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Forget-Me-Not  作者: おかつ
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第14話「別人格の記憶~華田摩耶~」②

『真癒』と名乗るその女性は、自己紹介を済ませると宗次郎さんの隣の席に座り「カフェラテを1杯お願いします」と注文した。

その様子に流石のマスターも少し動揺しつつ、「かしこまりました」と返し作業に入った。

「……あの、摩耶……じゃなくて、真癒さん」

隣にいた宗次郎さんがそう声をかけると、真癒さんは「何?」と宗次郎さんの方を向き首を傾げた。

その様子に、宗次郎さんは依然動揺しつつも再び口を開いた。

「……え、っと。色々と聞きたいことはあるんだけど……まず、摩耶さんの『別人格』っていうのはどういう事かしら?」

宗次郎さんがそう真癒さんに聞くと、真癒さんは「そのままの意味よ」と返した。

「もう少し詳しく説明すると、私は摩耶が作り出した『女性らしい人格』。『綺麗』とか『可愛い』とか言われる側の人格ってことよ」

「……確かに、摩耶さんの方はどちらかというと『かっこいい』という表現の方が似合うかな」

真癒さんの言葉にマスターがそう返しながらカフェラテを置くと、真癒さんは「ありがとう」と微笑んだ。

「けど、摩耶さんはどうしてその『女性らしい人格』を作ったんでしょうか? 真癒さんは何か知ってますか?」

続けて俺がそう聞くと、真癒さんは「理由ならわかってるわ」と答えた。

「摩耶の家……私の旧姓『加賀見かがみ』っていうのだけど、とにかく厳しい家だったの。『男は男らしく、女は女らしく』いないと許せないタイプというか。けど、摩耶は可愛いものよりかっこいいものが好きだったり、スカートよりズボンの方が好きというタイプだった。まあ、当然怒られるわね。……そうして怒られ続けていくうちに、摩耶は『自分とは別の人格を作って、女性らしく生きてもらおう』と考えた」

「そうして生まれたのが、真癒さんというわけか」

真癒さんの話にマスターがそういうと、真癒さんは「そうよ」と頷いた。

「『真癒』という別人格を作ってから、しばらくは家族をごまかすことが出来たのだけど……当然、長くは続かなかった。別人格という事がバレてしまったのよ。激怒すると思ったのだけど、みんなは私が『悪い霊にとり憑かれている』と思ったの。それで……私も摩耶も嫌がったのだけど、無理矢理お祓いしようとしたのよ。……お祓いの時は『摩耶』の人格だったのだけど、そのお祓い中に摩耶は逃げ出したの。逃げて、逃げて、逃げ続けて……。夢中で逃げ出して……横断歩道の信号が赤になっている事に気が付かなかった。……当然、車にぶつかるわよね。……その時に、『真癒』……つまり私に関する記憶が消えた。……そして摩耶はここに来た。やっと摩耶が自由に生きる事が出来ると思ったのだけど……思い出してしまったのね」

真癒さんの話が衝撃的すぎて、俺は開いた口が塞がらなかった。

今時、そんな家族が存在するのか。『男は男らしく、女は女らしく生きる』ことを強要するような、そんな家族が。

ふと、宗次郎さんの方を見る。……そして、俺はハッとした。


宗次郎さんは真剣な表情で真癒さんの話を聞いていた。

しかも、その両手は固く握られ、小刻みに震えていた。


その瞬間、俺は察した。

宗次郎さんは、明らかに怒っている。それはそうだ。宗次郎さんはいわゆる『オネエ』と呼ばれる性格の人だ。そんな宗次郎さんにとって真癒さんの話は許せないだろう。

真癒さんもそんな宗次郎さんの様子に気づいたのか、ハッとした様子で宗次郎さんの方を見て言った。

「ごめんなさい。……貴方にとっては酷な話だったわよね」

真癒さんの言葉に、宗次郎さんは「謝らなくていいのよ」と返した。

「真癒さんも摩耶さんも、何も悪くないもの。その家が悪いのよ。もっと自由に生きたって良いじゃない。男らしくないから何? 女らしくないから何? どんな性格だって摩耶さんは摩耶さんだし、真癒さんは真癒さんよ。そうでしょ?」

宗次郎さんのその言葉に、真癒さんは驚いたように何度も瞬きした。

「……摩耶ならともかく、真癒にもそんな事言ってくれた人は、貴方が初めてだわ」



【「別人格の記憶~華田摩耶~」③へ続く】

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