第9話「記憶淵村のハロウィン②」
―10月31日。ハロウィン当日。
この日、この島で一番大きな公園と言われている『記憶淵中央公園』にて、ハロウィンイベントが行われていた。
会場にはたくさんの人がおり、そのほぼ全員が何かしらの『仮装』をしてイベントを楽しんでいた。
『喫茶 laurier』も、この日はお店の方をお休みし、その代わりこのイベントにて『出張喫茶 laurier』としてコーヒー等を振る舞っていた。当然今日も『仮装』をしているのだが、今日の『仮装』はイベントを特に楽しみにしていたらしい宗次郎さんとハロウィンの仮装のクオリティーにやたらこだわる春日井さんの協力で、なかなかクオリティーの高い『仮装』となっていた。
ちなみに今日の俺は『死神』の仮装。マスターは『ゾンビ囚人』、愛依は『花嫁の亡霊』、春日井さんは『ピエロの殺人鬼』の仮装らしい。春日井さんの仮装は一歩間違えれば子どもにトラウマを与えかねない仮装なのではないかと思ったのだが、意外にも周囲には好評らしく、子ども達が春日井さんに近づいていき何かはしゃいでいる様子を何度も見た。正直解せない。……それとも顔は春日井さんだと分かるようにしているからなのだろうか?
そんな事を考えながら接客を続けていると。
「やあ。賑わっているみたいだね」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
その声に振り向くと、そこには『マッドサイエンティスト』と思われる仮装をした摩耶さんと、『人造人間』と思われる仮装をした宗次郎さんがそこにいた。
その姿にマスターも気づいたのか、2人をみて「おや」と口を開いた。
「摩耶さんに宗次郎さんじゃないか。いらっしゃい」
マスターがそう言うと、今度は宗次郎さんが口を開いた。
「ちょっと様子を見に来たんだけどなかなか繁盛してるじゃない! 流石ねぇー!」
「ハハ、おかげさまで大賑わいだよ。……ああそうだ、宗次郎さん。今日の仮装のメイク協力、ありがとうね」
マスターがそう言って頭を下げると、宗次郎さんは「全然いいのよぉー!」と返した。
「元々あたしがやりたくてやった事だし気にしないで! ……まさか春日井さんが手伝ってくれるとは思ってなかったけど」
宗次郎さんはそう言いながら春日井さんの方を見る。春日井さんはこちらに気づいていないようだ。
宗次郎さんの言葉に、マスターも摩耶さんも「そうだね」と返す。……が、俺は同じように『そうですね』と返さなかった。
確かに春日井さんは人と関わる事が苦手な人だが、その一方でこの『ハロウィン』という日を彼なりに楽しんでいるのも、なんとなく分かるのだ。……何故かは分からないのだが。
暫くして、客の入りも少し落ち着いてきた頃、マスターが口を開いた。
「少し落ち着いてきたし、折角だから愛依ちゃんも洋輝君も出店回ったりしておいで」
マスターのその言葉に愛依が「いいんですか!?」と少し嬉しそうに返すと、マスターは「いいよ」と微笑んだ。
「あとは人数少なくても何とかなりそうだからね。……ちなみに春日井君は」
「俺はええ。人混みは苦手やし」
「……だ、そうだから。遠慮なく行っておいで」
マスターがそう言うと、愛依は「ありがとうございます!」と一礼してから俺の方に駆け寄ってきた。
「洋輝さん! 折角なので一緒に行きませんか?」
「それはもちろん構わないけど……あの、本当に良いんですか?」
俺がそうマスターに言うと、マスターは「構わないよ」と微笑んだ。
「折角のイベントなんだ。どうせなら洋輝君にも楽しんでもらいたいしね」
マスターのその言葉に、俺は「ありがとうございます」とお辞儀をし、愛依とともにイベントを楽しむ事にした。
【「記憶淵村のハロウィン」③へ続く】




