104 村人、下僕をゲットだぜ。
「ハァ……ハァ……主様ぁ。
早く御命令を~……!」
「…………」
今、領主館使用人室は……嘗てない程に人が集まっていた。 その中心、やや大きめのテーブルでキュアは……嘗てない程に頭を抱えて、青ざめている。
「おい、どうしたんだ?」
「新人の魔ナシの兄ちゃんが、女神様をタラし込んできやがった ( 笑 )」
「そりゃあ良い。
オレ等、領主館の使用人達を悪く言う奴が減らあ!
有り難い女神様のご加護を! ( 笑 )」
ゲラゲラと笑う、庭師のジジイと大工のジジイ。 領主館の、二大エロジジイである。
クリティカルとヘイストに睨まれ、ゲラゲラ笑いながら部屋の隅へ退散するジジイズ。
「……兄さん? どういう事かしら?」
「あ、あのな、クリティカル……俺にも良く分からないんだぞ?」
「キュア……不潔だ」
「ヘイスト、紛う方無き濡れ衣だからな? なっ!?」
「あぁ~ん、主様ぁ~!
この二人が怖いぃ~!」
「勘弁してくれ…………」
◆◆◆
≪ちょ……待っ……んぎゃ!?≫
アシッドにとり憑き、莫大なチカラを与え、好き放題させた、火の鳥が変化した美女を攻撃し続けるキュア。
≪ぎゃうんっ!?
───良ぎっ、……ぃい、でしょう!
人間に、神"っ、の、使徒だるん、私……んがっ、下僕ど、な"る 事、のぅ、名誉"っ、を……教"え"てっ───≫
「【 回転刃 】【 ショットガン 】【 回転刃 】【 ショットガン 】……仕込み杖、便利すぎるな。
杖魔法と、武器スキルを同時に使えるとは」
以前……クリティカルが【仮想現実装置】を検証する時に、複数持ってきた杖のウチの一本である。
【 回転刃 】の効果は、弱攻撃 X15回の連続ダメージ。 その間、キュアの動きも止まるので乱戦向きでは無いが……敵は一匹。
自称・神の使徒の、ダメージ硬直が溶けるより早く……吹き飛ばし力の高い【 ショットガン 】でブッ飛ばす。 大股をおっ広げながら転がってゆく自称・神の使徒に追いつき、再び【 回転刃 】。
【ドラゴンハーツ】内の、【 異海探険 】にて手に入れた両スキル。 どちらも役立たずだと思っていたが……中々便利なようだ。
自称・神の使徒は……目を回しつつ、己の偉大さを説く。 彼女の美貌に心囚われた討伐隊の生き残りも、キュアに憤慨する。
≪神の、言"葉"をっ、伝"えりゅ、私にぎっ!?≫
「───き、きさ……貴様っ!?
女神様に……ぶぶぶ無礼であるぞ!?」
「お、男たる者……女性に斬りつけるとは何事だ!?」
魔ナシゆえ、妹クリティカル以外の女性とマトモに接触した事など無いキュア。
好意的に近付いてくる女性には、対処が分からずオロオロし……悪意的に近付いてくる女性には、遠慮など考えず攻撃する。
伊達に、【アジルー村】でキュアとクリティカルを襲ってきた女性村人の手足の腱を斬ってはいない。 キュアは、特にフェミニストという訳では無いのだ。
「女神だ何だは知らん!
ソレより、何故アシッドを操った!?」
言うまでもなく、キュアにとってアシッドは───クリティカルを害そうとした、憎むべき敵だ。
『敵討ち』だの、『アレでも良い所が有った』だの、そんな事を言うつもりは欠片もない。 ……そんな事実は欠片も無いのだから。
───だが。
「アシッドを操れば……クリティカルに危険が及ぶのは確実だ。
…………現に襲われたんだぞっ!?」
キュアの殺気が、更に膨れあがる。
キュアの一番大切な宝、クリティカル。 そのクリティカルに危険が及んだ。 この、神の使徒とやらの所為で。
「貴様が、神の使徒だか神本人だか知らんが…………絶対に許さんぞっ!!」
「兄さん……」
「 ヘイストやヘイストの母、領主館の皆にも迷惑をかけたっ!
…………罪を償えっっ!!!」
≪""ッ"、"カ"ミ"に"つ"み"を"問"う"な"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"ァ"!?≫
「知らんっ!!」
更なる攻撃を加えるキュア。
自称・神の使徒は、スキルを受けながらも……必死で爆炎を放つ。 局所的ながら、アシッドの 『 ソレ 』 をも上回る威力。
受けに回ったキュアの持つ、仕込み杖が……蒸発した。
≪コレでっ───≫
「【 マジカルファイター 】ッ!!」
≪がぢ……ゃ……びヒんっ!?≫
再びその美貌に突き刺さる、キュアの拳。
しかも、その威力は最初の一撃を上回る。 【 マジカルファイターの指輪 】から会得した指輪魔法、【 マジカルファイター 】の効果は【 素手に限り、物理攻撃力と魔法攻撃力を合計した威力になる 】という物。
他のスキルと組合せる事が出来ないため、汎用性は限りなく無い……【ドラゴンハーツ】では、お遊び要素の強い指輪だが現実においては───
≪へごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごごッッ!???≫
連打、連打、連打、連打。
武器の恩恵が強い【ドラゴンハーツ】ならともかく、現実で【 マジカルファイター 】の使い勝手は、そこまで悪くない。
「反省しろっ!!」
≪……ごっ、ごご───は、反省……?
この、神の、使徒た、るっ、私が……反省……?
人間如きに……ココまでされる屈辱───……この感覚は、ナニ?≫
「……………………ん?」
悪寒が走るキュア。
嫌な予感……とも違う、生まれて初めての感覚。
≪───コレが、我が主……様……♡≫
「……………………」
鳥女の、恍惚とした表情。 潤んだ瞳。
キュアは……自らの選択が、誤った事を理解した。
◆◆◆
「てな訳で御座いますわ、主様♡」
「ナニが『てな訳で』、なんだ……」
渾身のチカラを振り絞ったらしい自称・神の使徒は、息も絶え絶えながらキュアの連撃から逃れ……キュアに抱きついていた。
ソコに、爆炎が晴れて……心配したクリティカル達が駆けつけてきて───
「兄さ…………っ!?
───兄さん?」
「……違うぞ? クリティカル?」
「……き───キュア?」
「ヘイスト……その、ゴミを見る目は止めてくれないか?」
クリティカルとヘイストは、今までキュアに向けた事の無い ( 底冷えする ) 視線を送り。
「おっほ、キュアぁ……ヤルときゃヤル男だなやぁ?」
「シナモンさん……火に油を注ぐ発言は止めてくれ……」
田舎討伐隊隊長シナモンは、好色げな視線。 なんか両手を胸の前に持ってきて、大きなカーブを描いて微笑んでいる。
「キュア、領主館に帰るぞ。
……逃げるなよ?」
「───……はい」
領主館執事コリアンダーには、真顔で言われた。




