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Forget-Me-Not  作者: おかつ
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第15話「裏の記憶〜御厨秀将〜」②

「なんだ、あの船…?」

そう言って俺が船の方を見ていると、派手なスーツを着た1人の男が慌てた様子で船から降りてきてこちらに向かってきた。

「兄貴ー!!!!」

男はそう叫びながら御厨さんの方まで近づくと、御厨さんの両肩をガシッと掴み、焦った様子で言った。

「兄貴! 今すぐここから逃げてくださいッス! でないとヤベーんスよ!!」

そう言いながら御厨さんの肩を揺さぶる男の様子は、本当に焦っているようだった。

とはいえ、この島にいるということは御厨さんも記憶を失っているということ。記憶を取り戻さない以上、この島から出すわけにはいかないだろう。

「あの、すみませんが御厨さんは今…」

俺が彼を止めようとしたところで、男は俺の方を見て「あ、大丈夫っス!」と返した。

「兄貴の事情はわかってるっス! けど今はそんな事言ってる場合じゃないんスよ! せめて、この島の何処かに身を隠すことが出来れば……!」

男がそこまで話したところで、「どないしたん?」と聞き覚えのある声が聞こえてきた。

声のした方を見ると、そこには春日井さんがいた。

「あっ! この島の人っスか? 騒がしくしてすんません! けど今非常事態なんス! 何処か身を隠せる場所とか知りませんか!?」

男が春日井さんにそう聞くと、春日井さんは少し考え、一言言った。

「……こっちや」

そうして春日井さんは歩き出した。……『ついてこい』、ということだろうか。

俺たちは顔を一瞬見合わせた後、春日井さんを信じてついていくことにした。



「……ここ、って」

春日井さんに案内され到着した場所はーーなんと『春日井さんの自宅』だった。

島に引っ越してきた初日に見かけた、あの大きな『洋館』だ。

「あの、春日井さん……?」

俺が恐る恐る話しかけると、春日井さんは一瞬黙った後言った。

「……ここなら、あんま訪ねる人もおらんし、部屋数も多い。何があったかは知らんけど、この島で身を隠すには丁度ええやろ」

「……悪ぃ、サンキューな春日井」

御厨さんがそう礼を言うと、春日井さんは「……別に」とそっぽ向いた。


中に入ると、まず俺達はこの家の所謂『応接室』と呼ばれる部屋に通された。

ソファは三人掛けのものが1台。その両斜め横辺りに一人掛けのものが2脚、向かい合うように置かれていた。

先ほどの男と御厨さんは三人掛けのソファに、俺は一人掛けのソファの1脚に座った。もう1脚には春日井さんが、俺達に紅茶を持ってきた後に座った。

全員が座ったのを確認した後、御厨さんは男に聞いた。

「……んで、相当慌てた様子だったが何があった? 詳しく説明してくれねえか?」

御厨さんのその言葉に、男は「押忍!」と返事をした。

「……っと、まずは自己紹介させてくださいっス。俺は『長良敦紀(ながらあつのり)』! 職業……は、ちょっと言いにくいんスけど、ヤクザっス。まあ、俺は組の下っ端の方ではあるんスけど」

「ヤクザ……?」

御厨さんがそう聞き返すと、長良さんは「押忍!」と返した。

『ヤクザ』。その単語に引っかかるのか、御厨さんはしばらく考え込む仕草を見せた。

「……御厨さん?」

俺がそう聞くと、御厨さんはハッとした様子で俺を見た。

「あ、ああ、すまねえ。……続けてくれ」

御厨さんがそういうと、長良さんは「分かりました」返事をし、続けていった。

「んで、その俺が所属する組っていうのが『巌鉄会(がんてつかい)』っていうんスけど、その……兄貴は覚えてないかもしれないし、今はサツ……じゃなくて、えと、警察みたいなんで言いにくいんスけど、兄貴は……その巌鉄会の『若頭』だったんスよ」

「御厨さんが……!?」

長良さんの発言に俺と春日井さんが驚いたように御厨さんを見ると、御厨さん自身も驚いたような顔をしていた。

「俺が……組の若頭だった……!?」

御厨さんがそう聞くと、長良さんは何も言わず頷いた。

「その様子だとやっぱり覚えてないんスね」

長良さんは、何処か落胆した様子でそう呟いた。

「……この島の噂は、ダチからよく聞いてたんで知ってたんス。んでそのダチに事情を話したら、島の場所も教えてくれて。それで、ここに来る事が出来たんスよ」

長良さんがそこまで話すと、「……成程」と春日井さんが口を開いた。

「今の話で大体分かったわ。その『巌鉄会』っちゅー組と敵対しとる組織が、何らかの理由でコイツの事情を聞きつけ、トドメを刺してやろうと探し回っとると……そういう事やな?」

「トドメ……!?」

春日井さんの言葉に、俺は驚いた。

『トドメ』……ということは、その敵対組織に見つかってしまえば、御厨さんは……『殺されてしまう』可能性もあるという事になる。

「そう、なんですか……?」

恐る恐るそう聞くと、長良さんはゆっくりと頷いた。

「多分、お二人も一度は聞いたことある名前っス。ほら、テレビとかでよく言われてるんで。……『総流会(そうりゅうかい)』っていうんスけど」

「『総流会』……!?」

その名前を聞いた瞬間、俺も春日井さんも驚きで立ち上がった。

『総流会』といえば、何かと大きな問題を起こして警察沙汰になっているような組織なはずだ。

テレビでもよく『指定暴力団』として名前が上がっているのを見た事がある。

……そんなヤバい組織が、御厨さんを狙っている……?


不安になり、俺は御厨さんの方を見た。

御厨さんは、先ほどからずっと俯いている。よく見ると、体が小刻みに震えているようにも見える。

続いて春日井さんの方を見ると、春日井さんは一つため息をついて再びソファーに座った。

「……まあ、大方事情は分かったわ。今日はひとまずうちに泊まるしかないやろな」

春日井さんがそういうと、長良さんが「えっ!?」と驚いたように春日井さんを見た。

「いいんすか!? こんな立派なお屋敷に……!?」

「良いも何も、それしか方法ないやろ。……あんたもそれでええな、御厨」

春日井さんが御厨さんの方を見てそういうと、御厨さんは少し小さな声で「……ああ」と返事をした。


【第15話「裏の記憶〜御厨秀将〜」③へ続く】

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