑かせて死にました。
───それだけです」
アシッドの肉体は、朱雀がその体に降りた瞬間……死んだ。 朱雀がアシッドの死体にとり憑いている間だけ、アシッドの魂は死体から離れなかった。
肉体は死んでいるのに……生きているかの如く意志を持ち喋り、歩く。
歩く死体、【 ゾンビ 】である。
「自業自得だというのは分かる……だが───」
「───魔ナシのキュア!
大人しく館から出てこい!
さもなくば、突入する!」
「…………はあ。
神の地上代行者を勝手に名乗っておきながら、我の……主様の御決断の邪魔を───
主様、しばしお待ちを」
朱雀が立ち上がる。
室内の気温が上がった気がした。




